中里 壮志 |1 |執筆者|㈱トランストラクチャ

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中里 壮志

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「シニア人材を活用する人事制度」 | 人事制度

「シニア人材を活用する人事制度」

少子高齢化の進行により、労働力人口に占めるシニア層の割合は着実に上昇しており、 シニア人材の活用は多くの企業にとって避けて通れない経営課題となっています。 加えて、近年は高年齢者雇用安定法の改正により70歳までの就業確保措置が努力義務化され、 2025年には継続雇用制度の経過措置終了や高年齢雇用継続給付の見直し、 2026年には在職老齢年金の基準額見直しなど、制度前提も大きく変化しています。 本セミナーでは、こうした外部環境の変化を踏まえ、 シニア人材活用における主要な論点を整理したうえで、 70歳までの雇用を見据えた人事制度設計のポイントについて具体例を交えながら解説します。

思考力はどうやって高める?株式会社トランストラクチャ

歴史から学ぶ、人事の未来 ―生成AI時代に生き残る人事とは― 第1回|維新により侍が立たされた岐路と、人事の現在地

なぜ歴史を振り返るのか ご存知の通り、生成AIはすでに多くの現場で広がり始めています。 数年前は試験的な利用にとどまっていたものが、今では特にホワイトカラー職種の領域では大きな変革の兆しとなっています。 ただし、技術の浸透により業務の効率化は進みつつありますが、意思決定の仕方や役割の捉え方といった、深い行動様式の抜本的な変容は簡単ではないと思われます。理由は「リスクを取ってまで大きく変える段階ではない」と考える伝統的な日本企業の特性でもある、強い慣性が働くと考えられるからです。 この姿は歴史の一場面において、ある観点によっては重なります。 明治維新のころ、武士は刀という役割の象徴を手放し、新しい役割を模索せざるを得ませんでした。もちろん、明治維新と現代の技術普及は背景も構造も異なる現象です。維新は武士を含む体制内部が急速に制度を転換したものであり、生成AIの普及は人々の選択の積み重ねによる側面が大きいといえます。 それでも「変化に直面したときに人がどう分岐するのか」という観点では、両者に通じるものがあると考えることができます。 私たちは今、第4次産業革命の中核とされる生成AIがキャズムを越えて社会全体に広がろうとする変化の過程にあります。 歴史を振り返る意味は、変化の時代に現れる「人の行動」を知り、自身に引き寄せることにあると考えます。 ________________________________________ 維新に揺れる侍の選択 長きにわたり「治安の維持と戦の担い手」として社会の中心にいた武士は、明治政府の改革によってその基盤を根底から揺さぶられます。廃藩置県(1871年)による藩の解体、秩禄処分(1876年)による家禄の公債化、そして廃刀令(1876年)による帯刀禁止。わずか数年の間に、武士は誇りや役割の象徴を手放し、士族という新たな身分に再編されました。 その後の進路は多様でした。教育や官界で新しい役割を担った士族もいれば、新産業に挑戦した士族、開拓に従事して生活基盤を築いた士族もいました。一方で、新しい役割を見いだせず、生活が安定しなかった士族も少なくありません。つまり、同じ士族であっても、新たな役割を再定義して活躍した者がいれば、移行が難しかった者やリスキリングの努力が十分に実を結ばなかった者もいたと考えられます。 ________________________________________ 人事にとっての「刀」とは何か そこで、現代の人事にとっての刀は何か?と考えてみると、「人的資本経営に基づき、経営と現場をつなぐ象徴」と言いたいところですが、実情は残念ながら「膨大なオペレーション業務」になってしまうかもしれません。求人票の作成や面接調整、研修資料の作成や受講管理、勤怠・就業管理や規程運用、さらに経営層向けの会議資料作成や部門間の調整などに日々追われ、人事自身が選んで刀を振るってきたのではなく、組織から“オペレーション部門”として位置付けられ、意図せず刀を握らされてきた構造がそこにあります。確かにこうした業務は会社運営に欠かせないものですが、日常を埋め尽くすことで、人事が本来向き合うべき課題を後景に追いやってきました。そしてその状況に「仕方がない」とあきらめの声も多く聞きます。 しかし、ここにきて生成AIは、この刀をおろす契機を与えています。かつての士族が刀に代わる役割を模索したように、人事もまた“調整とルーティン”を超えて、本来の使命に立ち返る可能性が拓けています。 ________________________________________ 歴史が投げかける問い 明治の士族の歩みは、時代の変化にどう応えるかという普遍の問いを映し出しています。進路は人によって大きく異なりましたが、その差を生んだのは能力や境遇だけではなく、「変化をどう受け止め、どのような問いを立てたか」にもあったのではないでしょうか。多様な軌跡は、時代が人に迫る問いと、それにどう応えるかの違いを示しています。 現代の人事に対して歴史が映し出すのは、人事がこれからどのように役割を再定義し未来を描いていくか、と考えることも出来るでしょう。 ________________________________________ ※本稿は2回シリーズの第1回です。第2回では生成AI時代に、人事がどのように未来を切り拓くのかを展望していきます。

