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HRデータ解説

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コスパに注目して戦略的な人材確保を<br />~給与が下がっても転職する中高年~ | 関連制度設計

コスパに注目して戦略的な人材確保を~給与が下がっても転職する中高年~

 企業の人事担当者からはよく、「離職防止のため、魅力ある給与水準を実現したい」「競合に劣らない給与水準を教えて欲しい」といった相談を受けます。労働者の転職理由に目を向けると、より良い給料が欲しいという経済的動機が強いようです。そこで今回は、給料を求めて離職・転職した労働者が、実際に転職後に高い処遇を得ているのか、調べてみました。  総務省の統計によると、2019年の年間の転職者数は351万人であり、過去の水準を若干上回り、最高値をマークしました。労働人口全体が徐々に少なくなっている中での転職者数の微増ですので、労働市場の流動化がじわじわと進んでいるといえましょう※1。各企業が自社の従業員の離職防止に取り組んだり、新たな人材確保の選択肢として中途採用・経験者採用をより重視したりすることは、今後も重要な施策と言えます。  年代別の動きで特徴があるのは55歳以上です。55歳以上の転職率は年々微増傾向にあり、2019年に過去最高値に達しています。この層は労働人口全体に占めるウエイトが大きく、各企業が高齢化や中高年余剰に悩むようになり、早期退職制度等を活用したセカンドキャリア選択を打ち出しています。今後も、これらの施策による企業からの中高年に対する流出圧力は一定程度かかるものと考えられるため、増加傾向が続くでしょう。 図表1:転職者数の推移 出典:総務省『統計トピックス No.123 増加傾向が続く転職者の状況 ~ 2019 年の転職者数は過去最多 ~」  転職者が転職をする理由を調べると、最も多いのは「より良い条件の仕事を探すため」です。より細かく調べると、最も多いのは「人間関係」次いで「休日等労働条件」「給料」です 。この傾向には業種による差が見受けられます※2 。例えば、建設業・卸売小売り業などでは「給料」を理由とした離職が最も多く出ています。建設業では、建設需要の増加に対応し、各社が給料を上げることで労働者を確保しようとした傾向が影響しています。一方、卸売小売り業では、業界全体の給与水準が高くなく、労働条件も厳しい企業が多いため、どうしても処遇に目が行きがちであり、良い給料を求めて流動する傾向があります。いずれにしても、「給料」は労働者の離職・転職の動機となる重要な項目であると言えます。  そこで、転職により処遇が本当に上がっているのか、調べてみました。年齢を問わず集計すると、転職により賃金が増加した割合が39%、変わらない割合が20%、減少した割合が40%です。処遇改善を求めて転職する労働者は多いものの、実際には賃金が減少している割合の方が若干多いのが実情です。年齢別では、増加した割合と減少した割合の差は、20代~30代前半が多く、40代では拮抗しています。50代以降は減少する割合の方が多く、年齢を重ねる程、良い条件での転職が難しくなることを示しています。 図表2:転職前後の賃金変化 出典:厚生労働省『令和2年雇用動向調査』  少子高齢化が進み、若年層が少なく、中高年が余剰傾向にあることから、需給の関係により若年層が求められがちです。ここで、少し視点を転換し、人材採用の視点で少し議論をしたいと思います。中長期的に安定した経営が見通されるインフラ企業や超大企業では若者を大量に確保し、育成していく採用方針が合うでしょう。しかし、企業のおかれる状況や成長フェーズにもよりますが、変化の激しい時代を生き残るためには、20年30年かけて育成し、雇用し続けることよりも、3~5年の中期的視点で必要なスキルを必要なタイミングで、適切な価格で調達することが重要になるケースも多いでしょう。  若年層は、中高年層との相対的な比較では採用コストが高いうえ、経験が短く育成も必要であり、ランニングコストもかかります。さらに、彼らは再度転職活動をすれば処遇が上がる可能性も高く離職リスクも抱えています。一方、中高年層は、多少賃金が下がる転職も許容している実態から見ると、採用コストが相対的に低く、その時点で持っている経験やスキルを発揮してもらえれば十分と考えれば、育成コストも低く済みます。  もちろん、大前提として年齢にかかわらず、会社が求める素養や能力や経験を見極める必要はありますが、効率的に必要な人材を確保する観点で、中高年層を上手く活用するのも一手でしょう。 以上 ※1.総務省「統計トピックス No.123 増加傾向が続く転職者の状況 ~ 2019 年の転職者数は過去最多 ~」より。定年・契約終了、会社都合、出向など、雇用契約上の理由や会社都合の理由を除く。 ※2.厚生労働省「雇用動向調査 入職者/性、産業(大分類)、就業形態、転職理由別入職者数」(2020年)

