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新卒社員の離職率<br />~企業のキャリア教育に対する責任とは~ | モチベーションサーベイ

新卒社員の離職率~企業のキャリア教育に対する責任とは~

 新卒採用しても一戦力化する前に離職してしまうという課題を抱えている人事担当者の方は多いのではないでしょうか。日本はゼネラリストとして育成することを前提とした採用が中心のため、一人前として成長する前に離職となると企業にとって大きな損失となります。離職防止策として初任給の引き上げが行われることも多いですが、社員がモチベートされる理由は賃金以外にも様々な理由があります。そのため、各企業は賃金以外についても課題がないか実態を把握する必要があります。  新規大学就職者の3年以内離職率は企業規模が大きいほど低くなるものの、最も離職率が低い1,000人以上の企業でも約25%と4人に1人は入社3年以内に退職しており、非常に高い傾向にあります。企業規模が大きくなるほど退職率が低くなる理由としては、大企業ほど社員への雇用責任が強く求められ、雇用者が手厚く守られているということが挙げられます。 (図表1:新規大卒就職者の企業規模別3年以内離職率(平成30年3月卒)) 出典:厚生労働省「令和3年 新規学卒者の事業所規模別・産業別離職状況」を加工して作成  そして、最も離職率の低い大企業でも約25%もの新規大卒就職者が退職しているということは、採用の際に企業側と学生側で職務に関するミスマッチが起きていると考えられます。  現に、自己都合退職した20~24歳の離職理由として、「満足のいく仕事内容でなかったから」が約4人に1人おり、「賃金が低かったから」を若干上回ります。この背景として、日本におけるキャリア教育は不十分であり、実際に働くことを想定した講義は多くないということが挙げられます。キャリア教育が不十分な結果、仕事を通じて実現したいことは何か曖昧なまま就職活動を行い、働くにつれ「想像していた仕事と違う」となった結果、離職に繋がっているのです。企業側も、新卒一括採用で一度に多くの候補者の中からポテンシャルを重視して採用することも多く、その人が本当に適性や業務遂行する十分な能力を有しているのか正確に判断することは難しい状況です。 (図表2:20~24歳における自己都合退職者の離職理由) 出典:厚生労働省「令和2年 雇用の構造に関する実態調査(転職者実態調査)」を加工して作成注)上記データは「最終学歴」「直前の勤め先での就業形態」「現在の勤め先での就業形態」による区分はされておらず、また、新卒者以外も含まれる。  また、20~24歳の転職者が今の勤め先(転職後の勤め先)を選んだ理由として最も多く、約半数を占めるのは「仕事の内容・職種に満足がいくから」です。「自分の技能・能力が活かせるから」が次に続いていることからも、就職前ではなく働き始めてから、自らの適性や仕事を通じた目標などキャリアが明確になり、新たな環境を選択する社員が増えていると推察されます。 (図表3:20~24歳の転職者における今の勤め先を選んだ理由) 出典:厚生労働省「令和2年 雇用の構造に関する実態調査(転職者実態調査)」を加工して作成注) 上記データは「最終学歴」「現在の勤め先での職種」「現在の勤め先での就業形態」「事業所規模」による区分はされていない。  職務に関するミスマッチを減らすために、企業・教育機関は連携して、学生が働くことに対して向き合う機会を積極的に提供しなければなりません。例えば、長期休暇期間だけの補助業務や体験業務のような短期インターンシップだけではなく、より実務に近い業務を担う長期間のインターンシップ制度を充実させることで、企業・学生共に適性を把握することができます。また、学校は働くことを意識した講義の充実に加え、学生がインターンシップで認識した不足しているスキルを補えるような環境を整備しなければなりません。 また、採用担当者は、選考段階から入社後に担う職務と目指すキャリアゴールを説明しなければなりません。説明するためには、どのような方針をもとに人事制度が制定されているのか採用担当者は理解を深める必要があります。そもそも人事制度のコンセプトと会社方針が連動していない場合は人事制度そのものを見直さなければなりません。経営目標を達成するにはどのような人材が求められ、各人材群はどのようなキャリアを描くことができるのかが整理されて初めて、採用すべき人材が明確になります。  新卒社員の離職率を下げるためには賃金以外にも、「どのような能力を発揮し、キャリアを歩んでもらいたいのか」という企業側の思い、そして、社員一人ひとりの「職務を通じて達成したい目標」の双方が合致するよう、採用までの在り方を見直さなければならないのです。 以上

