小宮 奈穂子  |1 |執筆者|㈱トランストラクチャ

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小宮 奈穂子 

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2026年4月改正に備える:男女間賃金差異の公表と「不合理な差」の点検 | 人事コンサルティング

2026年4月改正に備える:男女間賃金差異の公表と「不合理な差」の点検

2026年4月1日から、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画では、常用労働者301人以上の企業は「男女間賃金差異」「女性管理職比率」を含む計4項目以上、101人以上の企業は同2項目を含む計3項目以上の情報公表が義務づけられます。 公表対象企業が拡大することで、「自社の男女間賃金差異や役職別の女性管理職比率はどの程度か」「その差は何によって生じているのか」といった点が、これまで以上に多くの企業にとって身近なテーマになりそうです。 公表義務の狙いは、単に情報を並べることではなく、背景を点検し、不合理な差を減らすための改善につなげることにあるはずです。そのため、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」や、「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」といった項目もあわせて示す枠組みになっています。※1 なお、女性の活躍推進企業データベースで情報公開している企業は、平均で5項目を公表しており、公表割合が高い項目として「労働者に占める女性労働者の割合(56.2%)」「管理職に占める女性労働者の割合(55.3%)」「採用した労働者に占める女性労働者の割合(53.7%)」が挙げられています。(2024年3月31日時点)※2 さて、男女間賃金差異に目を向けてみると、縮小傾向とされつつ差は残っています。厚労省資料では、男性の所定内給与額を100とした場合、女性は「一般労働者」74.8、「一般労働者のうち正社員・正職員」77.5という値が示されています(令和5年度)。※3 ただし、男女間賃金差異は「数字だけ」で語ると、かえって誤解を生むこともありそうです。平均年齢や勤続年数の違い、職種・等級・役割の偏り、管理職比率、時間外労働の多寡など、複数の要因が重なって差として表れやすいためです。公表を機に「差がある/ない」で終わらせず、どこで差が生じているのかを分解して把握することが重要になります。 なお、賃金構造基本統計調査を用いた要因分析では、男女間賃金格差に影響する要素として、役職、勤続年数、学歴、労働時間、年齢、企業規模、産業の7つが挙げられています。 また、この7つの要素を調整してもなお差が残ることも示されています。※4 ここでいう「不合理な差」とは、たとえば、評価や昇格の基準は同じでも運用にばらつきがある、配置・育成の機会(重要案件、研修、ローテーションなど)に偏りが生じている、あるいは、管理職はフルタイム勤務が前提とされる慣例や、住宅手当・家族手当の支給要件が意図せず影響してしまう可能性がある——といったケースが考えられます。いずれも意図せず起こりやすく、数字だけでは捉えにくい点です。 今回の法改正は、企業にとって負担に感じられる場面もあるかもしれません。一方で、制度と運用のズレや、気づかない前提を見直す機会にもなります。数字の背景を丁寧に確かめ、不合理な差が見られる場合には必要な改善を少しずつ重ねていくことが、社員が納得して働ける環境づくりにつながっていきます。 最後に、最初の一歩としては、次の点から始めるのが取り組みやすいかもしれません。 ①等級・役職、年齢×等級等の男女別人数分布を整理し、構造を把握する。(正社員を対象とした場合)  ②それを手がかりに、昇格・登用の結果と運用(推薦・育成機会)の偏りを点検する。 以上   資料出所: ※1 女性活躍推進法改正リーフレット(001663919.pdf) 規模 改正前 改正後 301人以上 ①男女間賃金差異 ②女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供(7項目の内、1項目以上) ③職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備(7項目の内、1項目以上) ①同左 ②同左 ③同左 ④女性管理職比率(追加) 101人以上300人以下 ②③より1項目以上 ①男女間賃金差異(追加) ②③より1項目以上 ④女性管理職比率(追加)   ※2・3 厚生労働省 雇用環境・均等局「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会(第10回)御説明資料(報告書(素案)参考資料)」〔令和6年7月19日〕 ※4 内閣府 男女共同参画局「男女間の賃金格差の要因とその対応等」 (資料:計画実行・監視専門調査会 提出資料「ka7-2」)  「男女間賃金格差の要因とその対応」