副業は増えているのか?<br />~「多様で柔軟な働き方」の幻想~ | 関連制度設計

副業は増えているのか?~「多様で柔軟な働き方」の幻想~

 近年、「副業」というワードをよく耳にするようになりました。2018年に厚生労働省作成のモデル就業規則から「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という副業を禁止する文言が削除されるなど、従来の働き方からの変革が求められています。企業は、従来の働き方や就業管理と真剣に向き合わなければなりません。  日本における副業者数は徐々に増加傾向にあるものの、雇用者全体に占める割合は低く、副業という働き方はまだ一般的ではありません。副業者が増加傾向にある背景の一つには、一つの会社で定年まで勤めあげるという会社中心の考え方から、各自のライフスタイルやキャリアプランに合わせて柔軟に働き方を選択する労働者中心の考え方にシフトしていることが挙げられます。しかし、人数は増えているものの、2017年度における雇用者に占める副業者の割合は2.2%と、まだ副業は浸透していないことが分かります。 図表1:雇用者に占める副業者数 出典:総務省統計局「昭和62年~平成29年 就業構造基本調査」を加工して作成注1)本グラフにおける副業者は、本業・副業どちらも雇用者として従事している者を指し、自営業者もしくは家族従業者として従事する者は含まない。 注2)雇用者には「会社などの役員」である者を含む。 なお、コロナウイルス感染症拡大後に新たに副業を始めた人の割合は2.6%(※注・※注2)と、短期的には増加していますが、長期的な観点からはコロナウイルス感染症をきっかけに副業が広まっているとは言い難い状況です。  そして、所得階層別の副業率には、極めて大きな特徴があります。所得階層別に3区分すると、高い層(1,000万円以上)と低い層(199万円以下)の副業率は高いのです。高い層は、高度な専門技術やスキルを有しており、労働市場で人材不足となっている層であることから、スキルを活かす場が多いことが挙げられます。また、低い層は、非正規社員の占める割合も多く、より収入を得るために複数の仕事を掛け持ちされています。その結果、他の所得階層よりも高い数値となっています。  一方、ボリュームゾーンとなる中間層(200~999万円)の副業率は低く、特に400~599万円において2.1%と低い結果となっています。日本において副業を推進していくには、このボリュームゾーンの人々の副業率をいかに上げることができるかが重要なポイントとなります。 図2:所得階層別の副業者数 出典:総務省統計局「平成29年 就業構造基本調査」を加工して作成注)本グラフにおける副業者は、本業で雇用者として従事している者を指し、自営業者もしくは家族従業者として従事する者は含まない。 注2)雇用者には「会社などの役員」である者を含む。  ボリュームゾーンとなる中間層の副業率が低い理由の一つとして、企業の副業に対する制度の整備が進んでおらず、対応が遅れていることが挙げられます。「平成26年度 兼業・副業に係る取り組み実態調査事業 報告書」(中小企業庁委託事業)では、「副業を推進している」と回答した企業は0%、「推進していないが容認している」と回答した企業は14.7%のみという結果でした。また、2021年に行われた「第4回 コロナウイルス感染症影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(内閣府)では、「副業が許容されている」と回答した就業者は26.7%のみであり、過半数以上の企業において副業制度が整備されていない、もしくは従業員へ制度が浸透しておりませんでした。  副業の対応を進めるにあたり、企業は労働日数や労働時間に柔軟性を持たせるなど、フルタイム雇用に頼る従来の就業管理方法からの脱却が求められています。また、企業側が制度を整えるだけではなく、労働者側も柔軟な働き方に対応できるよう意識改革をしなければなりません。時代に即した就業管理へアップデートできているか、そして、従業員が柔軟な働き方を受け入れることかできるのか、経営方針や事業内容と照らし合わせながら、今一度見直す必要があります。 以上 ※注)出典:内閣府「第2回 コロナウイルス感染症影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」 ※注2)本業・副業ともに雇用者以外の者も含む。

