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実力主義と雇用責任

執筆者: 林 明文 雇用

 仕事柄多くの企業の人事制度を見ることができます。全体的な傾向としては社員の実力に応じた人事制度に変更する企業が多くなってきたと思います。今までのような年功序列的な人事制度から、優秀な人材はより早期に抜擢し、そうでない社員は今までよりも低い処遇にするということになります。このような実力主義的人事制度は、経営がおかれている環境変化に対応するために施策として、ごく自然な発想です。議論があるのはその実力主義的な度合いです。優秀であれば全く年齢関係なく昇格させるような完全な実力主義的企業は少なく、今までよりも多少昇格や給与の分散を大きくするという感覚の変更が多いように思います。それでも今迄に比較すると大きな変更であると社内的に感じるのではないでしょうか。今後のこの分散のありかたが実力主義的であるか否かという議論になると思われますが、この分散の激しさは企業の雇用責任に大きく影響を与えることを十分認識している企業ばかりではありません。

 実力主義的にする、要は標準的なキャリアパターンよりも昇格や報酬の分散を大きくすることは、二つの重要な論点があります。一つは優秀な人材をより早期に要職につけることができる、また優秀な人材に対する報酬を傾斜的に多くすることができるため、企業の成長に寄与するとともに、優秀社員の社外流出を抑止することができるということです。これは企業にとっても優秀な社員にとても非常にメリットがあると言えるでしょう。もう一つの論点は、その逆で実力主義が進行するとともに、優秀でない社員の昇格や報酬が今までよりも下がるということです。この結果優秀でない社員のモチベーションは今までより低くなる傾向になります。ここで重要なのは企業は優秀でない社員の雇用を定年まで維持することが望ましいか否かということです。優秀でない社員は将来的に昇格や報酬が今までの期待以上にならないため、長期に渡り優秀でない状態が続くことになります。このような低モチベーションの社員の一団が発生することにより、企業全体のパフォーマンスが低下する可能性が大きいということです。単純にはこのような一団は定年まで雇用するのではなく、社外に転出したほうが企業としては望ましいのかもしれません。また社員も将来のキャリアや報酬を考えると他社で活躍するほうが職業人として、また報酬も含めて望ましいと考えるようになるでしょう。

 実力主義人事制度にするに従い、この雇用責任という意味を明確にしなくてはなりません。将来に渡り高いパフォーマンスを期待できる人材は定年まで雇用し、逆に期待できない人材はできるだけ早期に他社に送り出すという考え方が今後の雇用責任ではないか問うことです。

 驚くほどの実力主義的人事制度に改定する企業で、このような雇用責任の話をすると、半分以上の企業では、モチベーションが低くとも定年まで雇用するのが責任と考えます。パフォーマンスが将来に渡り期待できなくとも、企業としては退職を勧奨することを極端に嫌う企業が多くあります。社会的な意味での適正な再配置という観点でも、社員の将来のキャリア可能性という観点でも、無理なく積極的に社外に転出させるというスタンスのほうが、今後はよりひろく受け入れられていくことになると思います。“実力主義にすれど終身雇用”という考え方に固執する必要性はないということです。

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プロフィール

林 明文 (はやし あきふみ)

代表取締役 シニアパートナー

青山学院大学経済学部卒業。 トーマツコンサルティング株式会社に入社し、人事コンサルティング部門シニアマネージャーとして 数多くの組織、人事、リストラクチャリングのコンサルティングに従事。その後大手再就職支援会社の設立に参画し代表取締役社長を経て現職。明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科客員教授。

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