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社宅制度の現状<br />~物価差補填システムとしての意味合い~ | 関連制度設計

社宅制度の現状~物価差補填システムとしての意味合い~

 「社宅制度」とは、会社が社員の住居を提供する制度です。また、社宅には大きく分けて2種類あります。1つは「借り上げ社宅」で、会社がマンションやアパートなどの賃貸物件を会社名義で借り上げている社宅です。2つ目は「社有社宅」で、会社がマンションやアパートを1棟単位などで購入し、会社の資産として保有している社宅です。  社宅制度の主なメリットとして、例えば転勤する社員にとっては物件探しの手間が削減されて比較的な安価な家賃で入居できるので、スムーズな転勤がしやすくなることです。そして会社としては、例えば社員に対して住居の保証があるので転勤やそれに伴う異動を実施しやすくなります。  ところが社宅制度は減少傾向にあります。 図表1:社宅・寮の保有状況の推移 出典:労政時報 第3911号 参考1「人事労務諸制度実施状況調査」に見る社宅・寮の保有状況推移      注1)本調査は2013年の調査 注2)調査対象:全国証券市場の上場企業(新興市場の上場企業も含む)3432社と上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上)304社の合計3736社。 注3)調査時期2013年1月7日~3月11日  社有社宅の保有企業数の減少が特に顕著です。社有社宅を保有する企業は90年代は6割を超えていましたが、2000年を境に減少し続け2013年時点では半減しています。社有社宅を保有することで、不動産資産なので固定資産税などの税負担が発生すること、そして老朽化対策のための修繕費や建て替え費といった維持管理費用がかかることなどが減少を加速させている要因です。  一方で借り上げ社宅は、社有社宅ほどの大幅な減少傾向を示していません。借り上げ社宅は、会社にとっては固定資産税や修繕費の要素が無いため、比較的社有社宅より維持管理費用が安価です。借り上げ社宅制度はむしろ近年若干増えています。  社宅制度は転勤や異動に伴う社員の居住地の物価差を補填し、実質賃金の平等性を担保することができるメリットがあります。  物価を考慮した賃金を実質賃金と言います。例えば、物価が低い地域から高い地域へ転勤した際、転勤後も同じ給与である場合は実質的に給与減額になってしまい、社員間の「実質賃金」の平等性が担保されていません。これは「住居」においても同様のことが言えます。  図表2は、2021年度の「消費者物価地域差指数」における、「住居」に関する地域別の物価水準です。消費者物価地域差指数とは、「全国平均を基準(=100)とした場合に、各地域の物価水準を表した指数」です。物価水準が高い東京都と低い香川県を比較すると、「住居」費目に極めて大きな差があります。 図表2:2021年消費者物価差指数の「住居」費目 出典:総務省「消費者物価地域差指数」-小売物価統計調査(構造編)2021年(令和3年)結果-    10大費目別消費者物価地域差指数(都道府県) 注)「住居」費目を抜粋している。(住居の指数値が最も高い東京都と、最も低い香川県を抜粋)  東京をはじめとする都市部への一極集中が再び加速しています。総務省「住民基本台帳人口移動報告」によると、東京都の転入超過数は2022年が始まってから増加傾向にあり、現状、新型コロナウイルス禍前の水準に戻りつつあります。特に東京23区の都心の物件は常に需要が高く、今後も家賃などが上昇していく可能性が高いです。そういった都心部への転勤を伴う異動が発生する場合は、物価差を補填するために社宅制度を整えることが社員にとっては望ましいです。  社宅制度の導入・継続・廃止を検討する際、「社員の実質賃金の平等性が担保されているのか」という観点を持ち合わせることが大事です。また、都市部への一極集中が加速しつつある現状を踏まえると、都市部と地方の物価差がより広がりますので制度の定期的に見直すことを忘れてはなりません。 以上