【会場開催】実践!人事制度改善セミナー | 関連制度設計

【会場開催】実践!人事制度改善セミナー

変化の激しい時代にあって、人材や仕事の仕方が変化するにつれ、従来の人事制度やマネジメントの課題が顕在化していきます。 「評価が形骸化する」「等級が不明確」「報酬体系が戦略とあっていない」など、制度そのものに加え「戦略との接続」や「運用の定着」が大きなテーマとなります。 本セミナーでは、こうした課題に向き合い、自社の制度を振り返る視点を提供することを第一の狙いとしています。 さらに、他社の事例や実践の工夫を紹介しながら、人事制度の改善に役立つ考え方やヒントをお持ち帰りいただきます。 ※オンライン参加について 本セミナーは、セミナー会場にて、実際に講師や他のご参加者と双方向で参加する設計としております。 質疑応答の時間もございます。対面形式ならではの深い理解と効果的な学びをご期待ください。 一方、現地参加が難しい遠隔地の方に限り、オンラインで参加いただけます。 オンライン参加の方は基本「視聴のみ」となりますことをご了承ください。 オンライン参加を希望される方は【コチラ(オンライン参加専用)】よりお申込みください。              

組織の力を引き出すために、人間的な側面にフォーカスしよう | モチベーションサーベイ

組織の力を引き出すために、人間的な側面にフォーカスしよう

 『A社は、ほとんど異動がなく分業体制による業務の効率性を追求していたが、他社との競争に対応するために積極的なローテーションを導入。最初は異動に対する抵抗感が強く、象徴的な管理職の異動から始まり、徐々に一般社員も異動するようになった。異動者からは、「学びがあった」とその価値が周囲に広まる。部署間の理解を深めるために説明会やワークショップが開催された。複数業務経験を昇格の要件とし、毎年一定数の異動を実施。若年層から異動希望の声が上がるようになり、異動の順番待ちも発生した。積極的なローテーションにより、一部の業務効率や品質に一時的な低下が見られたが、会社は社員の能力向上を重視し、業務の標準化、業務マニュアルの整備、評価制度の見直しなど対策を講じた上で、方針を継続。入社時から異動が当たり前となり、異動経験者から未異動者への不満も生じたが、時間をかけて異動が当たり前の文化が形成された。』  この例では、少数の影響範囲から始めて、効果を感じた人から口コミを通じて変化の波は少しずつ広がっていきました。そして、新入社員に対しても同じ考え方を適用していくことで、早いスピードで適用者の比率が増え、徐々に組織全体へ浸透していきました。  しかし、ここで興味深いのは、途中から「異動しない人がずるい」というような声が大きくなり、「異動をしていない層」に対する同調圧力が強くなったことです。最初に異動の効果を感じた人は、新たな発見や自分自身が新しい何かをできるようになったことで、仕事の面白みや充実感を感じていたはずです。それが途中から、一部の層において変化していきます。制度の目的が腹落ちしていない、周囲との関係性の面から多数派でいたいなどの理由があったかもしれません。                   組織には、「ハードな側面」と「ソフトな側面」があります。組織のハードな側面とは、組織構造、制度や規則、職務内容や仕事をする上での手順などをさします。一方、ソフトな側面とは、人の意識やモチベーション、人々の関係性、リーダーシップ、組織の文化や風土などをさします。いわば、「人」や「関係性」など人間的側面です。どんなに立派な制度や精緻なルールを整備して、計画通り運用し、ハードな側面を整えても、組織のソフトな側面(人間的な側面)の影響で、当初のねらい通り、目的が達成されないことがあります。組織の力を強くするためには、両方の側面に焦点をあてて取り組むことが必要です。組織開発の先駆者であるダグラス・マグレガーは、「組織における人間的側面は重要なマネジメント課題である。」と主張しています。  人は、「いやいや仕方なしにやる」ことによっては活き活きとせず、その人が持つ力が発揮されません。自ら「面白がってやりたい」と感じた時に活き活きとし、その人らしさや力が発揮されてきます。ソフトな側面へのアプローチは、一朝一夕にはいきませんが、是非取り組みたい課題です。そしてそれは、人事領域に関わる方の仕事の面白味・充実感につながるのではないでしょうか。   以上