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column

福澤諭吉とメラビアン

「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」という話の出どころは?
これは昔、ある新聞社の記者採用試験で出された問題だそうです。

多くの方が、福澤諭吉の著作『學問のすゝめ』と回答してしまったらしいのですが…確認すると、「天ハ人ノ上ニ人ヲ造ラズ、人ノ下ニ人ヲ造ラズ “ト謂ヘリ”」とあり、「引用」であることがわかります。

諸説あるようですが、「アメリカ独立宣言からの翻案」いう説が有力とのことで…採用側としては「記者を志す者は、原著論文や自ら体験して得た『一次情報』を重視して欲しい(情報源の確認を怠らないで欲しい)」という意図で作成した問題だったとのことです。

今は、誰もが容易に情報を得ることができる時代です。 だからこそ私たちには、重要な意思決定の基盤となる情報、関係者への影響が大きな情報に関しては、可能な限り「信頼できる情報か?」を確認するといった、「情報リテラシー」が求められます。

ところが実際には、影響力の大きな立場にいる人物の情報リテラシーが低いために、素直で従順な関係者が、「与えられた誤った情報に基づいて、判断したり行動したりしてしまっている」といった状況も少なくありません。

そして…残念なことですが、人財開発の場面でも、「講師が、誤った情報に基づいて研修を提供」してしまっている場合もあるというのが実態です。 何でも鵜呑みにせず、大事なことは「確認」しましょう。

ここでは、研修で伝えられる誤った情報の事例として、「メラビアンの法則」(Mehrabian’s Rule;発音によっては「マーレビアンの法則」、あるいは、「55-38-7のルール」や「3Vの法則」)と呼ばれる内容についてご紹介しておきましょう。

これは、「対人コミュニケーションにおける、メッセージ伝達に果たす役割」の内訳として、見た目や表情、ジェスチャーなどの「視覚(Visual)情報が55%」を占め、声の大きさや口調、スピードなどの「聴覚(Vocal)情報が38%」を占め、話そのものの内容である「言語(Verbal)情報は7%」しか占めていないという内容として知られ、「話の中身よりも、見た目がずっと重要」であるとか「話の中身よりも、伝え方がはるかに重要」といった主張の根拠に用いられる場合があります。

しかし、少し「確認」すれば、「メラビアンの法則」として知られているものの内容が、「『言語情報(ひとまとまりの話でも文でもなく、単語)』と『聴覚情報(声色など)』と『視覚情報(表情など)』の間に【矛盾がある状況】では、私たちは、どの情報を優先して用いて、話者の感情や態度を判断するか?」という「特殊な場面におけるコミュニケーションについての研究成果」であることがわかります。

理解のしやすさを優先して、あえて極端に表現するなら…例えば、「話者が、こちらを睨みつけながらツバを吐き、ぶっきらぼうに、『ごめん』と言った」場合に、「私たちは言語・聴覚・視覚情報のうち、どれに基づいて、話者の感情を判定するだろうか?」といった内容を確認する研究だったわけです。

明らかに、「コミュニケーション全般に適用することはできない内容」であって、「メラビアンの法則」と呼ばれるものが、「元々の研究内容が誤解されて広まったものであること」がわかります。

今回の2つの話を踏まえて、繰り返します…経営職や管理職、大学教授やコンサルタントなどのみならず、私たちひとりひとりが情報リテラシーを高めることが求められる時代です。

「入力(input)と出力(output)だけ」(情報の横流し)に終始するのではなく、少なくとも大事な事柄に関しては、「『真贋を確認』したうえで、『咀嚼や加工といった思考プロセス(processing)』を加える」という形で、情報を活用していらっしゃいますか?

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