健康寿命とシニア人材<br />~シニアの活躍こそ日本の成長につながる~ | モチベーションサーベイ

健康寿命とシニア人材~シニアの活躍こそ日本の成長につながる~

 ひと昔前までは60歳で定年退職し、退職金をもらいその後の余生はゆっくりすごしたいと思っていた方も多かったのではないでしょうか。高年齢者雇用安定法が令和3年に改定され、70歳までの就業確保措置を講じることが企業の「努力義務」となりました。今後働き続けるためには、本人にとっても、そして企業にとっても健康であることが前提です。今回は健康寿命について解説してまいりたいと思います。  図表1は平均年齢と健康寿命の推移を示しています。「健康な人」というのは、全国から無作為抽出された国民を対象に,「あなたは現在,健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」の質問対して,「ない」と回答した人のことになります。  健康年齢を男女別で時系列に推移をみると、男性は2001年に69.4歳でしたが、2019年には72.68歳上昇、そして女性は2001年には72.65歳でしたが、2019年には75.38歳と75歳を超えています。また男女の差は、女性のほうが健康寿命が長い傾向はかわらないものの、2001年に男女で3.25歳あった差が、現在2.5歳とその差が縮小しています。平均年齢と健康寿命ともに上昇傾向にあり、平均年齢と健康寿命の経年の差に大きな変化は見られませんが、健康寿命に男性は約9歳、女性は約12歳を加えた年齢が平均寿命で推移しています。このままの傾斜で推移すると、2030年の健康寿命は男性が約74歳、女性は約76歳となり、その差が縮まってきていくことが予測されます。 (図表1:日本の男女の平均寿命と健康寿命の推移) 資料:平均寿命については、2010年につき厚生労働省政策統括官付参事官付人口動態・保健社会統計室「完全生命表」、他の年につき「簡易生命表」、健康寿命については厚生労働省政策統括官付参事官付人口動態・保健社会統計室「簡易生命表」、「人口動態統計」、厚生労働省政策統括官付参事官付世帯統計室「国民生活基礎調査」、総務省統計局「人口推計」より算出。    図表2は、WHOが発表した2022年版の世界保健統計(World Health Statistics)による、各国の男女平均の健康寿命になります。最も長い国は男女ともに日本で、トップ3は日本、シンガポールや韓国とアジアの国が占めています。世界全体の健康寿命は平均63.7歳。 そのうち男性が62.5歳、女性が64.9歳となっています。日本は長期に渡わり労働力として社会で活躍できる人材が多いことを意味し、健康先進国といえます。 (図表2:各国の健康寿命ランキング(2019年)) 出典:WHO 世界保健統計2022年版に掲載されている健康寿命統計    日本では労働生産性の低さ、競争力の低下、労働力不足などが課題となっています。健康で長く活躍していくことは、労働力不足の解消にも直結することから、今後シニア人材の活用、活躍が期待されています。社会保障の財源の問題の解決、そしてなにより豊かな生活をするために働き続けなければならない個々人の事情もあります。 企業においては、シニア人材が活躍できる基盤の整備が遅れています。シニア人材は現役を引退し、活用が難しい再雇用者ということではありません。改めてシニア人材に対して求められる役割、スキルセットを明確にし、必要な教育を講じることで、配置の柔軟さを高め、シニア人材にとっても残りのキャリアを充実した時間としていくことが求められています。 以上

