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「大学3年の4月から採用活動をしたい」 大企業やメガベンチャー企業の人事部管理職の本音

執筆者: 吉田 典史 雇用

※今回のコラムは、フリーランスのジャーナリスト吉田典史氏の執筆です。内容は個人によるもので、当社を代表するものではありません。
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 最近、人事労務の雑誌で新卒(主に大卒)採用をテーマに大企業やメガベンチャー企業の人事部管理職10人程に取材した。これら8社は売上や経常利益、正社員数で金融、IT、メーカー、商社など各業界で最上位の3社以内に入る。銀行や信用調査機関からの評価は全業界で最も高いグループに位置する。

 それだけに、新卒採用での母集団形成は大成功している。ここ10年、総合職の年平均のプレエントリー者数は10~12万人、本エントリーは1~2万人という。この中からセレクトに次ぐセレクトで、約30~40人を選ぶ。1万人とすると、倍率は300倍を超える。

 定着率も概して高いようだ。30歳前で退職するのは毎年、同期生全体の3割以下という。年によっては2割以下になるとも聞いた。レベルの高い人材が多数ひしめく、「密度の濃い競争の空間」になっているのだろう。

 人事部の管理職たちは、人材を育成するのは次の仕組みが必要だと強調していた。

1、大量のエントリー者の中から自社にとってメリットの大きい人を厳選
2、定着率を高め、密度の濃い競争の空間を作る
3、互いに刺激し合い、競争の空間を作る

 ここで筆者が読者に投げかけたいのは、新卒採用における「通年採用」だ。通常、この場合の通年とは就職協定を守るならば大学4年の4月からスタートし、1年後の3月までに繰り返し、試験を行うことを意味する。

 今回取材した人事部管理職たちは、この意味での通年採用に関心がないようだった。1年かけて採用活動をしなくとも、4~5月に数万人の学生が押し寄せ、狙い通りの人材を獲得できているのだ。その後、夏や秋、冬に採用する理由がないのだろう。人事部管理職たちは、自社の新卒採用試験の自己採点を「80~90点」と話していた。

 欲しているのは、現在よりも採用活動スタートの時期を1年程前にすることだった。大学3年の4~8月には内定を出したいのだという。この時期に、日本に進出する外資系企業(特に金融やコンサルティング業界)が、優秀な学生を獲得する傾向が年々顕著になっているからだ。

 ただし、大学2年にまで前倒ししようとはしていないようだった。その大きな理由には、内定を取り消し、裁判などに訴えられると企業側が不利になるケースが多いことを挙げていた。また、現時点で4年4月からスタートしており、2年にまで前倒すことが想像できないとも話していた。

 取材した8社のうち3社は大学3年の8~12月には特定のウェブサイトを使い、そこで学生と接点を持つことがあるという。学生から質問を受けると、サイトの掲示板で人事部員が答える。やりとりを繰り返す中、親睦を深め、双方の合意でじかに会う機会を設けるようだ。

 人事部員が会うと、就職協定順守の姿勢を打ち出している以上、問題になりうるとして学生の在籍大学のOB・OGが1対1で会うようだ。人事部員から渡された評価シートに、OB・OGは学生の印象などを書き込む。人事部員数人でそれを確認し、その後、さらに違うOB・OGが会うケースもあるらしい。そこで、4年の4月以降の本試験を受けるように誘う場合があるという。ここまでくると、筆者には採用活動にしか見えないのだが、人事部管理職らは「あくまで社会貢献活動」と説明する。

 今なお、「一括採用」「通年採用」の議論をしているメディアや識者がいるが、少なくとも今回取材した大企業やメガベンチャー企業の人事部管理職はそれとは違うことを考えている。「大学3年の4月から採用活動をしようとしても、それができない。いざ、採用活動を始める4年の4月に、欲しい学生が他社に内定となり、私たちの前にいないようにならないか。それが、怖い」。こんなことを語っていた。そこに強い不満と疑問、焦りを感じているようだった。

 新卒採用のあり方をあらためて見つめ直し、大胆に変えるべきと痛感した。急がないと、取り返しのつかないことになりかねない。もう、遅いくらいではないか。

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プロフィール

吉田 典史 (よしだ のりふみ)

1967年、岐阜県生まれ。2006年以降、フリーランスに。特に人事・労務の 観点から企業を取材。一方で、事件・事故など社会分野の取材を続ける。 著書に『震災死』『封印された震災死』『悶える職場』など多数

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