健康寿命とシニア人材<br />~シニアの活躍こそ日本の成長につながる~ | モチベーションサーベイ

健康寿命とシニア人材~シニアの活躍こそ日本の成長につながる~

 ひと昔前までは60歳で定年退職し、退職金をもらいその後の余生はゆっくりすごしたいと思っていた方も多かったのではないでしょうか。高年齢者雇用安定法が令和3年に改定され、70歳までの就業確保措置を講じることが企業の「努力義務」となりました。今後働き続けるためには、本人にとっても、そして企業にとっても健康であることが前提です。今回は健康寿命について解説してまいりたいと思います。  図表1は平均年齢と健康寿命の推移を示しています。「健康な人」というのは、全国から無作為抽出された国民を対象に,「あなたは現在,健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」の質問対して,「ない」と回答した人のことになります。  健康年齢を男女別で時系列に推移をみると、男性は2001年に69.4歳でしたが、2019年には72.68歳上昇、そして女性は2001年には72.65歳でしたが、2019年には75.38歳と75歳を超えています。また男女の差は、女性のほうが健康寿命が長い傾向はかわらないものの、2001年に男女で3.25歳あった差が、現在2.5歳とその差が縮小しています。平均年齢と健康寿命ともに上昇傾向にあり、平均年齢と健康寿命の経年の差に大きな変化は見られませんが、健康寿命に男性は約9歳、女性は約12歳を加えた年齢が平均寿命で推移しています。このままの傾斜で推移すると、2030年の健康寿命は男性が約74歳、女性は約76歳となり、その差が縮まってきていくことが予測されます。 (図表1:日本の男女の平均寿命と健康寿命の推移) 資料:平均寿命については、2010年につき厚生労働省政策統括官付参事官付人口動態・保健社会統計室「完全生命表」、他の年につき「簡易生命表」、健康寿命については厚生労働省政策統括官付参事官付人口動態・保健社会統計室「簡易生命表」、「人口動態統計」、厚生労働省政策統括官付参事官付世帯統計室「国民生活基礎調査」、総務省統計局「人口推計」より算出。    図表2は、WHOが発表した2022年版の世界保健統計(World Health Statistics)による、各国の男女平均の健康寿命になります。最も長い国は男女ともに日本で、トップ3は日本、シンガポールや韓国とアジアの国が占めています。世界全体の健康寿命は平均63.7歳。 そのうち男性が62.5歳、女性が64.9歳となっています。日本は長期に渡わり労働力として社会で活躍できる人材が多いことを意味し、健康先進国といえます。 (図表2:各国の健康寿命ランキング(2019年)) 出典:WHO 世界保健統計2022年版に掲載されている健康寿命統計    日本では労働生産性の低さ、競争力の低下、労働力不足などが課題となっています。健康で長く活躍していくことは、労働力不足の解消にも直結することから、今後シニア人材の活用、活躍が期待されています。社会保障の財源の問題の解決、そしてなにより豊かな生活をするために働き続けなければならない個々人の事情もあります。 企業においては、シニア人材が活躍できる基盤の整備が遅れています。シニア人材は現役を引退し、活用が難しい再雇用者ということではありません。改めてシニア人材に対して求められる役割、スキルセットを明確にし、必要な教育を講じることで、配置の柔軟さを高め、シニア人材にとっても残りのキャリアを充実した時間としていくことが求められています。 以上