コスパに注目して戦略的な人材確保を<br />~給与が下がっても転職する中高年~ | 関連制度設計

コスパに注目して戦略的な人材確保を~給与が下がっても転職する中高年~

 企業の人事担当者からはよく、「離職防止のため、魅力ある給与水準を実現したい」「競合に劣らない給与水準を教えて欲しい」といった相談を受けます。労働者の転職理由に目を向けると、より良い給料が欲しいという経済的動機が強いようです。そこで今回は、給料を求めて離職・転職した労働者が、実際に転職後に高い処遇を得ているのか、調べてみました。  総務省の統計によると、2019年の年間の転職者数は351万人であり、過去の水準を若干上回り、最高値をマークしました。労働人口全体が徐々に少なくなっている中での転職者数の微増ですので、労働市場の流動化がじわじわと進んでいるといえましょう※1。各企業が自社の従業員の離職防止に取り組んだり、新たな人材確保の選択肢として中途採用・経験者採用をより重視したりすることは、今後も重要な施策と言えます。  年代別の動きで特徴があるのは55歳以上です。55歳以上の転職率は年々微増傾向にあり、2019年に過去最高値に達しています。この層は労働人口全体に占めるウエイトが大きく、各企業が高齢化や中高年余剰に悩むようになり、早期退職制度等を活用したセカンドキャリア選択を打ち出しています。今後も、これらの施策による企業からの中高年に対する流出圧力は一定程度かかるものと考えられるため、増加傾向が続くでしょう。 図表1:転職者数の推移 出典:総務省『統計トピックス No.123 増加傾向が続く転職者の状況 ~ 2019 年の転職者数は過去最多 ~」  転職者が転職をする理由を調べると、最も多いのは「より良い条件の仕事を探すため」です。より細かく調べると、最も多いのは「人間関係」次いで「休日等労働条件」「給料」です 。この傾向には業種による差が見受けられます※2 。例えば、建設業・卸売小売り業などでは「給料」を理由とした離職が最も多く出ています。建設業では、建設需要の増加に対応し、各社が給料を上げることで労働者を確保しようとした傾向が影響しています。一方、卸売小売り業では、業界全体の給与水準が高くなく、労働条件も厳しい企業が多いため、どうしても処遇に目が行きがちであり、良い給料を求めて流動する傾向があります。いずれにしても、「給料」は労働者の離職・転職の動機となる重要な項目であると言えます。  そこで、転職により処遇が本当に上がっているのか、調べてみました。年齢を問わず集計すると、転職により賃金が増加した割合が39%、変わらない割合が20%、減少した割合が40%です。処遇改善を求めて転職する労働者は多いものの、実際には賃金が減少している割合の方が若干多いのが実情です。年齢別では、増加した割合と減少した割合の差は、20代~30代前半が多く、40代では拮抗しています。50代以降は減少する割合の方が多く、年齢を重ねる程、良い条件での転職が難しくなることを示しています。 図表2:転職前後の賃金変化 出典:厚生労働省『令和2年雇用動向調査』  少子高齢化が進み、若年層が少なく、中高年が余剰傾向にあることから、需給の関係により若年層が求められがちです。ここで、少し視点を転換し、人材採用の視点で少し議論をしたいと思います。中長期的に安定した経営が見通されるインフラ企業や超大企業では若者を大量に確保し、育成していく採用方針が合うでしょう。しかし、企業のおかれる状況や成長フェーズにもよりますが、変化の激しい時代を生き残るためには、20年30年かけて育成し、雇用し続けることよりも、3~5年の中期的視点で必要なスキルを必要なタイミングで、適切な価格で調達することが重要になるケースも多いでしょう。  若年層は、中高年層との相対的な比較では採用コストが高いうえ、経験が短く育成も必要であり、ランニングコストもかかります。さらに、彼らは再度転職活動をすれば処遇が上がる可能性も高く離職リスクも抱えています。一方、中高年層は、多少賃金が下がる転職も許容している実態から見ると、採用コストが相対的に低く、その時点で持っている経験やスキルを発揮してもらえれば十分と考えれば、育成コストも低く済みます。  もちろん、大前提として年齢にかかわらず、会社が求める素養や能力や経験を見極める必要はありますが、効率的に必要な人材を確保する観点で、中高年層を上手く活用するのも一手でしょう。 以上 ※1.総務省「統計トピックス No.123 増加傾向が続く転職者の状況 ~ 2019 年の転職者数は過去最多 ~」より。定年・契約終了、会社都合、出向など、雇用契約上の理由や会社都合の理由を除く。 ※2.厚生労働省「雇用動向調査 入職者/性、産業(大分類)、就業形態、転職理由別入職者数」(2020年)