DX人材戦略<br />~IMD世界デジタル競争力ランキングから考える日本企業の課題~ | 関連制度設計

DX人材戦略~IMD世界デジタル競争力ランキングから考える日本企業の課題~

 近年日本ではDX(デジタルトランスフォーメーション)について試行錯誤していますが、まだまだ課題が多いのはご承知の通りだと思います。推進するためのポイントはどこにあるのでしょうか。  海外と比べ、日本はIT・DXについては遅れていると言われています。スイスに拠点を置くビジネススクールIMD(International Institute for Management Development:国際経営開発研究所)が発表した、IMD世界デジタル競争力ランキング2021によると、日本は全64カ国中28位であり、これは過去最低です。 図表1-1:IMD世界デジタル競争力ランキング 出典:「IMD World Digital Competitiveness Ranking」(IMD世界デジタル競争力ランキング)  このランキングは、デジタル競争力に影響を与える要因を「知識」、「技術」、「将来への備え」の3つに分類し、各要因に関する52の基準・指標に基づいて算出されています。 人事領域に関わりが深い「知識」にフォーカスをすると、日本においては特に、国際経験が最下位の64位、デジタル/技術スキル(デジタルスキルを持った人材の割合)は62位で「弱み」と言えます。逆に教育評価、生徒・教師の比率、R&Dへの公的支出といった教育研究面の整備については他国と比較して上位に位置していますが、これが各企業のDX推進につながっていると言えるでしょうか。 DX推進のためには、このランキングを各企業が自社のこととして、「最新のデジタル技術スキルを習得できるよう育成しているか」、「海外経験を踏ませているか」、「外国人技術者を採用しているか」など、推進に向けた自社の人事領域の把握を早急に進めなくてはなりません。 図表1-2:IMD世界デジタル競争力ランキング 要因と基準指標 出典:「IMD World Digital Competitiveness Ranking」(IMD世界デジタル競争力ランキング)  実際に企業はDX推進の課題をどう捉えているのかを見ると、日本では人材不足が過半数を超えており、アメリカ、ドイツと比べても圧倒的に多い状況です。やはり人材不足の問題は深刻なようです。 図表2:DXを進める際の課題 出典:総務省(2021)「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」  一括りに「人材」と言っても、具体的にはどのような人材が必要なのか? 以下のアンケート結果によると、「変革リーダー」「業務改革プロセスを牽引できるビジネスパーソン」「ビジネスデザイナー」が上位であり、技術者よりもDXを主導し、デジタル技術を事業に活用できる発想を持つ人材の必要性がここに見えます。 デジタルをどう事業に活かすかという知識、経験を持ち、革新的な発想ができる人材は肝であり、大きな採用・育成課題ということです。 図表3:With/アフターコロナ時代に生き残るため、貴社がDX領域で採用・育成を強化すべき人材像 出典:日経BP総合研究所 イノベーションICTラボ DXサーベイ2   (「With/アフターコロナ時代に生き残るため、貴社がDX領域で採用・育成を強化すべき人材像はどれですか」に対する回答結果)  今後のビジネスモデル構築は、デジタル技術活用、DXありきとなってくるでしょう。それはアナログデータや業務工程のデジタル化だけではなく、デジタル活用による新たな価値創造のことです。自社がDXによって、社会にどのような変革を起こせるのか、そこにはどのような人材が必要となるのかを明確にし、固定概念を打ち砕き、システム部門のみならず全社的に新たな発想ができる人材の育成や、大胆な人材採用推進していく必要があります。 以上