望ましい労働時間・生産性に向けて<br />~長時間労働の抑制がなければ生き残れない時代へ~ | 人事アナリシスレポート®

望ましい労働時間・生産性に向けて~長時間労働の抑制がなければ生き残れない時代へ~

 日本のサラリーマンの労働時間は長い、と言われています。OECDが取り纏めているデータベースによると、労働者の1人当たりの年間平均労働時間は、2020年時点で、日本が1,621時間に対して、ドイツでは1,284時間、フランスでは、1,320時間です(※1)。ここで示す労働者にはパート・アルバイトなどの非正規雇用も含まれ、厳密な国際比較はできませんが、日本では非正規割合が他国よりも高いのにも関わらず、年間平均労働時間が長いことから、やはり日本のサラリーマンは長い時間働いている、という感覚の確認はできるでしょう。  残業時間削減に向けた取り組みとして、平成22年(2010年)には、月間60時間を超える法定外超過勤務時間に対して、割増率を1.25倍から1.50倍に引き上げる法改正がなされました。中小企業はこれまで13年間もの間、猶予されてきましたが、令和5年(2023年)4月から対象となります。労働法改正や、各企業の取り組みにより、労働時間は若干の減少をしているものの、正社員1人当たり、年間2時間程度の削減に留まっており、大幅な削減とはいいがたく、継続した取り組みが必要です(※2) 。  企業規模別の時間外労働(平均時間)をみると、いずれの規模においても、30時間未満、10~20時間未満の企業が過半数を占めることが分かります。一方、今回の規制に抵触する60時間以上の割合、ギリギリラインである50~60時間の割合は(図表1、濃い赤・赤)は、1,000名以上規模でも若干みられる他、100~299名未満規模において他の規模より多くなっています。 (図表1:平成28年9月時間外労働(平均時間)(規模別)) 出典:『労働統計要覧(D 労働時間)』厚生労働省 (mhlw.go.jp)  経団連の2020年労働時間等実態調査によれば、時間外労働時間は年々減少傾向にあります。2019年では、年間の時間外労働時間平均が360時間未満(月平均30時間未満)の企業が90%を超えています。ちなみに、製造業と非製造業を比較すると、非製造業の方が残業時間は長い傾向にあるが、非製造業でも84.2%の企業において、年間の時間外労働時間の平均は360時間未満です。 一方で、母集団に占める割合は低い(2019年時点では0.4%)ものの、年間の時間外労働時間平均が720時間以上(月平均60時間以上)の企業も存在し、これらのほぼ全ては中小企業です。2023年4月の法改正による、中小企業における60時間を超える残業代の割増率の猶予期間終了は、これらの企業の人件費単価に対してインパクトを与えます。 図表2:時間外労働時間(一般労働者) 出典: 一般社団法人 日本経済団体連合会『2020年労働時間等実態調査』  中小企業庁による、「長時間労働に繋がる商慣行に関するWEB調査」(平成30年)によると、長時間労働に繋がる主な商慣行上の理由は3つです。①納期のしわ寄せ(前工程の遅れが下請け企業のしわ寄せとなることによって生じる短納期)②受発注方法(川下の取引先に対し過度な要求をすることによって生じる多頻度配送、在庫負荷、即日納入など)③特定業界に依存することによる特定時期の過度な繁忙(売上が特定企業や官公庁に偏重することにより、年末年始などの一時期に業務や納期が集中すること)(※3)  こうした状況に置かれるのは、交渉力が弱い小規模企業である下請け企業が多いです。状況の是正のためには、適正な業務運用ができるだけの交渉力を持つことや、特定の企業・取引先に売上を依存しない取引先のポートフォリオ適正化が必要です。  また、ビジネスモデルの特性上、大きな繁閑の差が生じることが致し方ない場合、人事管理の観点では、現有人材の時間数を長くすること(残業)による業務処理ではなく、短期の有期雇用や人材派遣活用など、人員数・ポートフォリオのコントロールによる業務処理を検討し、現有人員の人件費単価ではなく、人員数による業績連動コントロールも必要です。  日本では、企業数が非常に多く、同業界内で大企業から中小企業へ商流が多重構造になっていることも、下流企業で業務量や納期に無理が生じる主要な要因です。生産性向上のため、統合やM&Aによる業界内の産業構造の見直しも必要でしょう。  生産性向上できない企業は、人件費単価増に苦しむこととなります。また、法整備により他の企業の労働環境が改善されることで、職場・労働環境の魅力の観点から、労働力の流出リスクもあり、改善は急務です。 以上 (※1) OECD Database http://stats.oecd.org/index.aspx?datasetcode=anhrs “Average annual hours actually worked per worker” 2021年11月現在 注:データは一国の時系列比較のために作成されており、データ源及び計算方法の違いから特定年の平均年間労働時間水準の各国間比較には適さない。フルタイム労働者、パートタイム労働者を含む。 (※2) 総労働時間の推移 https://https://www.transtructure.com/hrdata/20201201/ (※3) 中小企業庁『長時間労働に繋がる商慣行に関するWEB調査結果概要と今後の対応』 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/koyou/2019/190201jinzai01.pdf  

伸びない女性管理職割合・男女差が埋まらない育児休業率<br />~女性活躍推進への一歩は意識改革と即実行~ | モチベーションサーベイ

伸びない女性管理職割合・男女差が埋まらない育児休業率~女性活躍推進への一歩は意識改革と即実行~

 社会における女性活躍を軽視している人はいないでしょう。様々な手で女性が活躍できるようにと努力がなされています。しかし、実際の女性の活躍、男女の雇用機会均等の実現は想像以上に厳しい道のりです。  管理職に占める女性の割合は女性活躍を測る重要な指標の一つです。そして大きなライフイベントの一つである出産・育児についてもキーポイントとしてとらえる必要があります。  管理職に占める女性の割合は緩やかな上昇傾向ではありますが、男女雇用機会均等が実現しているとは言い難いのが現状です。特に実務の中心を担う部長、課長相当職の女性割合の低さが顕著であり、いかに女性管理職が生まれていないのかがわかります。  データで見ると、最も高い係長職に占める割合でも17.9%、部長相当職に占める割合にいたっては6.2%といまだに10%にも満たない状況です。 図表1: 企業規模30人以上における役職別女性管理職割合の推移 出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」注1)平成23年度は岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果  女性の活躍が進まない背景の一つの理由として出産・育児があげられるのではないでしょうか。育児休業を取ることができる労働環境は必須ですが、いまだに男性は育児休業を取りづらい、取るべきではないという意識があるのではないかと推察します。  育児休業者率の推移データを見ると、女性は平成19年度以降、80%を超える水準で推移していますが、男性は平成29年度に5%を超え、そこからやや上昇、令和2年度は12.7%となっています。依然として男女での差が大きい状態が続いており、男性の育児休業取得が進んでいないことがわかります。 図表2:育児休業取得率 出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」注1)平成22年度及び平成23年度の比率は、岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果  また、この育児休業取得率を産業別に見ても、男女の差は明らかです。  金融業,保険業が男性の取得率で最も高く30%を超えていますが、女性のとの差は50%以上です。電気・ガス・熱供給・水道業の男性取得率が最も低く、2.95%という状況です。業種による人材流動性の高低や雇用環境、職種など様々な要因がありますが、男女の差がなく、かつ高い水準であることが理想でしょう。 図表3:産業別育児休業取得率 出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」注1)平成30年10月1日~令和元年9月30日に出産した者又は配偶者が出産した者のうち、調査時点(令和2年10月1日)までに育児休業を開始した者(開始の予定の申出をしている者を含む。)の割合  労働力不足の中、多様な人材の活用が必須の現代で、女性が活躍できないことは大きな問題です。これを脱却するポイントは、男性・女性、既婚・未婚、子どもを持つ・持たないに関わらず、優秀な人材の育成と登用、働く環境の整備をしていくことです。育児休業に限って言えば、まずは企業として男女関わらず育児休業を取ることや、復帰後も活躍することはごく普通のことであるという意識改革、そして社員に子どもが生まれたら育児休業を勧めるような、即時実行が必須です。  また、企業側の努力のみならず、働く側の意識改革と実行が重要です。男女の雇用機会均等は、家事分担や育児分担がなされていることが前提です。特に共働き世帯では、家事や育児について家庭でストレートに話し合い、育児をしながらも活躍できる、または活躍するという意識を持つことで、道は拓けていくでしょう。  誰もが平等に活躍できる社会の実現は、意識改革からの実行にあるといえます。 以上