副業は増えているのか?<br />~「多様で柔軟な働き方」の幻想~ | 関連制度設計

副業は増えているのか?~「多様で柔軟な働き方」の幻想~

 近年、「副業」というワードをよく耳にするようになりました。2018年に厚生労働省作成のモデル就業規則から「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という副業を禁止する文言が削除されるなど、従来の働き方からの変革が求められています。企業は、従来の働き方や就業管理と真剣に向き合わなければなりません。  日本における副業者数は徐々に増加傾向にあるものの、雇用者全体に占める割合は低く、副業という働き方はまだ一般的ではありません。副業者が増加傾向にある背景の一つには、一つの会社で定年まで勤めあげるという会社中心の考え方から、各自のライフスタイルやキャリアプランに合わせて柔軟に働き方を選択する労働者中心の考え方にシフトしていることが挙げられます。しかし、人数は増えているものの、2017年度における雇用者に占める副業者の割合は2.2%と、まだ副業は浸透していないことが分かります。 図表1:雇用者に占める副業者数 出典:総務省統計局「昭和62年~平成29年 就業構造基本調査」を加工して作成注1)本グラフにおける副業者は、本業・副業どちらも雇用者として従事している者を指し、自営業者もしくは家族従業者として従事する者は含まない。 注2)雇用者には「会社などの役員」である者を含む。 なお、コロナウイルス感染症拡大後に新たに副業を始めた人の割合は2.6%(※注・※注2)と、短期的には増加していますが、長期的な観点からはコロナウイルス感染症をきっかけに副業が広まっているとは言い難い状況です。  そして、所得階層別の副業率には、極めて大きな特徴があります。所得階層別に3区分すると、高い層(1,000万円以上)と低い層(199万円以下)の副業率は高いのです。高い層は、高度な専門技術やスキルを有しており、労働市場で人材不足となっている層であることから、スキルを活かす場が多いことが挙げられます。また、低い層は、非正規社員の占める割合も多く、より収入を得るために複数の仕事を掛け持ちされています。その結果、他の所得階層よりも高い数値となっています。  一方、ボリュームゾーンとなる中間層(200~999万円)の副業率は低く、特に400~599万円において2.1%と低い結果となっています。日本において副業を推進していくには、このボリュームゾーンの人々の副業率をいかに上げることができるかが重要なポイントとなります。 図2:所得階層別の副業者数 出典:総務省統計局「平成29年 就業構造基本調査」を加工して作成注)本グラフにおける副業者は、本業で雇用者として従事している者を指し、自営業者もしくは家族従業者として従事する者は含まない。 注2)雇用者には「会社などの役員」である者を含む。  ボリュームゾーンとなる中間層の副業率が低い理由の一つとして、企業の副業に対する制度の整備が進んでおらず、対応が遅れていることが挙げられます。「平成26年度 兼業・副業に係る取り組み実態調査事業 報告書」(中小企業庁委託事業)では、「副業を推進している」と回答した企業は0%、「推進していないが容認している」と回答した企業は14.7%のみという結果でした。また、2021年に行われた「第4回 コロナウイルス感染症影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(内閣府)では、「副業が許容されている」と回答した就業者は26.7%のみであり、過半数以上の企業において副業制度が整備されていない、もしくは従業員へ制度が浸透しておりませんでした。  副業の対応を進めるにあたり、企業は労働日数や労働時間に柔軟性を持たせるなど、フルタイム雇用に頼る従来の就業管理方法からの脱却が求められています。また、企業側が制度を整えるだけではなく、労働者側も柔軟な働き方に対応できるよう意識改革をしなければなりません。時代に即した就業管理へアップデートできているか、そして、従業員が柔軟な働き方を受け入れることかできるのか、経営方針や事業内容と照らし合わせながら、今一度見直す必要があります。 以上 ※注)出典:内閣府「第2回 コロナウイルス感染症影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」 ※注2)本業・副業ともに雇用者以外の者も含む。

