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「とりあえず、底上げ研修」?

執筆者: 高野 潤一郎 人材育成

「とりあえず、底上げ研修かな」と聴くと、「とりあえず、ビール」という表現を思い出す。

「特に深く考えたわけではないけれど…」とか、「研修は、今年の一連のイベントの内の1つ」というニュアンスを感じ、人材開発コンサルティングの場面で、違和感を覚えるのだ。

この違和感を共有しないまま、あれこれ打ち手を考えても、クライアントからは「いやぁ、今はそこまでやるつもりはありません」との反応しか得られず、こちらの建設的な貢献意欲も急落してしまう。 これは、クライアント組織にとっても、コンサルタントにとってもハッピーではない。

そこで今回は、3つの視点から「底上げ目的の集合研修」について考えていることを整理してみようと思う。

最初は、「人材開発の視点」だ。
人材開発を検討する場合、3つの側面から整理することがある。 それは、「既存の弱みを克服する」こと、「既存の強みを伸ばす」こと、そして、「新規能力を獲得する」ことである。 こういった整理の仕方で捉えると、底上げ研修というのは、「弱みの克服」と「新規能力の獲得」に相当する。

しかし実態としては、「新規能力の獲得」は、ライン部門主導で行うことが多いため、人事部門主導の底上げ研修は「弱みの克服」が主目的であると言ってよいだろう。

次は、「現状維持と変化適応の視点」だ。
従来型の人事では、「人員管理(採用や配置等)と事後評価(昇降格や昇降給等)」など、組織の安定運営(=現状維持、「守り」)の意識が強い。 そして、「一定水準の品質を担保するため」には「弱みの克服」が重要だと見なして、底上げ研修を実施してきている(※)。

一方、企業経営への貢献が求められる戦略人事では、「組織業績と組織能力の向上への貢献」が重要である。 そのため、「攻め」の一手として「市場競争力を高める」ために、「自組織ならではの強みを伸ばす」取り組みが求められる。 また、ビジネス環境の変化に柔軟に迅速に適応するために、「新規能力の獲得」に取り組むのである。

最後は、「ビジネス展開の視点」だ。
ビジネス、特にテクノロジーを活かしたビジネスの多くは「標準化→自動化→個別化」という3段階で進展する。

組織と人材について、ビジネス展開の段階に合わせて考えると…
人材が効果的に「育つ」ように、「環境(組織の在り方、仕事内容、人間関係等)と個人のマッチング」を最適化し、その後、「標準化」の一環として「底上げ研修」を実施する。 その後、効果的に「育てる」ために、個々人に合致するノウハウの提供、スキル習得を支援することを通して、「個別化」の段階まで進めるのが望ましい。

さて、今回は3つの視点から見てきたが、私は、底上げ研修自体に反対なのではない。
「組織の創業目的を実現するために、経営資源としての組織・人材を効果的に活用する方法を考えよう!」という戦略人事の考え方に基づき、「人材開発・組織開発の施策群のひとつとして実施する底上げ研修」であれば、有効な場合も少なくないと思っている。

なお、「組織業績を高めるには顧客満足を高める必要があり、顧客満足を高めるには社員のやりがいや誇りを引き出す必要があり、社員のやりがいや誇りを引き出すためには社員をイキイキさせる仕組みが必要である」ということが、近年明らかになってきている。

「底上げ研修」だけに取り組んでいては、「自分らしさを殺し、言われた作業をこなすだけの歯車のような社員」すなわち「やりがいや誇りを感じない社員」を量産しかねない!という危機感を共有したうえで、今回取り上げた3つの視点を意識しながら、組織業績と組織能力の向上に繋げるよう、建設的な人材開発に取り組もうではありませんか!

※「品質担保のため」(弱みの克服)と称して、強みを伸ばさず、「均質化」ばかり進めていては、市場競争力の向上に繋がらないうえに、優秀な人材ほど成長機会を求めて離職してしまうため、問題である。
以上

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プロフィール

高野 潤一郎 (たかの じゅんいちろう)

コンサルティング部門 マネージャー

日本の科学技術政策立案プロセスの一翼を担う国立試験研究機関にて、国内外の研究開発動向の調査分析・将来予測に従事し、在職中にマテリアル・サイエンス分野の博士号を取得。大型事業契約(約1,000億円)締結や日米共同プロジェクト(約500億円)の基調に採択される論文を執筆。人材開発・組織開発支援会社を創業し、11年間に渡る経営(複数のフォーチュン・グローバル500企業への研修提供、グローバルに展開するコーチング財団の初代日本統轄ディレクターを兼務、人材開発・組織開発コンサルティングの提供、私立理工系大学にてキャリア講義ほか)を経て、現職。

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