人事の数字管理に役立つ人事指標<br />~外部データを活用して継続的観察を~ | 人事アナリシスレポート®

人事の数字管理に役立つ人事指標~外部データを活用して継続的観察を~

 定期的に健康診断を受診することは健康管理上非常に重要です。しかし、医療機関における網羅的・専門的な検診や人間ドックの受診時だけでなく、日々、検温等で自己の体調を管理・把握することも重要です。  企業においても同じであり、定期的に網羅的で専門的な目線でチェックを受けることが望ましいが、日々、自己管理できれば尚良いでしょう。そこで、今回は、人事が自社の状態を把握するために活用できるデータと、その使い方を紹介します。 (図表1:法人企業統計調査の見方) 出典: 財務省 財務総合研究所「法人企業統計調査 財政金融統計月報822号」    財務省の財務総合研究所が発表している、業種別・資本金規模別の資産・負債・純資産及び損益計算書には、付加価値額や人件費、人員数が掲載されています。これらの数字を使って、自社と同規模・同業種の平均的な労働分配率や労働生産性を知ることができます。 労働分配率は、人件費を付加価値額で割ることで求められます。労働生産性は、付加価値額を従業員数で割ることで求められます。  労働分配率・労働生産性は同規模・同業種の企業間であってもビジネスモデルによっては数字の出方が異なることは考えられます。外部データと自社水準の差がある場合、例えば、同業種の中でも特殊な製品を扱っているため他社より○○費が嵩むなど、その理由に説明がつくことが望ましいです。一方、外部水準と乖離している理由が分からない場合、合理的な理由で無い場合には是正施策が必要となります。 (図表2:賃金構造基本統計調査の見方) 出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」    労働分配率の高低・労働生産性の高低を把握すると、自社の人件費の単価が妥当なのか否かが気になってきます。そこで活用できるのが、厚生労働省が発表している、賃金構造基本統計調査です。従業員数によって区分された企業規模別、製造業・建設業などの業種別や、男女別、大卒・高卒などの学歴別、年齢別、部長級・課長級などの役職別等、多岐に渡る分類ごとに、月収や賞与の水準が公開されています。 「決まって支給される給与」が、手当や残業代等も含めた月収合計の水準であり、年間賞与等の金額も明らかにされています。決まって支給される給与の12倍に年間賞与額を加算することで、年収水準も知ることができるのです。  こうして求めた外部の水準と、自社の各属性の月収・賞与・年収の水準を比較して自社の給与水準が高いのか低いのか、言い換えれば労働市場に対してプロテクトが効いているのか、把握することができます。  自社の人事の定量的な状況を知るために、まずは入手可能なデータを活用し、簡単な分析を継続的に行うことで自社の状況の観察をしてください。そして、一定期間ごとにより網羅的・専門的な分析をすることで問題課題の発見や施策展開につなげることが望ましいです。  具体的には、例えば今回紹介した外部データと自社内のデータを掛け合わせることで、社員のパフォーマンス別に望ましい処遇ができているかという人事制度上の問題課題を見つける分析や、中長期的に人件費や人員数がどのように推移するのかといった将来予測シミュレーション等さまざまな分析に応用できます。  適切な現状把握は経営判断・健全な人事管理の重要な土台となるものですから、まずはできる範囲で、そしてより多面的・専門的に分析をする必要があるのです。