DX人材戦略<br />~IMD世界デジタル競争力ランキングから考える日本企業の課題~ | 関連制度設計

DX人材戦略~IMD世界デジタル競争力ランキングから考える日本企業の課題~

 近年日本ではDX(デジタルトランスフォーメーション)について試行錯誤していますが、まだまだ課題が多いのはご承知の通りだと思います。推進するためのポイントはどこにあるのでしょうか。  海外と比べ、日本はIT・DXについては遅れていると言われています。スイスに拠点を置くビジネススクールIMD(International Institute for Management Development:国際経営開発研究所)が発表した、IMD世界デジタル競争力ランキング2021によると、日本は全64カ国中28位であり、これは過去最低です。 図表1-1:IMD世界デジタル競争力ランキング 出典:「IMD World Digital Competitiveness Ranking」(IMD世界デジタル競争力ランキング)  このランキングは、デジタル競争力に影響を与える要因を「知識」、「技術」、「将来への備え」の3つに分類し、各要因に関する52の基準・指標に基づいて算出されています。 人事領域に関わりが深い「知識」にフォーカスをすると、日本においては特に、国際経験が最下位の64位、デジタル/技術スキル(デジタルスキルを持った人材の割合)は62位で「弱み」と言えます。逆に教育評価、生徒・教師の比率、R&Dへの公的支出といった教育研究面の整備については他国と比較して上位に位置していますが、これが各企業のDX推進につながっていると言えるでしょうか。 DX推進のためには、このランキングを各企業が自社のこととして、「最新のデジタル技術スキルを習得できるよう育成しているか」、「海外経験を踏ませているか」、「外国人技術者を採用しているか」など、推進に向けた自社の人事領域の把握を早急に進めなくてはなりません。 図表1-2:IMD世界デジタル競争力ランキング 要因と基準指標 出典:「IMD World Digital Competitiveness Ranking」(IMD世界デジタル競争力ランキング)  実際に企業はDX推進の課題をどう捉えているのかを見ると、日本では人材不足が過半数を超えており、アメリカ、ドイツと比べても圧倒的に多い状況です。やはり人材不足の問題は深刻なようです。 図表2:DXを進める際の課題 出典:総務省(2021)「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」  一括りに「人材」と言っても、具体的にはどのような人材が必要なのか? 以下のアンケート結果によると、「変革リーダー」「業務改革プロセスを牽引できるビジネスパーソン」「ビジネスデザイナー」が上位であり、技術者よりもDXを主導し、デジタル技術を事業に活用できる発想を持つ人材の必要性がここに見えます。 デジタルをどう事業に活かすかという知識、経験を持ち、革新的な発想ができる人材は肝であり、大きな採用・育成課題ということです。 図表3:With/アフターコロナ時代に生き残るため、貴社がDX領域で採用・育成を強化すべき人材像 出典:日経BP総合研究所 イノベーションICTラボ DXサーベイ2   (「With/アフターコロナ時代に生き残るため、貴社がDX領域で採用・育成を強化すべき人材像はどれですか」に対する回答結果)  今後のビジネスモデル構築は、デジタル技術活用、DXありきとなってくるでしょう。それはアナログデータや業務工程のデジタル化だけではなく、デジタル活用による新たな価値創造のことです。自社がDXによって、社会にどのような変革を起こせるのか、そこにはどのような人材が必要となるのかを明確にし、固定概念を打ち砕き、システム部門のみならず全社的に新たな発想ができる人材の育成や、大胆な人材採用推進していく必要があります。 以上