変わる家族手当<br />~支給条件の見直しや廃止~ | 関連制度設計

変わる家族手当~支給条件の見直しや廃止~

 少し前までサラリーマンの家族は、正社員の夫と専業主婦、子ども2人の4人家族モデルが一般的でした。しかし、結婚、出産、働き方など人生の選択が多様化し、家族の姿は大きく変化しています。2022年版の男女共同参画白書では、家族の姿は「もはや昭和ではない」と表現されました。  一世帯あたりの平均人数は、1960年の4人から2020年には2人に激減し、単独家族世帯が全世帯の38%を占め最も多くなりました。また、夫婦と子どもの世帯は、2020年には全世帯の25%まで減少し、家族といえば「夫婦と子ども」という概念が大きく変わってきています。(図1、2) 図表1:一般世帯と平均世帯人員 出典:総務省 国政調査 図表2:家族の姿の変化 出典:総務省 国政調査  企業における家族手当についても廃止や支給条件の見直しが行われています。家族手当は、配偶者や子どもなどの家族がいる社員に対して、その家族構成や人数などの条件に応じて支給される手当です。人事院の調査によると、家族手当制度がある事業所の割合は2021年時点で74.1%、そのうち、配偶者に対する家族手当を支給する事業所の割合は55%(全事業所を100とした場合)となっています。過去からの推移をみると、子どもに対する家族手当は維持されつつ、配偶者に対する家族手当は廃止傾向です。(図3) 図表3:家族手当の採用率 出典:人事院各年の職種別民間給与実態注)調査配偶者に家族手当を支給しない事業所の割合は、家族手当制度がある事業所の従業員数の合計を100とした割合である  制度の変化の背景には、家族の姿の変化とともに、その時々の社会の慣習や経済情勢の変化が影響しています。家族手当は欧米には見られない制度です。日本では大正時代から既にあったとみられ、生活給の一部として普及してきました。その後、核家族化が進み、正社員の夫と専業主婦・子どもの家族モデルのもと、「社員の家族が世間並の生活を」「子ども2人を大学まで卒業できるように」といった福利厚生の要素が加わりました。  1990年代に入って、「賃金は労働の質と量で決まる」という成果主義の広がりから、家族手当見直しの動きが始まります。また、労働人口が減少する中、多様な人材が活躍できる環境の整備が求められるようになります。「世帯主に限定して支給されることが多い家族手当は、女性に不利な賃金である」「家族手当や国の税・社会保障の仕組みが、専業主婦や配偶者の就業調整につながっている」ことが指摘され、配偶者に対する家族手当の支給見直しにつながります。さらに、子どもに対する家族手当については、少子化対策として、配偶者分の原資を振り替え、支給額を増加する企業も現れました。今後も、同一労働同一賃金など社会の要請に合わせて見直しが行われるでしょう。  家族手当が賃金に占める割合は高いものではないですが、その維持・支給条件の見直し・廃止の意思決定は、その時々の社会からの問題提起や社会課題に対する企業の姿勢を示しているものとも言えます。既存制度の見直しは、「かわいそう」という思考が先に立ち、消極的な意思決定になる場合があります。社会の状況を正確に理解しつつ、自社が大切にしたい軸を起点とした意思決定をし、それをきちんと社員にメッセージとして伝えていくことが、社員の共感や会社の魅力につながっていくのではないでしょうか。 以上