メンタルヘルス対策<br />~心の病が最も多い世代とストレスの内容~ | モチベーションサーベイ

メンタルヘルス対策~心の病が最も多い世代とストレスの内容~

 近年、職場における若者のメンタルヘルス対策が話題に上がることが多くなっています。そこで今回は、年代別の心の病の割合と、従業員が抱える就業上のストレスの内容について解説します。  企業に対する調査の結果によると、実際に心の病を抱える従業員が最も多い年代として10~20代を挙げている企業が増加傾向にあります。多くの企業の経営者や人事担当者の方々が、口にする「若者のメンタルヘルスの問題が増えてきている」との感覚は、実態に合っていると言えます。  過去に目を向けると、2000年代前半には心の病が最も多い年代として挙げられる年代は、30代が突出していました。30代は、職場・プライベート共に変化や心身にかかる負荷が大きく、心の病を抱えがちな年代であったのです。具体的には、職場では「働き盛り」「管理職(候補)」と期待され、質・量共に業務上の負担が掛かりがちな世代であると同時に、結婚や育児、場合によっては両親の扶養や介護が始まる等、プライベートにおいても変化が多い世代であることが推察されます。  その後、2019年時点では、50代以上を除き、10~40代がほぼ同水準となっています。10~20代については過去からの増加率が高いため若年層のメンタルヘルスに対する問題意識を特に抱きがちですが、年齢による差が無くなってきているというのが現状です。  年齢差が無くなってきた要因は、複数考えられますが、職場において年功的要素が徐々に薄まってきたことや、生産性向上への強い要請を背景に、即戦力志向が強まってきていることも一因でしょう。従来、一定程度の年数をかけて育成された30代の従業員に対して期待してきた役割や負荷が、前後の年代に対しても広がりつつあると考えられます。また、ライフスタイル・ライフプランに対する価値観の多様化も進み、プライベートで抱えるストレスについても年代差が少なくなってきているのではないでしょうか。   図表1:心の病の最も多い年代 出典: 公益財団法人 日本生産性本部「第9回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果」(2019年11月22日)  続いて、年代ごとの業務上のストレスの内容に目を向けてみても年代による大きな差はないことが分かります。  いずれの年代においても最も多いのは「仕事の質・量」に対するストレスです。労働者として職業生活を送る上で致し方ない部分もあるとは考えられますが、企業には長時間労働の防止等によるワークライフバランスへの考慮と生産性向上施策等を講じることが求められます。  その次に多いのは「仕事の失敗・責任の発生等」であり、「仕事の質・量」に続いて仕事そのものに関する項目が挙げられています。続いて「対人関係」「役割・地位の変化等」が挙げられています。  仕事そのものに対するストレスと、職場というコミュニティの中での立ち位置や他者との相対的な関係性の中で引き起こされるストレスが、職業上のストレスのうちの大部分を占めていることがわかります。この傾向には年代による差は、ほとんど見受けられません。   図表2:仕事や職業生活に関する強いストレスの内容 出典: 厚生労働省「平成30年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」 注:1人3つまでの選択式であるため最大値は300%である  今後も引き続き継続的なストレスチェックを実施し、従業員のストレス状態を把握・観察し続ける必要があります。また、各年代に共通する「仕事の質・量」によるストレスを軽減・緩和すべく業務の質・量の調整を通じて従業員のワークライフバランスを保つことも重要です。  

労働者の就労に対する意識(年齢階層別)<br />~時代で変わる「働く目的」、やはりお金が一番?~ | モチベーションサーベイ

労働者の就労に対する意識(年齢階層別)~時代で変わる「働く目的」、やはりお金が一番?~

 労働者の就労に対する意識(以下「働く目的」とする)は、労働者の労働意欲・パフォーマンスに大きく関わります。その為、効果的な人材活用にあたり「働く目的」をしっかり踏まえた上で施策を検討する必要があります。但し、「働く目的」は時代や社会的背景に大きく影響を受け、世代によってその特徴に違いがある為、時代の変化に応じ世代別の傾向を捉えておく必要があります。  内閣府の『国民生活に関する世論調査』(2019年)によると、世代にかかわらず労働者の大半が「お金を得るため(=金銭的報酬)」に働いていることが分かります。特に、20代・30代・40代の三階層は割合の高さが顕著で、回答の約7割を占めています。一方、40代以降はその割合が低下し、70代以上の階層では4割程度となります。  そして、「生きがいをみつけるため (=生きがいを求める志向)」に働く労働者は40代以降で増加し、当該階層で1割程度だった割合が70代以上の階層では3割程度となっていることから、年齢が上がるにつれ重要視されていることが分かります。 (図表1)労働者の就労に対する意識 出典:内閣府『国民生活に関する世論調査』労働者の「働く目的」に関する調査結果(単一回答)を年齢階層別に示したもの    また、当該調査結果はこの20年間(2001年比(※))で大きく変化しました。 例えば、「お金を得るため(=金銭的報酬)」に働く労働者の割合は全世代において増加しています。他にも、「自分の能力や才能を発揮するため(=キャリア志向)」に働く割合は20代(若年層)で増加し、「生きがいをみつけるため(=生きがいを求める志向)」に働く割合は50代以降の高齢層で大きく増加しています。 ※2001年は、就職氷河期のピーク、情報化の進展(ブロードバンド元年)等社会環境が大きく変化した年として比較対象とした。 (図表2)労働者の就労に対する意識 出典:内閣府『国民生活に関する世論調査』  以上、世代別傾向を踏まえた上で「働く目的」別に以下の事が言えます。 「お金を得るため(=金銭的報酬)」は、2019年において全年齢階層で一番高い割合を占めています。また、2001年比で見てもその割合は全年齢階層で増加しており、働く目的として重要視する傾向がより強くなっています。このことから、労働生産性を高めるとともに、労働分配率を見直して社員への配分をより高める事が重要です。  「自分の能力や才能を発揮するため(=キャリア志向)」は、2019年において20代が一番高い割合を占めています。また、2001年比で見ても20代における割合は増加しており、若年層のキャリア志向が進んでいます。今後そういった成長意欲の高い人材を会社の主要な戦力として育成していく場合、重要なことが主に二つあります。まず、キャリアパスが明確で、魅力的なキャリアゴールを描ける制度になっていること、そしてキャリア構築をサポートする計画的な育成施策が整備されていることです。  「生きがいをみつけるため(=生きがいを求める志向)」は、2019年において50代以降で高くなっています。また、2001年比で見ても50代以降における割合は大きく増加しており、昨今働く目的として重要視されてきています。今後雇用年齢の上限延長に伴って増加が見込まれる定年再雇用者の活用は非常に重要であり、その為にも高年齢者が生きがいや働きがいを得られる体制を構築していく必要があります。  例えば、定年後も能力発揮が求められるような再雇用の在り方について検討する事が必要です。他方で、働き方に多様性を受け入れる体制の整備も必要です。これらを踏まえ、定年の5年以上前からキャリア形成支援の研修を実施する事や、継続雇用契約を締結する際に本人の求める労働スタイルにマッチした職務の提供を行う事も重要となります。 さらに、50代以降は健康寿命を延伸しないと体力・気力が大幅に低下し、それに応じてパフォーマンスが著しく下がってしまいます。その為、高年齢者の活用に当たっては、健康経営の推進も非常に重要となります。                 以上