変わる家族手当<br />~支給条件の見直しや廃止~ | 関連制度設計

変わる家族手当~支給条件の見直しや廃止~

 少し前までサラリーマンの家族は、正社員の夫と専業主婦、子ども2人の4人家族モデルが一般的でした。しかし、結婚、出産、働き方など人生の選択が多様化し、家族の姿は大きく変化しています。2022年版の男女共同参画白書では、家族の姿は「もはや昭和ではない」と表現されました。  一世帯あたりの平均人数は、1960年の4人から2020年には2人に激減し、単独家族世帯が全世帯の38%を占め最も多くなりました。また、夫婦と子どもの世帯は、2020年には全世帯の25%まで減少し、家族といえば「夫婦と子ども」という概念が大きく変わってきています。(図1、2) 図表1:一般世帯と平均世帯人員 出典:総務省 国政調査 図表2:家族の姿の変化 出典:総務省 国政調査  企業における家族手当についても廃止や支給条件の見直しが行われています。家族手当は、配偶者や子どもなどの家族がいる社員に対して、その家族構成や人数などの条件に応じて支給される手当です。人事院の調査によると、家族手当制度がある事業所の割合は2021年時点で74.1%、そのうち、配偶者に対する家族手当を支給する事業所の割合は55%(全事業所を100とした場合)となっています。過去からの推移をみると、子どもに対する家族手当は維持されつつ、配偶者に対する家族手当は廃止傾向です。(図3) 図表3:家族手当の採用率 出典:人事院各年の職種別民間給与実態注)調査配偶者に家族手当を支給しない事業所の割合は、家族手当制度がある事業所の従業員数の合計を100とした割合である  制度の変化の背景には、家族の姿の変化とともに、その時々の社会の慣習や経済情勢の変化が影響しています。家族手当は欧米には見られない制度です。日本では大正時代から既にあったとみられ、生活給の一部として普及してきました。その後、核家族化が進み、正社員の夫と専業主婦・子どもの家族モデルのもと、「社員の家族が世間並の生活を」「子ども2人を大学まで卒業できるように」といった福利厚生の要素が加わりました。  1990年代に入って、「賃金は労働の質と量で決まる」という成果主義の広がりから、家族手当見直しの動きが始まります。また、労働人口が減少する中、多様な人材が活躍できる環境の整備が求められるようになります。「世帯主に限定して支給されることが多い家族手当は、女性に不利な賃金である」「家族手当や国の税・社会保障の仕組みが、専業主婦や配偶者の就業調整につながっている」ことが指摘され、配偶者に対する家族手当の支給見直しにつながります。さらに、子どもに対する家族手当については、少子化対策として、配偶者分の原資を振り替え、支給額を増加する企業も現れました。今後も、同一労働同一賃金など社会の要請に合わせて見直しが行われるでしょう。  家族手当が賃金に占める割合は高いものではないですが、その維持・支給条件の見直し・廃止の意思決定は、その時々の社会からの問題提起や社会課題に対する企業の姿勢を示しているものとも言えます。既存制度の見直しは、「かわいそう」という思考が先に立ち、消極的な意思決定になる場合があります。社会の状況を正確に理解しつつ、自社が大切にしたい軸を起点とした意思決定をし、それをきちんと社員にメッセージとして伝えていくことが、社員の共感や会社の魅力につながっていくのではないでしょうか。 以上

