坂下 幸紀 |2 |執筆者|㈱トランストラクチャ

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坂下 幸紀

column
二刀流人材 | 人材アセスメント

二刀流人材

 有名な方なので、詳細な説明をする必要はないと思いますが、投打二刀流の大リーガーの大谷翔平さんについて少しだけ説明させてください。プロフェッショナルな世界というのは、ある特定の領域を極め、研ぎ澄まされた才覚をもった人材が更なる努力を重ね、しのぎを削っております。だからこそ、その領域でトップレベルに君臨することに最大限の価値があり、賞賛されます。大谷翔平さんは、本来1つしか勝ち得ないトップレベルの領域を2つもっていることで、注目を集め、また唯一無二の存在として君臨しています。まさに「二刀流のプロ」と言えます。単純に2倍頑張れば、実現できるわけでなく、いずれも追及しつつ、相互の刀を磨きあっているかのようにさえ思えます。二刀流を実現するための技術を持っているに違いありません。  この二刀流の技術はビジネスの中でも大変参考にすべきと思います。スキルや適性などの特徴面から対極にある相容れないであろう概念を組み合わせることで、新たなる価値や相互の機能および全体の効果の最大化を果たせるのではと思います。単なる人事ローテーションやジェネラリストとは一線を画す必要があります。対極にある相容れない領域を2つ極めるという点が重要です。  最大の効用は万能さが高まる点です。人事領域おいていうならば、人事制度などのハード面の仕組みしかつくれなかった人が、組織開発など働く人と人との関係性を高め、組織を活性化させるソフト面の施策までできるようになるようなことです。守るために攻める、攻めるために守るなど、この柔軟性は魅力的であり、対極となる相容れない二つの価値観を受け入れることの謙虚さ、視野の広さ、視座の高さなども磨かれるはずです。人間性も高まるかもしれません。  失敗しがちな人事の施策の特徴として、この対極にある相容れない領域に対する取り組みのバランスの悪さがあげられます。人事システムは作ったのだが、活用ができなかった。新しいビジネスを担う人材を適切に採用はしたのだが、外部環境に転職したほうが活躍できる人材の退職勧奨ができなかったなどです。この二刀流を極めたときにこそ、真の目的を達成が最も効果的に得られるはずです。  また大切なことは役割分担ではなく二刀流人材であるということです。どうしても効率さを追求すると組織を分け、担当を分けるなど体制をとるのが一般的ではあります。ただおそらく対極にある相容れない人材どうしだからこそ、連携の難しさが生まれてしまいます。二刀流人材がたくさん存在することで、この心配はとても少なくなります。二刀流人材が行う施策は効果的であり、組織のパフォーマンスが最短で高まるということです。そしてそうそう容易には実現はできないであろう二刀流を極めるこのわくわくするチャレンジングな体験は、エンゲージメントを追求していくひとつのトレンドにさえなるかもしれません。