適切な管理職の割合は約10%|業種・企業規模別の管理職比率 | 人事アナリシスレポート®

適切な管理職の割合は約10%|業種・企業規模別の管理職比率

 管理職は経営陣と一体となり、会社を牽引する非常に重要な役割を担うポジションです。重要性は極めて高く、指揮指導により組織を牽引する社員が全社員に占める割合は決して多くはないはずです。管理職比率の妥当な水準はどの程度なのかを探るべく、企業規模別・業種別の管理職比率のデータを解説します。  図表1は、企業規模別の正社員に占める部長比率・課長比率を示しています。企業規模が大きいほど部長比率は低く、課長比率は高い傾向にあることが分かります。部長比率に関しては、大企業であれ、中小企業であれ、部として設ける機能の数に大きな差が無く、必要な部の数に大きな差が無いため、大企業の方が社員に占める部長の数が少なくなることが考えられます。  一方の課長比率については、中小企業では組織規模が小さいことから、部長が課長の役割も兼ねるケースがあることや、大規模な組織では課長代理・課長補佐など、ラインマネジメントを担わないものの年功的な観点から課長級として処遇される社員を抱える余裕があることなどが影響していることが考えられます。  こうした傾向があるとは言え、部長比率・課長比率の合計はいずれの企業規模においても10%程度と、顕著な差がある訳ではありません。この数字は、実感とかなりの乖離があるのではないでしょうか。管理監督者の比率という観点では、特に年功的な人事管理を行っており平均年齢の高い会社では、30~50%という会社も散見されます。単に組織の管理者という視点では10%程度で足りるのに対してかなりのギャップがあることが分かります。   (図表1)管理職比率(平成30年) 出典:厚生労働省『賃金構造基本統計調査』  次に、図表2で業種別に管理職比率をみてみると、産業計や他の業種と比較して、建設業では突出して高く、運輸業・郵便業は低いことが分かります。建設業では、1つの現場に対して元請け、下請け、孫請けがあるなど、ビジネスの構造が多重構造となっており、関与社数が多く、各社ごとに管理職社員がいるため、業界全体としても管理職比率が高くなっているのです。  一方の運送業では、管理職は運送・配送という単一の業務を担う人材を取りまとめるため、管理する部下の数を多く持てること、収益性の観点から管理する社員よりも現業に関わる社員を多くする方が効率的であることから、管理職比率が低く抑えられているのです。   (図表2)産業別部長比率および課長比率(平成30年) 出典:厚生労働省『賃金構造基本統計調査』  管理職比率が図表1や図表2の水準並みである場合も、管理職比率と管理監督者比率の間に大きな乖離がある場合には、総額人件費や労務的の観点で問題があり、早急な見直しが必要です。  また、最適な管理職比率はビジネスモデルのあり方や正社員比率などにも依存するため、外部の水準によらず、ユニークな場合もあります。定期的に生産性の指標や、管理される側の従業員の働きやすさなどをモニタリングし、自社に合った水準を探り、上手くコントロールすることが望ましいです。 以上