業績好調企業における希望退職制度の導入<br />~頓服薬から常服薬へ~ | 関連制度設計

業績好調企業における希望退職制度の導入~頓服薬から常服薬へ~

 バブル崩壊やリーマンショックなどの急激な景気悪化局面や、コロナ禍のような外部環境の変化に伴う経済活動縮小局面において、企業は頓服薬を服用するように、雇用調整施策、いわゆるリストラを実施してきました。  景気悪化による赤字をいち早く脱却すべく雇用調整をすることは当然ながら、近年特に、予防策的に黒字下であっても人員数や人員構成をコントロールする方策を持っておくことの重要性は高まってきています。  図表1は、失業者のうち、会社都合による失業者の割合を経年で示した折れ線グラフです。会社都合による失業とは、倒産や事業所の閉鎖等による失業の他、退職勧奨など経営上の都合により退職を進められて退職をした場合などが含まれ、セカンドキャリアを自主的に選択することなどを目的に恒常的に設けられている制度などを利用し、労働者が自主的に退職を決断した場合は含まれません。  日本企業において、早期退職に関する議論が最初に興隆したタイミングはバブル崩壊後です。バブル崩壊までは、日本の経済は右肩上がりに成長を続けていました。また、労働市場には団塊世代と呼ばれる人口ボリューム層を中心に労働者の数自体が多かったため、各企業が積極的に雇用拡大をしていたのです。業績拡大に対応すべく数多くの社員を抱えていた状況下で、経済危機に直面し、雇用の在り方や、企業の雇用責任とは何か、ということが議論されるようになったのです。  グラフはその後の失業者の推移を描写していますが、平成21年のリーマンショック時までは右肩下がりです。その後、リーマンショックの影響による倒産や事業整理、応急処置的な経営効率化により会社都合による失業者の割合が急増しました。さらにその後、コロナウイルス感染拡大による人流制限が生じるまでは右肩下がりであり、令和2年には一時的に増加しているものの、かつてよりは低い水準に収まっています。 図表1:失業者のうち会社都合による失業者の割合 出典:厚生労働省「労働力調査(長期時系列データ)」  主要な上場企業における早期退職募集状況を経年で見ると、やはり、リーマンショックが生じた平成21年、コロナウイルス感染が拡大した令和2年は実施社数、募集人数共に突出しています。人員数の圧縮による人件費抑制を目的とした応急処置的な雇用調整だと考えられます。一方で、その間の平常時においても一定数実施されています。  さらに、令和2年に早期退職を実施した企業のうち、凡そ40%超の企業の通期の損益は黒字です。赤字企業が早期退職を募集する主な目的は、業績悪化に対する緊急対応であり、従前から行われてきたものです。一方、黒字企業が早期退職に踏み切るのは、先を見通した上で、先行的な改革を目指しているためです。先行型の早期退職実施の経営上の目的として良く挙げられるのは、人員構成の歪の是正、業務の効率化・生産性向上、年功主義の解消などです。 図表2:主な上場企業 希望・早期退職募集状況 出典:東京商工リサーチ  当社が人事制度設計で携わる企業においても、恒常的な人員数と人員構成のコントロールの施策として、早期退優遇制度(セカンドキャリア支援制度)を設計したいというニーズは強く、これまで以上に重要性・緊急性が高まっているように感じます。  背景には、やはり絶えず変化する経済状況に対する危機感や、業務効率や生産性の向上による人員数の余剰感、ビジネスモデルの高度化により社員に求めるスキルの種類が変化すること、会社内の人員構成の歪みなどがあります。特に、多くの会社で高齢化が進み、中高年の社員に多いのですが、新しいビジネスモデルや環境変化のスピード感についていくことが難しい社員を、このまま活用し続けることが難しいと考える企業も多くなっています。今後10年を見通して現在の歪な人員構成を是正するための、最後のタイミングだと言えるでしょう。  今後は、環境変化についていけない企業にとってはより厳しい時代となるでしょう。各企業は、環境変化になんとか対応しようと、必要なスキルを必要な時に調達せざるを得なくなります。これに伴って、労働市場の流動性もより高まるでしょう。長期雇用を前提とした企業内の人材ポートフォリオを、時代にあった形に是正すべく、雇用調整施策を常備する傾向は今後も続くのではないでしょうか。 以上