『キングダム』から学ぶ、美しい人材マネジメントシステム | 人事コンサルティング

『キングダム』から学ぶ、美しい人材マネジメントシステム

今回のコラムは、趣向を変え私が愛読する漫画『キングダム』から、人事コンサルタントとして学んだ秀逸な人材マネジメントシステムについてご紹介します。 すでにご存じの方も多いと思いますが『キングダム』は、『週刊ヤングジャンプ』にて2006年より連載中の発行部数1億部を突破している大人気歴史漫画です。 物語は、史実を基に紀元前中国の春秋戦国時代を舞台とし、中華統一を目指す若き秦王・嬴(えい)政(せい)(後の始皇帝)と彼を支える李(り)信(しん)を中心に、交錯する国々の正義、巧妙な戦略や戦術、魅力あふれる登場人物と多様な価値観などが作者・原泰久さんの緻密な構想により情熱的に描写され、世代を問わず多くの人を魅了しています。  作品の魅力は多様に存在していますが、人事コンサルタントとして特に注目したいのは作中で構築されている人材マネジメントシステムです。そのポイントを『キングダム』での特徴の一つである“六大将軍”にちなんで“六大焦点”としてご紹介します。 ※本稿は筆者の個人的な解釈と見解であり、公式および他の読者の意見を代表するものではありません。 また『キングダム』の一部ネタバレが含まれています。まだご覧になっていない方はご注意ください。 『キングダム』に学ぶ人材マネジメントの“六大焦点” ビジョンと戦略の浸透 「中華での戦争をなくす」というビジョンを実現するために「中華統一」という明確かつ確固たる戦略を秦王・嬴(えい)政(せい)は掲げます。そしてその意志は重臣のみならず、各部隊まで落とし込まれており、さらに各部隊が戦略に基づいた行動規範として体現することで見事な共通価値を形成しています。 <引き寄せPOINT> ビジョンと経営戦略の一貫性があり、それらが行動規範として従業員へ心根から周知が図られて共通価値となっている。 戦略と組織構造の整合 中華統一という戦略を実現するために、秦王・嬴(えい)政(せい)は“六大将軍”という組織編成を行います。 現代でいうカンパニー制ともいえる六大将軍制により、それぞれの将軍が強大な権限を得て、戦争にともなう全ての自由と責任を持ちます。中華統一は自国の資源を考慮した時間との戦いでもあったため、戦時の判断を数日以上かけて秦国本陣に諮ることなく、速やかに決定できるこの制度は戦略達成の鍵となります。 <引き寄せPOINT> 組織体制が、漫然とした踏襲や人に紐づくものではなく、戦略達成と連関した合理的な仕組みとなっている。 求める人材を輩出するための評価・報酬制度 六大将軍に求める力は圧倒的な“強さ”です。そのため評価は、出身や人柄を考慮せず、すべて武功を対象とした成果主義となっています。主人公の李信は下僕出身でありながらも、初陣で武功をあげ、百人将に昇格します。その後も実績を上げ続け、連動した報酬をともなって若くして将軍の地位まで駆け昇ります。 一方で、敗戦の責をとる際は国外追放等の厳罰を受ける、など非常にメリハリのついた制度となっていました。 <引き寄せPOINT> 戦略を達成するために必要な人材要件が明確であり、評価・報酬制度が整合し、適切に運用されている。 ビジョン・戦略実現に資する人材ポートフォリオ 秦王・嬴(えい)政(せい)は中華統一が成された後のことも考え、武力ではなく法による支配、すなわち法治国家の実現を構想します。しかし秦の人材だけは知見が不十分だったため、隣国の韓から法の第一人者である韓非子(かんぴし)を招き、法治国家構想を進めることとしました。 この考え方は、現代のジョブ型雇用に通じます。 <引き寄せPOINT> あるべき人材ポートフォリオを実現するために、社内のタレントマネジメントと必要に応じた外部リソースの活用が出来ている。 多様性の受容による価値創出 秦は楊端和(ようたんわ)率いる山民族の協力を得て、他国にとって想定外の戦力・戦術を披露し、強力な一軍とします。これは平地の民と山民族が手を組むということで多様性を活かした価値創出の例であり、現代のDEI(多様性・公平性・包摂性)にも通じます。 <引き寄せPOINT> 多様性を活かし、同質化からの脱却と新たな価値創出を推進している。 持続的成長とウェルビーイング 生死をかけた戦いが続く兵たちは、特定のタイミングで内地の部隊と交代し、一定期間の帰省を指示されます。この仕組みは、戦線に立つという過剰なストレスや疲労から兵を守り、心身ともに英気を養うことが国の持続的な発展にとって重要と考えていた思想が窺えます。この考え方はリトリートの機会を意図して組み込むウェルビーイングの考え方と言えるでしょう。 <引き寄せPOINT> 持続的成長と従業員の幸福を追求し、意図的にリトリートの機会を提供している。 まとめ 楽しみ方や解釈は人それぞれですが、様々な視点から読むことで多くの気づきを得られることがあります。本稿では、『キングダム』における広義の人材マネジメントシステムに着目し、ビジョン・戦略から組織構造、共通価値に落とし込まれ、評価・報酬制度、人材の獲得・育成と見事に整合し、さらにDEI推進による価値創出やウェルビーイングまでが美しく描かれていることを述べました。 このように、専門書だけでなく、多様な情報源をヒントに自社の人事を見直し、向上させるきっかけとしてみてはいかがでしょうか。 人事コンサルタントとして、そして『キングダム』の一ファンとして執筆した本稿が、何かしらの形でお読みいただいた方のお役に立てるようであれば幸いです。