若年・中堅層の転職率は全体の約3倍に増加|離職防止のための人事制度 | モチベーションサーベイ

若年・中堅層の転職率は全体の約3倍に増加|離職防止のための人事制度

 昨今、日本国内における人材の流動性が高まっています。背景にあるマクロ環境要因としては、終身雇用の衰退や、若者の転職に対する意識の変化などがあると想定されますが、いずれにせよ転職者の割合が今後増加する事に伴って、人事管理の在り方を変革していく必要があります。  図1は、転職者比率(以下転職率と称する)に関する推移を年齢階級別に示したものです。総数の推移で見ると、2011年の4.5%から2019年の5.2%で、1年あたり約0.1%の微増傾向となっています。また、年齢階級別にみると、基本的に若い世代になるほど転職率は高くなっています。直近1年間では、15-24歳で1.0%、25-34歳の階級で0.8%と大きく割合が増加しています。総数の増加割合である0.3%と比較すると、約3倍程度も増加しており、若年層~中堅層ほど顕著に転職率が増加している事が分かります。   (図1)年齢階級別転職者比率 出典:総務省『労働力調査 詳細集計(長期時系列データ)』  図2は、転職率が高い若年~中堅層において、実際に転職した人材の離職理由を示したものです。割合上位の項目(「その他の理由」を除く)に着目すると、どちらの階層も共通して、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」「職場の人間関係が好ましくなかった」「給料等収入が少なかった」の項目が上位3つを占めています。それぞれの階層でこれら上位3項目の割合を合算すると、19歳以下~24歳の若年層では43.9%で約2人に1人が当該理由によって辞職しています。同様に、25歳~34歳の中堅層では35.0%で約3人に1人が当該理由によって辞職しています。以上の事から、転職率の高い若年~中堅層においては、労働条件・人間関係・給料に関する問題が主な辞職理由となっていることが分かります。   (図2)転職入職者が前職をやめた理由別割合(2019年) 出典:厚生労働省『雇用動向調査』出典の転職入職者数データを基に加工  今後も人材の流動化はゆるやかに進んでいくものと考えられますが、流動化の進行に伴い、人事管理として中途採用の強化と離職防止の重要性が増すと考えられます。  中途採用の強化によって、今まで育成できなかったタイプの人材を採用できるチャンスが増えるとともに、即戦力の人材を獲得できるメリットがあります。但し、優秀な人材を採用するためには、求める知識、スキルを明確にすると同時に、労働市場に連動した給与へ転換する必要があります。つまり、職種、等級制度、給与制度の再整備が必要になるということです。  同時に、自社の社員の過度な離職も防止しなければなりません。特に若年者層に対してはワークライフバランスを重視した、労働条件・環境の整備が求められます。また、若年者層に関わらず、社員満足度調査などを定期的に実施して、離職の主要な原因を分析し、対応していくことも必須であると言えます。               以上

非正規雇用の割合は30年で2割から4割に増加|人件費構造の見直しが企業の急務 | 人事アナリシスレポート®

非正規雇用の割合は30年で2割から4割に増加|人件費構造の見直しが企業の急務

 ここ30年の間に非正規雇用者はその数でも、雇用者に占める割合でも大きく増加してきました。近年では、非正規雇用の活用の弊害や限界も指摘されていることから、今後は非正規雇用者の正規社員化や処遇の改善が進み、非正規割合の伸びは鈍化し、その後は減少傾向になることが予想されます。非正規割合の高い業種や企業では収益構造の転換が求められるでしょう。  図1を見ると、平成の約30年の間に、雇用者に占める非正規雇用者の割合は約2倍へ大きく増加していることが分かります。平成元年の非正規割合は約20%でしたが、平成31年には約40%と、雇用者の5人に2人が非正規雇用者となっています。平成9年の消費税増税や平成10年の金融危機の影響から景気が急速に悪化し、特に平成10年から平成15年までの5年間は非正規割合の伸び率が突出して高くなっています。この5年間の雇用者全体の内訳を見ると、正規雇用者数が減少し、非正規雇用者数が増加しています。景気の悪化を理由に、各企業が非正規化を進めたのです。   (図1)労働人口構成 出典:総務省統計局『労働力調査 長期時系列データ(詳細集計)』  これまで、人件費をできる限り抑え利益を確保する目的で、非正規雇用者の活用が進んできましたが、こうした目的での非正規活用はあらゆる問題もはらんでいます。例えば、非正規雇用者の賃金の低さ、経年での賃金上昇の少なさ、社会保険への未加入などです。そこで近年、同一労働同一賃金や無期転換の促進、社会保険の加入対象の拡大など、非正規雇用者の処遇改善への動きが見られるようになりました。  これらの動きを背景に、今後は非正規雇用者の処遇が正規雇用者並に引き上げられること、非正規雇用者の正規雇用化が進むことが見込まれます。これらは、非正規活用を進めてきた企業の人件費コストを大きく押し上げることとなるでしょう。例えば、総従業員数100名、非正規雇用者の比率が50%の企業で、非正規雇用者全員を正規雇用化するとします。正規雇用化に伴い給与水準の引き上げや賞与の支給などを行い、1名あたりの人件費単価が200万円増加する場合には、企業全体で1億円もの追加の人件費が発生します。  非正規雇用者を多く活用することで戦略的に利幅を上げてきた企業ほど、非正規雇用者の処遇改善のための人件費負担を重く背負うこととなるため、人件費構造や利益構造の見直しが急務となります。 以上