定年再雇用実態<br />~定年年齢や賃金カーブの実態~ | 関連制度設計

定年再雇用実態~定年年齢や賃金カーブの実態~

 2021年から改正高年齢者雇用安定法が施行され、働く意欲がある高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、70歳までの就業機会確保が努力義務になりました。2013年より、65歳までの雇用確保は義務化されており、制度の内訳をみると「継続雇用制度」が76%、「定年制廃止」「定年延長」が24%となっています。70歳まで働ける制度のある企業は全体の3割あり、「定年延長」には慎重な姿勢がみられるものの、企業にとって必要な人材は何らかの制度で雇用していることが分かります。 図表1:65歳以上まで働ける制度のある企業の状況 出典:厚生労働省厚生労働省 令和2年「高齢者の雇用状況」集計結果 注1) 集計対象企業は、全国の常時雇用する労働者が31人以上の企業 164,151社注2) 「その他の制度で雇用」とは、企業の実情に応じて何らかの仕組みで働くことができる制度を導入している場合を指す    さて今後、定年年齢が65歳に引き上げられるのかどうかは注目される点です。過去を振り返ると1960~70年代には55歳定年が主流でしたが、1986年に制定された高年齢者雇用安定法により60歳定年が努力義務となり、1998年に60歳定年が義務化されました。そして、2000年には65歳までの雇用機会確保が努力義務となり、2004年に義務化、2013年に希望者全員が対象とされ、2025年には経過措置が終了し希望者全員が65歳まで働けるようになります。 60歳定年、65歳までの雇用確保制度の義務化と法改正の動きは加速していますが、各企業における65歳までの定年引上げの動きは、前回の60歳定年制定時と比べて極めて緩やかです。 図表2:企業による定年年齢の推移 出典:厚生労働省「雇用管理調査」(2004年以前)、「就労条件総合調査」(2005年~2017年)、「高齢者の雇用状況」(2018年~2020年) 注1)一律定年制を定めている企業の定年年齢別企業数割合の推移 (一律定年制を定めている企業=100)注2)年齢59歳以下は、2004年まで集計 注3)年齢60歳、61~64歳は、2017年まで集計注4)定年制廃止企業は含んでいない  また、定年再雇用者の賃金の取り扱いについても議論があります。図表3は、データが集計できる1999年以降の所定内賃金の賃金カーブを示しています。データの前半期(薄い色の線)では、若年期には賃金が低く30~40代前半で賃金が大幅にあがり、50~54歳でピークを迎える賃金カーブを描いていますが、近年(濃い色の線)になるにつれて、若年期の賃金が引きあがり、中高年期の賃金カーブが抑えられています。また、ごく僅かながら、賃金カーブのピークが55~59歳に移行している傾向がみられ、賃金カーブの傾きが調整され、長く緩やかな賃金カーブに変化しています。 図表3:賃金カーブの推移 出典:厚生労働省 賃金構造基本統計調査 産業計(企業規模10人以上) 注1)年齢階層別の所定内賃金をグラフ化注2)2007年以前は、「70歳~」データが集計されていない  高年齢者雇用の課題は、賃金の低下に起因する就業意欲の低下、職務配分、職務能力の維持・向上、人件費の増加、健康面への配慮など、さまざま取り上げられています。これらは、職場でのボリュームゾーンであるバブル入社世代、第二次ベビーブーム世代の中高年齢層に限った課題ではなく、次の世代が65歳、70歳になった時に、同じ課題を生じさせないよう会社全体の人事課題として捉えるべきです。そして社員一人ひとりが生き生きと働き、組織としての競争力や生産性の向上につながる取り組みを目指すことが必要です。 働く個人にとっては、企業から必要とされ続けられるよう職務能力を研鑽し、自身の人生設計に基づいてリタイアする時期を選ぶといった意識改革が必要になってきます。一方、企業には、職務や貢献に応じた処遇を実現する人事運用がきちんとなされること、仕事内容や環境の変化が激しい中、計画的な人材育成や職務能力向上のサポートを行うことが求められます。 以上