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column

転換の年へ

新しい年が始まった。過去数年間にわたり、「日本経済はオリンピックまでは何とかなるだろう」という期待通り、好景気とは言えずとも、深刻な景気悪化には陥る事はないまま、件の2020年になった。未来の事は誰にもわからないが、5G投資の本格化や、オリンピック後の建設需要も当面見込まれる事などから、今年の後半から深刻な景気悪化を予測する専門家は少なく、心配しなくてよいという声をよく聞く。深刻な経済不況にならなくて済むのはなによりなのだが、ただ、そんな感覚で本当によいのだろうかとも思う。

昨年の我が国の実質GDP成長率は、およそ0.9%程度と見込まれていて、ここ数年の水準から見て、決して悪い水準ではないが、同年の世界全体の成長率見込みの約3%、アメリカの約3%、EUの約2%と比べると、やっぱり、さえない成長率と言わざるを得ない。一昨年の日本のGDP(名目)は約5兆ドルで、世界第3位の規模だが、トップのアメリカの約21兆ドル、2位の中国の約14兆ドルから、ずいぶん大きく引き離されている。また、1995年には、日本は世界のGDPシェアの約18%を占めていたが、2018年には5%台にまで低下している。

昨年は、直近の過去と比べてそれほど悪くないというだけで、世界各国の成長スピードにはついて行けていない状態が長年続いているのだが、低成長経済にあまりに慣れてしまったのか、日本経済の相対的地位の低下に対する深刻な危機感はそれほど感じられない。日本は基本的に優秀な国家なので、今のまま頑張っていれば、いずれ、風向きも変わるだろう、くらいに思っている向きも少なくないのだろうか。世界が大きく変化している事を直視せず、従来の世界観が正しいと思い込んでいる事自体が、我々の大きな課題なのかも知れない。

昨年のベストセラー本、「ファクトフルネス」(ハンス・ロスリング、 オーラ・ロスリング 、アンナ・ロスリング・ロンランド 著 日経BP社)を読むと、そうした我々の思い込みがいかに数多くあるかを知らしめてくれる。例えば、「いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいるか」の三択(A 20%・B 50%・C 80%)や、「世界の平均寿命はおよそ何歳か」の三択(A50歳・B60歳・C70歳)という問いが本書の中にはある。いずれも答えはCだが、回答者の大半は正しい答えを選べなかったという。世界の貧困や健康の状況は、日々改善されつつあり、過去に学んだ事や認識した事実から大きく変化しているのだが、先進国の国民や知的労働に従事する人ほど、正解率は低かったそうだ。我々が思っている以上の規模とスピードで、世界は日々、変化しているのだ。そうした変化を直視して、認識をアップデートしないままでは、正しい意志決定や適切な行動を行うことはそもそも難しいだろう。

世界の変化に後れを取っている事態は、人事領域にも当てはまる。特に、女性の役員、管理職の登用の推進には、多くの企業で、総じて腰が重い。ILOによると、2018年の世界の管理職に占める女性の割合は約27%に対し、日本はわずか12%とG7諸国で最下位だった。多くの企業ではこの課題を認識しつつも、自社(の業界)は特別なので・・という事で、本気でこのテーマに取り組んでいる企業は少ない。本来、労働力人口の減少に直面する我が国こそ他国以上に、女性人材の積極登用は優先度の高い課題ともいえるのだが、過去から引きずる強烈な思い込みが障害になっているのかもしれない。

ただ、個人的には日本の潜在的能力を強く信じている。なかなか火がつかないところがあるが、オイルショックも、プラザ合意も、一たび、危機に身が置かれると本気で取り組み、一気に世界をけん引する馬力を持ち合わせていたはずだ。2020年はそんなパワーが発揮され、未来に明るい光が灯されるきっかけの年になってほしいと願う。

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