望ましい労働時間・生産性に向けて<br />~長時間労働の抑制がなければ生き残れない時代へ~ | 人事アナリシスレポート®

望ましい労働時間・生産性に向けて~長時間労働の抑制がなければ生き残れない時代へ~

 日本のサラリーマンの労働時間は長い、と言われています。OECDが取り纏めているデータベースによると、労働者の1人当たりの年間平均労働時間は、2020年時点で、日本が1,621時間に対して、ドイツでは1,284時間、フランスでは、1,320時間です(※1)。ここで示す労働者にはパート・アルバイトなどの非正規雇用も含まれ、厳密な国際比較はできませんが、日本では非正規割合が他国よりも高いのにも関わらず、年間平均労働時間が長いことから、やはり日本のサラリーマンは長い時間働いている、という感覚の確認はできるでしょう。  残業時間削減に向けた取り組みとして、平成22年(2010年)には、月間60時間を超える法定外超過勤務時間に対して、割増率を1.25倍から1.50倍に引き上げる法改正がなされました。中小企業はこれまで13年間もの間、猶予されてきましたが、令和5年(2023年)4月から対象となります。労働法改正や、各企業の取り組みにより、労働時間は若干の減少をしているものの、正社員1人当たり、年間2時間程度の削減に留まっており、大幅な削減とはいいがたく、継続した取り組みが必要です(※2) 。  企業規模別の時間外労働(平均時間)をみると、いずれの規模においても、30時間未満、10~20時間未満の企業が過半数を占めることが分かります。一方、今回の規制に抵触する60時間以上の割合、ギリギリラインである50~60時間の割合は(図表1、濃い赤・赤)は、1,000名以上規模でも若干みられる他、100~299名未満規模において他の規模より多くなっています。 (図表1:平成28年9月時間外労働(平均時間)(規模別)) 出典:『労働統計要覧(D 労働時間)』厚生労働省 (mhlw.go.jp)  経団連の2020年労働時間等実態調査によれば、時間外労働時間は年々減少傾向にあります。2019年では、年間の時間外労働時間平均が360時間未満(月平均30時間未満)の企業が90%を超えています。ちなみに、製造業と非製造業を比較すると、非製造業の方が残業時間は長い傾向にあるが、非製造業でも84.2%の企業において、年間の時間外労働時間の平均は360時間未満です。 一方で、母集団に占める割合は低い(2019年時点では0.4%)ものの、年間の時間外労働時間平均が720時間以上(月平均60時間以上)の企業も存在し、これらのほぼ全ては中小企業です。2023年4月の法改正による、中小企業における60時間を超える残業代の割増率の猶予期間終了は、これらの企業の人件費単価に対してインパクトを与えます。 図表2:時間外労働時間(一般労働者) 出典: 一般社団法人 日本経済団体連合会『2020年労働時間等実態調査』  中小企業庁による、「長時間労働に繋がる商慣行に関するWEB調査」(平成30年)によると、長時間労働に繋がる主な商慣行上の理由は3つです。①納期のしわ寄せ(前工程の遅れが下請け企業のしわ寄せとなることによって生じる短納期)②受発注方法(川下の取引先に対し過度な要求をすることによって生じる多頻度配送、在庫負荷、即日納入など)③特定業界に依存することによる特定時期の過度な繁忙(売上が特定企業や官公庁に偏重することにより、年末年始などの一時期に業務や納期が集中すること)(※3)  こうした状況に置かれるのは、交渉力が弱い小規模企業である下請け企業が多いです。状況の是正のためには、適正な業務運用ができるだけの交渉力を持つことや、特定の企業・取引先に売上を依存しない取引先のポートフォリオ適正化が必要です。  また、ビジネスモデルの特性上、大きな繁閑の差が生じることが致し方ない場合、人事管理の観点では、現有人材の時間数を長くすること(残業)による業務処理ではなく、短期の有期雇用や人材派遣活用など、人員数・ポートフォリオのコントロールによる業務処理を検討し、現有人員の人件費単価ではなく、人員数による業績連動コントロールも必要です。  日本では、企業数が非常に多く、同業界内で大企業から中小企業へ商流が多重構造になっていることも、下流企業で業務量や納期に無理が生じる主要な要因です。生産性向上のため、統合やM&Aによる業界内の産業構造の見直しも必要でしょう。  生産性向上できない企業は、人件費単価増に苦しむこととなります。また、法整備により他の企業の労働環境が改善されることで、職場・労働環境の魅力の観点から、労働力の流出リスクもあり、改善は急務です。 以上 (※1) OECD Database http://stats.oecd.org/index.aspx?datasetcode=anhrs “Average annual hours actually worked per worker” 2021年11月現在 注:データは一国の時系列比較のために作成されており、データ源及び計算方法の違いから特定年の平均年間労働時間水準の各国間比較には適さない。フルタイム労働者、パートタイム労働者を含む。 (※2) 総労働時間の推移 https://https://www.transtructure.com/hrdata/20201201/ (※3) 中小企業庁『長時間労働に繋がる商慣行に関するWEB調査結果概要と今後の対応』 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/koyou/2019/190201jinzai01.pdf  

