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「タイプ分け」は、育成に向かない

執筆者: 高野 潤一郎 人材育成

 「血液型は何ですか?」と尋ね、相手のXさんが「B型です」と答えたとしましょう。 翌日、あなたは同じXさん相手に「今日の血液型は何ですか?」と尋ねるでしょうか?

まず間違いなく、そんな質問はしませんね。なぜなら、私たちには「(骨髄を移植したり特定の疾患にかかったりしない限り)血液型は一生変わらない」という前提があるからです。

この血液型の例に倣うかのごとく、私たちは一旦何らかの「タイプ分け」を行うと、「Xさんは、○○型だからねぇ」などと、相手を「色眼鏡で見る」ようになりがちです。

また、このような「タイプ分け」は、同じ時期の同じ人物であっても、例えば、仕事の時とプライベートの時には採用する言動・態度のパターンが異なっていても当然だという「人の多面性」に目をつむらせてしまうことを忘れがちです。

私の研修提供経験を振り返ってみても、多くの人にとっての「タイプ分け」は、先入観を強化する「決めつけ」態度をもたらし、目の前の相手の新たな長所や些細な変化に気づくように「観察する姿勢」や、反応に合わせて「コミュニケーションの仕方を柔軟に変更する姿勢」を損なわせるものだと言ってよいと思います。

「静的なタイプ分け」が役に立つのは、中長期に渡って変わらずに特定の機能の発揮が期待されるチームの編成や人材の最適配置などの「組み合わせ」等を検討する場面であって、人材育成などの「変化の促進」(成長支援)の場面ではありません。

確かに「タイプ分け」の考え方は、面白いですし、単純で便利に感じます。しかし、「人や組織は望ましい姿に変わることができる」という考え方を前提として持つことが大切な、人材育成関係者(特に、部下を持つ上司、メンター、コーチなど)には、基本的には、不適切な考え方であると私は捉えています。(タイプ分けの根底にあるのは、「人や組織は、少なくとも当分の間は変わらない」という前提ですから。)

人材育成というプロセスが、「相手を信じ、相手の新たな可能性を見出す」という側面を含み、「一度伝えただけで理解するなどと思わず、できるようになるまで失敗を許容すること、辛抱することが大切」という側面を含むのであれば、「タイプ分け」という安易な手法に基づくコミュニケーション研修の繰り返しなどはやめた方がよいのではないでしょうか。

また、今後のビジネスにおいて、アマゾンの「0.1人のセグメンテーション」(個人単位での商品推薦よりもきめ細かく、種々の行動・検索履歴なども含めたビッグデータ分析に基づき、リアルタイムで商品を薦めるのが0.1人セグメンテーション)に見られるような「超顧客主義」の方向性が強まっていくのであれば、「静的なタイプ分け」よりも「動的パターン認識」を踏まえたコミュニケーションの習得に関心を持つ人や組織が増え、リアルタイムで収集された各種データを分析するテクノロジーを用いた人材育成も当たり前になっていくのかもしれないと、私は思っています。

アルバート・アインシュタインの言葉、「すべてのものは可能な限り単純化すべきだ。しかし、単純化しすぎてはいけない。」(Everything should be made as simple as possible, but not simpler.)を思い出し、性急に「単純化し過ぎるという過ち」を犯さない姿勢、「適切な複雑さ」を容認するという姿勢が、人材育成の場にも求められるのではないでしょうか?

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プロフィール

高野 潤一郎 (たかの じゅんいちろう)

マネージャー

日本の科学技術政策立案プロセスの一翼を担う国立試験研究機関にて、国内外の研究開発動向の調査分析・将来予測に従事し、在職中にマテリアル・サイエンス分野の博士号を取得。大型事業契約(約1,000億円)締結や日米共同プロジェクト(約500億円)の基調に採択される論文を執筆。人材開発・組織開発支援会社を創業し、11年間に渡る経営(複数のフォーチュン・グローバル500企業への研修提供、グローバルに展開するコーチング財団の初代日本統轄ディレクターを兼務、人材開発・組織開発コンサルティングの提供、私立理工系大学にてキャリア講義ほか)を経て、現職。

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