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メンタルヘルス対策<br />~心の病が最も多い世代とストレスの内容~ | モチベーションサーベイ

メンタルヘルス対策~心の病が最も多い世代とストレスの内容~

 近年、職場における若者のメンタルヘルス対策が話題に上がることが多くなっています。そこで今回は、年代別の心の病の割合と、従業員が抱える就業上のストレスの内容について解説します。  企業に対する調査の結果によると、実際に心の病を抱える従業員が最も多い年代として10~20代を挙げている企業が増加傾向にあります。多くの企業の経営者や人事担当者の方々が、口にする「若者のメンタルヘルスの問題が増えてきている」との感覚は、実態に合っていると言えます。  過去に目を向けると、2000年代前半には心の病が最も多い年代として挙げられる年代は、30代が突出していました。30代は、職場・プライベート共に変化や心身にかかる負荷が大きく、心の病を抱えがちな年代であったのです。具体的には、職場では「働き盛り」「管理職(候補)」と期待され、質・量共に業務上の負担が掛かりがちな世代であると同時に、結婚や育児、場合によっては両親の扶養や介護が始まる等、プライベートにおいても変化が多い世代であることが推察されます。  その後、2019年時点では、50代以上を除き、10~40代がほぼ同水準となっています。10~20代については過去からの増加率が高いため若年層のメンタルヘルスに対する問題意識を特に抱きがちですが、年齢による差が無くなってきているというのが現状です。  年齢差が無くなってきた要因は、複数考えられますが、職場において年功的要素が徐々に薄まってきたことや、生産性向上への強い要請を背景に、即戦力志向が強まってきていることも一因でしょう。従来、一定程度の年数をかけて育成された30代の従業員に対して期待してきた役割や負荷が、前後の年代に対しても広がりつつあると考えられます。また、ライフスタイル・ライフプランに対する価値観の多様化も進み、プライベートで抱えるストレスについても年代差が少なくなってきているのではないでしょうか。   図表1:心の病の最も多い年代 出典: 公益財団法人 日本生産性本部「第9回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果」(2019年11月22日)  続いて、年代ごとの業務上のストレスの内容に目を向けてみても年代による大きな差はないことが分かります。  いずれの年代においても最も多いのは「仕事の質・量」に対するストレスです。労働者として職業生活を送る上で致し方ない部分もあるとは考えられますが、企業には長時間労働の防止等によるワークライフバランスへの考慮と生産性向上施策等を講じることが求められます。  その次に多いのは「仕事の失敗・責任の発生等」であり、「仕事の質・量」に続いて仕事そのものに関する項目が挙げられています。続いて「対人関係」「役割・地位の変化等」が挙げられています。  仕事そのものに対するストレスと、職場というコミュニティの中での立ち位置や他者との相対的な関係性の中で引き起こされるストレスが、職業上のストレスのうちの大部分を占めていることがわかります。この傾向には年代による差は、ほとんど見受けられません。   図表2:仕事や職業生活に関する強いストレスの内容 出典: 厚生労働省「平成30年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」 注:1人3つまでの選択式であるため最大値は300%である  今後も引き続き継続的なストレスチェックを実施し、従業員のストレス状態を把握・観察し続ける必要があります。また、各年代に共通する「仕事の質・量」によるストレスを軽減・緩和すべく業務の質・量の調整を通じて従業員のワークライフバランスを保つことも重要です。  

民事上の個別労働紛争相談件数  ~急増するパワハラ相談~ | モチベーションサーベイ

民事上の個別労働紛争相談件数 ~急増するパワハラ相談~

 近年、パワハラやセクハラなどの職場でのトラブルに関する話題をよく耳にするようになってきました。今回は、民事上の個別労働紛争相談件数とその内訳のデータを基に、労働者と事業者間でのトラブルの内容や傾向について解説します。  民事上の個別労働紛争相談とは、個々の労働者と事業者との間の労働問題についての相談のうち、労働基準法違反などに関わる事案を除いたものです。図表1から分かるように、民事上の個別労働紛争相談件数は増加傾向にあり、2019年度には過去最高の約28万件に達しています。2001年の個別労働紛争解決制度導入以降、右肩上がりに増加していた相談件数は、リーマンショックが起きた2008年度に急増し、さらに増加した現時点では2002年の件数の約3倍になっています。 (図表1)民事上の個別労働紛争相談件数 出典:厚生労働省『個別労働紛争解決制度施行状況(令和元年)』  図表2では、相談内容ごとの内訳を示しています。2008年度までは解雇についての相談件数が最も多かったものの、その後は減少傾向です。一方、雇止めに関する相談が2008年以降増加している背景には、2000年代前半の人材派遣の規制緩和、リーマンショックによる雇止めの増加、その後の人材派遣の規制強化という一連の変化があります。不況下では解雇や雇止めに対する相談が多かったのですが、直近10年では自己都合退職に関する相談が増えてきています。この背景には人手不足があると考えられます。  そして、直近8年間は、いじめ・嫌がらせの割合が最も高くなっています。背景としては、厚労省がハラスメント防止対策の報告書をまとめ、法整備への議論を進めてきたことなどにより、ハラスメントに対する意識が高まり、問題が顕在化したことが考えられます。 (図表2)相談内容別 相談件数の推移 出典:厚生労働省『個別労働紛争解決制度施行状況(令和元年)』 注)1回の相談において複数の内容にまたがる相談が行われた場合には、複数の相談内容を件数として計上しているため、図表1の件数と整合しない。  相談件数が増加傾向にあることから、労働者に対して相談制度が浸透していることが分かります。また、年度別に相談内容の内訳を見ると、景気や労働市場の状況、法整備・改正の影響を大きく受けていると言えるでしょう。  2020年6月にはパワハラ防止法が施行され、労働者のハラスメントに対する感度はさらに高まることが予想されます。  企業の事業運営に支障をきたさないためにも、これまで以上に法改正や時代の変化による労働者の要請を俊敏に察知し、未然にトラブルを防ぐための措置を講じる必要があります。 以上