伸びない女性管理職割合・男女差が埋まらない育児休業率<br />~女性活躍推進への一歩は意識改革と即実行~ | モチベーションサーベイ

伸びない女性管理職割合・男女差が埋まらない育児休業率~女性活躍推進への一歩は意識改革と即実行~

 社会における女性活躍を軽視している人はいないでしょう。様々な手で女性が活躍できるようにと努力がなされています。しかし、実際の女性の活躍、男女の雇用機会均等の実現は想像以上に厳しい道のりです。  管理職に占める女性の割合は女性活躍を測る重要な指標の一つです。そして大きなライフイベントの一つである出産・育児についてもキーポイントとしてとらえる必要があります。  管理職に占める女性の割合は緩やかな上昇傾向ではありますが、男女雇用機会均等が実現しているとは言い難いのが現状です。特に実務の中心を担う部長、課長相当職の女性割合の低さが顕著であり、いかに女性管理職が生まれていないのかがわかります。  データで見ると、最も高い係長職に占める割合でも17.9%、部長相当職に占める割合にいたっては6.2%といまだに10%にも満たない状況です。 図表1: 企業規模30人以上における役職別女性管理職割合の推移 出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」注1)平成23年度は岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果  女性の活躍が進まない背景の一つの理由として出産・育児があげられるのではないでしょうか。育児休業を取ることができる労働環境は必須ですが、いまだに男性は育児休業を取りづらい、取るべきではないという意識があるのではないかと推察します。  育児休業者率の推移データを見ると、女性は平成19年度以降、80%を超える水準で推移していますが、男性は平成29年度に5%を超え、そこからやや上昇、令和2年度は12.7%となっています。依然として男女での差が大きい状態が続いており、男性の育児休業取得が進んでいないことがわかります。 図表2:育児休業取得率 出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」注1)平成22年度及び平成23年度の比率は、岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果  また、この育児休業取得率を産業別に見ても、男女の差は明らかです。  金融業,保険業が男性の取得率で最も高く30%を超えていますが、女性のとの差は50%以上です。電気・ガス・熱供給・水道業の男性取得率が最も低く、2.95%という状況です。業種による人材流動性の高低や雇用環境、職種など様々な要因がありますが、男女の差がなく、かつ高い水準であることが理想でしょう。 図表3:産業別育児休業取得率 出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」注1)平成30年10月1日~令和元年9月30日に出産した者又は配偶者が出産した者のうち、調査時点(令和2年10月1日)までに育児休業を開始した者(開始の予定の申出をしている者を含む。)の割合  労働力不足の中、多様な人材の活用が必須の現代で、女性が活躍できないことは大きな問題です。これを脱却するポイントは、男性・女性、既婚・未婚、子どもを持つ・持たないに関わらず、優秀な人材の育成と登用、働く環境の整備をしていくことです。育児休業に限って言えば、まずは企業として男女関わらず育児休業を取ることや、復帰後も活躍することはごく普通のことであるという意識改革、そして社員に子どもが生まれたら育児休業を勧めるような、即時実行が必須です。  また、企業側の努力のみならず、働く側の意識改革と実行が重要です。男女の雇用機会均等は、家事分担や育児分担がなされていることが前提です。特に共働き世帯では、家事や育児について家庭でストレートに話し合い、育児をしながらも活躍できる、または活躍するという意識を持つことで、道は拓けていくでしょう。  誰もが平等に活躍できる社会の実現は、意識改革からの実行にあるといえます。 以上