ひとりひとりの社員に向き合う組織力~人事評価の本質~ | 人事制度運用支援

ひとりひとりの社員に向き合う組織力~人事評価の本質~

 求める人材要件に対して正確に測定し、充足を把握する。社員からは公平性、公正性を求められる。人事評価が機能しないと、社員のやりがいは低下し、離職に至る。社内の片隅でひっそり活躍している宝物を見つけることもできない。給与を決めるだけの形式的、儀式的、属人的な人事評価は人材育成に貢献はしない。戦力は安定せず、戦う集団にならない。人事評価はあるべき人材のポートフォリオを実現していく上で、重要なファンクションと言わざるをえないが、とにかくこの人事評価が機能していない。  そもそも多様な人材の活用を求められているなかで、求める人材要件も多様になり、一律ではない。人材要件を詳細に定義し、評価していくこと自体、無理な話かもしれない。そもそも全く同じ人間など存在しない。何らの基準に対して、達しているか、達していないかの絶対評価も重要ではあるが、ひとそれぞれの特性を把握することが改めて重要になりつつある。  多くの企業で評価は管理職の重要な役割となっている。たったひとりの管理職に多くの人材について要件に対して詳細に評価する責任は重い。その役割を課されることに負担に感じるのも無理もない。本来は評価者である上司が指導をすべきであるが、その上司も評価者を評価、指導できていないことは多い。そんな簡単なことではないということか。  しかしなぜこんな人事評価になってしまったのか、軽視されていたわけではないが、ひとりひとりの人材に向き合う重要性が相対的に高くなかったことにあると思う。年齢を重ねるだけで給与があがってきた日本的な事情や、人口増加を背景に経済的な発展を果たしてきた経済事情などが考えられる。年齢とパフォーマンスのアンバランスの放置。変わらない、変えない、保守的な事業戦略。ただ過去の関係を続けるための予算の策定、それでも成り立ってきた。人材をひとくくりに定義し、何か問題があってやり過ごしていくマネジメントで事業が成立していた。    改めてここでいう必要もないとは思うが、今後ごまかしは通用しない。先の読めない事業環境に対して、リスクをとり、挑戦しつづける集団になること、ひとりひとりの人材を生かすといった観点で組織的に向き合う重要性が高まる。タレントマネジメントに情報管理の業務改革やテクノロジーの進化による人材の特性分析はITベンダにぜひともその発展をお任せするとして、それを使いこなす人材の育成、そして組織としてひとりひとりの社員に向き合う組織力が求められている。    先日の娘の高校の入学式、学年担任の言葉が印象的。「ひとりひとりに担任はいますが、教員全員がひとりひとりを見守ります」と。難しい問題はその責任をもつ人々が当事者意識をもって、常にアンテナを張り、得られた情報を交換し、適宜対応していく組織力が欠かせない。ひとりの子供を養っていくことも相当大変と感じるが、仕事とはいえ、40名もそんな「大変」を一手に引き受け向き合っていこうとする先生の意気込みは尊敬でしかない。未熟な生徒に向き合うことは容易ではないが、しかし大人になったはずの社会人も相変わらずだとは思う。    経営者が先頭にたって、次の世代に向き合って、牽引していく。そんな経営者を見て多くの管理職がもっと人に向き合うことに時間と労力をかける。ひとりひとりをただ純粋に大切に思い、継続的、一貫性をもって、忍耐強く、謙虚に、そして誠実に向き合っていく組織にしていくこと、それが「この会社で働きたい」を増していくはずだ。

「どうしましょう?」ではなく「こうしたい!」 | その他

「どうしましょう?」ではなく「こうしたい!」

『「どうしましょう?」ではなく「こうしたい!」』は前職の会社のDNAである。  多くの人事の責任者や担当者から「どうしたらいいですか?」と話をいただく。「こうしたほうがいいですよ」とか、「一回正確に現状を把握したほうがいいですね」などアドバイスをさせていただく。「目的はなんですか?」「どうありたいですか?」など確認をさせていただく。目的や問題の本質が明確にならないと、有効な解決もできない。その点しっかり確認させていただかないと始まらない。ただこの目的や問題が曖昧なことも多く、明快かつ意志をもって語られる方は意外と少ない。「どうしましょう?」が多く「こうしたい!」がまだまだ少ない。  テクノロジーの進化のスピードが速く、ERPから人事システム、タレントマネジメントシステム、BIツールなどと、人事管理のテクノロジーは進化してきた。AIなどの活用したシステムも急激に増え、カオス状態だ、今後もこの状態が続くのかなとは思う。私自身、当時社内のSEなどをしていたのでシステムに触ることに抵抗はないが、使いこなせるほどその仕組みを正確に理解し、使いこなし、アドバイスができるかといえば、相当学習が必要だ。しかしシステムの目的や本質は当時私が社内SEをやっていたい時代と、さほど変わっていないと感じる。多くの人事の責任者や担当者とシステム化の状況なども話す。「データをどう分析すればいいですか」など質問は多い。また「まだデータをためている段階で目的はこれからです」など、びっくりするような回答もいただく。そんなことわかっているのだが、データを溜めることが目的ではない。必要がないのならデータなんか溜めなくてもよい。結局、この何年も人事管理のレベルは高くなっていないと感じる。「どうしましょう?」ではなく「こうしたい!」が進化していないということだ。    人事の重大な課題解決には時間がかかる。人事領域が法的な制約を受けており、ドラスティックな解決が難しく、社員の気持ちの面など影響が計り知れない。よって慎重に進めることになる。法律の改定、目先の問題に追われ、本来時間をかけて取り組むべき課題への対処が後回しになりがちだ。  「こうしたい!」を進化させるために、大切なことは意志と能力だ。日々のマネジメントの中でのひとりひとりへの関り方が重要になる。すべての仕事に目的意識を持たせること、しつこいくらい。これが無いと考える力が身につかない。またしっかり対話する、誠実に。そうしないと信頼関係が生まれない、組織に自分の意志をささげたいという気持ちは醸成しない。 「こうしたい!」の実現には時間がかかる。どうしても目の前の仕事に追われ、それが実現できない。体制づくり、業務の割り当てが重要だ。先の読めない時代であるからこそ、多くの企業の「こうしたい!」を進化させる、巧妙なマネジメントと強力なリーダーシップが求められている。