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コンサルティングファーム

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なぜホワイトカラーの生産性は上がらないか

執筆者: 大矢 哲夫 経営

企業にとって業務を効率化し、生産性を向上させることは永遠の課題であり、これまでも多くの取り組みがなされてきました。ホワイトカラーの生産性向上については何十年も前から企業の重要な組織テーマとして各企業で様々な試みがなされてきています。その結果は果たしてどうだったでしょうか。
結果を知るとすっかり気落ちしてしまうのですが、実は日本企業におけるホワイトカラーの生産性は先進国の中で最下位なのです。一方でブルーカラーの生産性はその逆でトヨタ生産方式に代表されるように高い生産性を誇っています。実際のところ弊社で引き合いを受ける業務コンサルティングのテーマで最も多いものの一つが管理間接部門の適正人員算定であり、これはとりもなおさず管理間接部門の生産性の低さを経営者が問題視していることの証しでしょう。逆に生産現場における生産性向上についてコンサルティングを依頼されたことは私の経験ではありません。

同じ日本人が働いているのになぜブルーカラーの生産性は高く、ホワイトカラーの生産性は低いのでしょうか。多くのホワイトカラーは大学を卒業しており知力も高いはずなのに、こと業務の生産性に関してはなぜブルーカラーの人々に負けてしまうのでしょうか。これにはもちろん多くの原因が存在するのでしょうが、私が考える一番の原因はやはり年功序列を基軸とした人事システムにあるのではないかと思います。現時点で道行く会社員に「あなたの会社は成果主義に基づく人事制度が導入されていますか」と聞けば、おそらく9割の人からYESという返事が返ってくるでしょう。しかしこれが曲者で、日本企業に導入されている成果主義は同期社員の間に数年の昇格スピードの差をつけることで社員に同期に負けじとする気持ちを持たせ奮い立たせようとするものであり、外資企業に見られるような年下の上司が存在する真の意味での成果主義が導入されている日本企業は少数派なのです。従って多くの日本企業においては年功序列を基軸に成果主義の味付けがしてある人事システムが主流と言えます。

日本企業の人事システムが年功序列でしかも退職率が低い、さらに経済成長の鈍化で高度成長時代のように会社規模が拡大し結果的にポストが増えることもないとなれば当然管理職あるいは管理職への待機人材が余剰となります。周りを見廻せばポストが空くのを待っている先輩社員がたくさん待機している有様では、入社時にはいつかは会社の中で課長になり、部長になり、そして役員になることを夢見ていても、それが見果てぬ夢であることに気付くのに時間はかからないでしょう。その結果社員に生まれるのは、与えられた仕事を無理しないでゆっくりとこなせば良い、いくら頑張っても昇進は無理、問題を起こさないようにマイペースで仕事をこなせば良い、と言った守りの姿勢です。この守りの姿勢こそがホワイトカラーの生産性を落とす最大の原因だと思います。人が守りに入った時、仕事の効率、生産性を上げる、同時に業務の品質、有効性を高めようとする気概も失われます。これがホワイトカラーの生産性を低下させているのです。

こうした状況の時、会社が生産性を上げるべく外部コンサルタントを雇ってトップダウンアプローチでBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)を推進しようとしたら一体何が起こるでしょう。守りに入っている社員はBPRの推進に決して抵抗はしないでしょうが、自ら積極的に業務変革に取り組むこともないでしょう。BPRで与えられた新しい仕事の進め方を当座は守っているでしょうが、やがて問題がありさらに改善すべき点にも気付くはずです。しかし守りに入っている社員は問題を改善しません。その代わり仕事のやり方をBPR以前の元のやり方に戻してしまうでしょう。かくしてBPR活動は失敗し、仕事の進め方もいつのまにか元に戻っていたと言うことになります。

守りに入っているホワイトカラーの社員を生産性向上の動きに持ってゆくには、彼らの意識変革が必要です。それは生産性を向上させ仕事が変わってゆくこと自体が面白いと思わせること、あるいは生産性向上により労働時間が短縮し残業や休日出勤が減少することでより多くの自分の時間が持てるようになり、結果的にワークライフバランスがとれた生活を送れるようになることを理解させることで実現します。要するに守りに入っているホワイトカラーの社員が自ら生産性向上の必要性と価値を理解して動かない限り、生産性向上活動は決して成功しないのです。
これを実現するには会社全体としての取り組みを継続的に粘り強く実施することが求められます。例えば生産性向上に向けた時間管理の仕組みを作り、毎週上司と部下間で業務の無駄がないか確認する、全社キャンペーンを実施する、社長メッセージを定期的に発信する、研修を行う、等のいろいろな施策を組み合わせ、しかも継続的に実施することになります。成果が挙がるにも相当の時間がかかると思いますが、あきらめることなく粘り強い取り組みが求められます。従来からのBPRのようなトップダウンアプローチではなく、本人の意識に訴えるボトムアップアプローチこそがホワイトカラーの生産性を高める有望な手法と言えるのではないでしょうか。

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プロフィール

大矢 哲夫 (おおや てつお)

取締役 パートナー

東京大学工学部卒業。東京大学工学系大学院修士課程修了。動力炉・核燃料開発事業団に入社し、新型原子炉開発プロジェクトのプロジェクトマネジメントに従事。その後、中央クーパス・アンド・ライブランドコンサルティング株式会社でマネージャー、トーマツコンサルティング株式会社でパートナー、朝日アーサーアンダーセン株式会社でパートナーとして戦略、組織・人事コンサルティングを行い、現職。

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