業績好調企業における希望退職制度の導入<br />~頓服薬から常服薬へ~ | 関連制度設計

業績好調企業における希望退職制度の導入~頓服薬から常服薬へ~

 バブル崩壊やリーマンショックなどの急激な景気悪化局面や、コロナ禍のような外部環境の変化に伴う経済活動縮小局面において、企業は頓服薬を服用するように、雇用調整施策、いわゆるリストラを実施してきました。  景気悪化による赤字をいち早く脱却すべく雇用調整をすることは当然ながら、近年特に、予防策的に黒字下であっても人員数や人員構成をコントロールする方策を持っておくことの重要性は高まってきています。  図表1は、失業者のうち、会社都合による失業者の割合を経年で示した折れ線グラフです。会社都合による失業とは、倒産や事業所の閉鎖等による失業の他、退職勧奨など経営上の都合により退職を進められて退職をした場合などが含まれ、セカンドキャリアを自主的に選択することなどを目的に恒常的に設けられている制度などを利用し、労働者が自主的に退職を決断した場合は含まれません。  日本企業において、早期退職に関する議論が最初に興隆したタイミングはバブル崩壊後です。バブル崩壊までは、日本の経済は右肩上がりに成長を続けていました。また、労働市場には団塊世代と呼ばれる人口ボリューム層を中心に労働者の数自体が多かったため、各企業が積極的に雇用拡大をしていたのです。業績拡大に対応すべく数多くの社員を抱えていた状況下で、経済危機に直面し、雇用の在り方や、企業の雇用責任とは何か、ということが議論されるようになったのです。  グラフはその後の失業者の推移を描写していますが、平成21年のリーマンショック時までは右肩下がりです。その後、リーマンショックの影響による倒産や事業整理、応急処置的な経営効率化により会社都合による失業者の割合が急増しました。さらにその後、コロナウイルス感染拡大による人流制限が生じるまでは右肩下がりであり、令和2年には一時的に増加しているものの、かつてよりは低い水準に収まっています。 図表1:失業者のうち会社都合による失業者の割合 出典:厚生労働省「労働力調査(長期時系列データ)」  主要な上場企業における早期退職募集状況を経年で見ると、やはり、リーマンショックが生じた平成21年、コロナウイルス感染が拡大した令和2年は実施社数、募集人数共に突出しています。人員数の圧縮による人件費抑制を目的とした応急処置的な雇用調整だと考えられます。一方で、その間の平常時においても一定数実施されています。  さらに、令和2年に早期退職を実施した企業のうち、凡そ40%超の企業の通期の損益は黒字です。赤字企業が早期退職を募集する主な目的は、業績悪化に対する緊急対応であり、従前から行われてきたものです。一方、黒字企業が早期退職に踏み切るのは、先を見通した上で、先行的な改革を目指しているためです。先行型の早期退職実施の経営上の目的として良く挙げられるのは、人員構成の歪の是正、業務の効率化・生産性向上、年功主義の解消などです。 図表2:主な上場企業 希望・早期退職募集状況 出典:東京商工リサーチ  当社が人事制度設計で携わる企業においても、恒常的な人員数と人員構成のコントロールの施策として、早期退優遇制度(セカンドキャリア支援制度)を設計したいというニーズは強く、これまで以上に重要性・緊急性が高まっているように感じます。  背景には、やはり絶えず変化する経済状況に対する危機感や、業務効率や生産性の向上による人員数の余剰感、ビジネスモデルの高度化により社員に求めるスキルの種類が変化すること、会社内の人員構成の歪みなどがあります。特に、多くの会社で高齢化が進み、中高年の社員に多いのですが、新しいビジネスモデルや環境変化のスピード感についていくことが難しい社員を、このまま活用し続けることが難しいと考える企業も多くなっています。今後10年を見通して現在の歪な人員構成を是正するための、最後のタイミングだと言えるでしょう。  今後は、環境変化についていけない企業にとってはより厳しい時代となるでしょう。各企業は、環境変化になんとか対応しようと、必要なスキルを必要な時に調達せざるを得なくなります。これに伴って、労働市場の流動性もより高まるでしょう。長期雇用を前提とした企業内の人材ポートフォリオを、時代にあった形に是正すべく、雇用調整施策を常備する傾向は今後も続くのではないでしょうか。 以上