地域間の人口移動 ~都市集中により人事管理の見直しが必要~ | 人事アナリシスレポート®

地域間の人口移動 ~都市集中により人事管理の見直しが必要~

 わが国では現在、本格的な人口減少の下にあることは既知のことです。人口に影響を与えるのは、出生動向、死亡動向の2つの要素となります。日本は出生率が低く、寿命が延びているので人口減少となります。日本全体は減少しますが、これを都道府県別などの地域別にみるとさらに深刻な状況がわかります。地域の人口動向は、地域間の転入と転出の差が目立つ地域が増えてきているため、出生動向、死亡動向と同時に地域間の人口移動の人数が重要となります。  国立社会保障・人口問題研究所の「地域別将来推計人口」によると、今後2045年までに約14%の人口減少となります。地域別には一律ではなく、東京圏は6%しか減少しませんが、関西圏は17%、名古屋圏は12%、他の地域では20%もの人口減少となると予想されています。地域別にに人口減少のインパクトが異なるということです。例えば東京圏は2020年は3600万人2045年は3400万人と大きく変わりませんが、他の地域(東京・関西・名古屋以外)は5500万人から4400万人と激減します。この人数は市場の大きさを表すために、東京圏はビジネスとして変わらない魅力的な商圏でありますが、地方は広い面積で多くの人数が減少することから、急速にまた驚くほどマーケットとしての魅力が低下するということです。 (図表)地域別人口推移予測(単位:千人) 出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年」東京圏は埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県、名古屋圏は岐阜県,愛知県,三重県、関西圏は京都府,大阪府,兵庫県,奈良県とし、それ以外を地方圏と定義しています  この人口減少と相対的都市圏集中は、日本におけるビジネスを大きく変えることになります。多くの企業は地方マーケットをより効率的に運営することを考えるでしょう。またビジネスの効率性という観点では、都市圏に経営資源を集中する企業も多くなると考えられます。各都道府県に支店を置くという感覚がなくなる可能性が高いということになります。社員を固定的に地域に配置することはより非効率となるため、徹底したシステム化などビジネスモデルそのものが大きく変わる可能性が高いと考えられます。  この都市圏集中は地域の物価差をより大きくすることになります。特に地代家賃の都市、地域間格差は極めて大きくなるでしょう。そのため社員の給与は地域によって異なるコントロールが必須となります。  現在の新型コロナにより、リモートワークの急速な普及があり、都市圏集中の度合いが少なくなる可能性もありますが、大きなトレンドとしては、都市圏集中と予測されており、これにより企業としては組織の在り方や働き方に影響をあたえるでしょうし、給与の地域格差も大きな課題となるでしょう。 以上

民事上の個別労働紛争相談件数  ~急増するパワハラ相談~ | モチベーションサーベイ

民事上の個別労働紛争相談件数 ~急増するパワハラ相談~

 近年、パワハラやセクハラなどの職場でのトラブルに関する話題をよく耳にするようになってきました。今回は、民事上の個別労働紛争相談件数とその内訳のデータを基に、労働者と事業者間でのトラブルの内容や傾向について解説します。  民事上の個別労働紛争相談とは、個々の労働者と事業者との間の労働問題についての相談のうち、労働基準法違反などに関わる事案を除いたものです。図表1から分かるように、民事上の個別労働紛争相談件数は増加傾向にあり、2019年度には過去最高の約28万件に達しています。2001年の個別労働紛争解決制度導入以降、右肩上がりに増加していた相談件数は、リーマンショックが起きた2008年度に急増し、さらに増加した現時点では2002年の件数の約3倍になっています。 (図表1)民事上の個別労働紛争相談件数 出典:厚生労働省『個別労働紛争解決制度施行状況(令和元年)』  図表2では、相談内容ごとの内訳を示しています。2008年度までは解雇についての相談件数が最も多かったものの、その後は減少傾向です。一方、雇止めに関する相談が2008年以降増加している背景には、2000年代前半の人材派遣の規制緩和、リーマンショックによる雇止めの増加、その後の人材派遣の規制強化という一連の変化があります。不況下では解雇や雇止めに対する相談が多かったのですが、直近10年では自己都合退職に関する相談が増えてきています。この背景には人手不足があると考えられます。  そして、直近8年間は、いじめ・嫌がらせの割合が最も高くなっています。背景としては、厚労省がハラスメント防止対策の報告書をまとめ、法整備への議論を進めてきたことなどにより、ハラスメントに対する意識が高まり、問題が顕在化したことが考えられます。 (図表2)相談内容別 相談件数の推移 出典:厚生労働省『個別労働紛争解決制度施行状況(令和元年)』 注)1回の相談において複数の内容にまたがる相談が行われた場合には、複数の相談内容を件数として計上しているため、図表1の件数と整合しない。  相談件数が増加傾向にあることから、労働者に対して相談制度が浸透していることが分かります。また、年度別に相談内容の内訳を見ると、景気や労働市場の状況、法整備・改正の影響を大きく受けていると言えるでしょう。  2020年6月にはパワハラ防止法が施行され、労働者のハラスメントに対する感度はさらに高まることが予想されます。  企業の事業運営に支障をきたさないためにも、これまで以上に法改正や時代の変化による労働者の要請を俊敏に察知し、未然にトラブルを防ぐための措置を講じる必要があります。 以上