経営者が「人的資本経営」に体重を乗せるには? | 人事制度

経営者が「人的資本経営」に体重を乗せるには?

 私が相談を受けた、ある中堅企業の経営者と人事担当者の話です。 <経営者>  ここ数年、専門部署を設置する等DXに注力している。DX推進を意思決定した背景は生産性向上収益につながると認識しているからである。他方、人的資本経営の開示においては課題項目になりそうな女性管理職を今後は増やすよう指示している。人的資本経営とは言うものの物価高騰の中で賃上げも実施せざるを得ない状況で、人にかけるコストは極力抑えたいのが本音だ。 <人事担当者>  経営者は「DX推進だ!」と言っているが実際はクラウドシステム導入であり、変革(トランスフォーメーション)は全く行われておらず社内では「D推進」と揶揄されている。一方で人事には時間も予算も増やす予定はない。社内では若年層の離職率が高まり閉塞感が漂っている。人事としては「人的資本経営」の時流に乗って人への投資も重要だと認識してもらいたいが経営者には伝わらない。  このギャップをどうすれば良いだろうか・・。  上記のような相談が経営者や人事担当者から寄せられることは少なくありません。  これまでの失われた30年では人件費は最大のコストとして削減対象である、と捉える経営者が少なくない一方で、人事側は労働人口の減少傾向、採用市場の獲得競争激化、必要人材像の変化など外部・内部環境の変化により人事戦略の在り方について危機感を募らせています。  このギャップの論点は「人的資本経営」の意図をどのように理解しているか、であると考えられます。単年を切り取った開示KPIのみ捉えると前述の経営者のような発想に陥ってしまいますが、本質を考えることで対応も変わってきます。  人的資本経営の効用は旧来より立証されてきています。有名なものは1994年にハーバードビジネススクールのJ・L・ヘスケットらにて提唱された「サービスプロフィットチェーン」(以下SPC)です。  SPCを要約すると従業員のロイヤルティを高めることで、サービス品質の向上や顧客のロイヤルティ向上、収益性の向上につながり、そこで得た利益を従業員に還元することで更に従業員のロイヤルティが高まるという好循環を生む、という概念です。  広く取り入れられている概念ですが、重要なことは短期視点で手法だけを取り入れても自社と整合しなければ借り物の施策で終わってしまうことです。自社のありたい姿を実現するための戦略と必要な人材に沿った施策、その答えは自社内にあり、それを経営者に進言することが人事担当に求められているのではないでしょうか。 その為には人材を「資源・コスト」として捉える目と「資本・投資」対象と捉える目の両目で見つつ、更に「どこに」「何を」「どのように」「どの程度」投資するかの判断軸を磨き続かなければなりません。今こそ改めてSPCの概念に立ち返り、人的資本経営という共通言語のもと、人事が経営者の良きパートナーとなっていただければ幸いです。