人事の数字管理に役立つ人事指標<br />~外部データを活用して継続的観察を~ | 人事アナリシスレポート®

人事の数字管理に役立つ人事指標~外部データを活用して継続的観察を~

 定期的に健康診断を受診することは健康管理上非常に重要です。しかし、医療機関における網羅的・専門的な検診や人間ドックの受診時だけでなく、日々、検温等で自己の体調を管理・把握することも重要です。  企業においても同じであり、定期的に網羅的で専門的な目線でチェックを受けることが望ましいが、日々、自己管理できれば尚良いでしょう。そこで、今回は、人事が自社の状態を把握するために活用できるデータと、その使い方を紹介します。 (図表1:法人企業統計調査の見方) 出典: 財務省 財務総合研究所「法人企業統計調査 財政金融統計月報822号」    財務省の財務総合研究所が発表している、業種別・資本金規模別の資産・負債・純資産及び損益計算書には、付加価値額や人件費、人員数が掲載されています。これらの数字を使って、自社と同規模・同業種の平均的な労働分配率や労働生産性を知ることができます。 労働分配率は、人件費を付加価値額で割ることで求められます。労働生産性は、付加価値額を従業員数で割ることで求められます。  労働分配率・労働生産性は同規模・同業種の企業間であってもビジネスモデルによっては数字の出方が異なることは考えられます。外部データと自社水準の差がある場合、例えば、同業種の中でも特殊な製品を扱っているため他社より○○費が嵩むなど、その理由に説明がつくことが望ましいです。一方、外部水準と乖離している理由が分からない場合、合理的な理由で無い場合には是正施策が必要となります。 (図表2:賃金構造基本統計調査の見方) 出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」    労働分配率の高低・労働生産性の高低を把握すると、自社の人件費の単価が妥当なのか否かが気になってきます。そこで活用できるのが、厚生労働省が発表している、賃金構造基本統計調査です。従業員数によって区分された企業規模別、製造業・建設業などの業種別や、男女別、大卒・高卒などの学歴別、年齢別、部長級・課長級などの役職別等、多岐に渡る分類ごとに、月収や賞与の水準が公開されています。 「決まって支給される給与」が、手当や残業代等も含めた月収合計の水準であり、年間賞与等の金額も明らかにされています。決まって支給される給与の12倍に年間賞与額を加算することで、年収水準も知ることができるのです。  こうして求めた外部の水準と、自社の各属性の月収・賞与・年収の水準を比較して自社の給与水準が高いのか低いのか、言い換えれば労働市場に対してプロテクトが効いているのか、把握することができます。  自社の人事の定量的な状況を知るために、まずは入手可能なデータを活用し、簡単な分析を継続的に行うことで自社の状況の観察をしてください。そして、一定期間ごとにより網羅的・専門的な分析をすることで問題課題の発見や施策展開につなげることが望ましいです。  具体的には、例えば今回紹介した外部データと自社内のデータを掛け合わせることで、社員のパフォーマンス別に望ましい処遇ができているかという人事制度上の問題課題を見つける分析や、中長期的に人件費や人員数がどのように推移するのかといった将来予測シミュレーション等さまざまな分析に応用できます。  適切な現状把握は経営判断・健全な人事管理の重要な土台となるものですから、まずはできる範囲で、そしてより多面的・専門的に分析をする必要があるのです。

定年再雇用実態<br />~定年年齢や賃金カーブの実態~ | 関連制度設計

定年再雇用実態~定年年齢や賃金カーブの実態~

 2021年から改正高年齢者雇用安定法が施行され、働く意欲がある高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、70歳までの就業機会確保が努力義務になりました。2013年より、65歳までの雇用確保は義務化されており、制度の内訳をみると「継続雇用制度」が76%、「定年制廃止」「定年延長」が24%となっています。70歳まで働ける制度のある企業は全体の3割あり、「定年延長」には慎重な姿勢がみられるものの、企業にとって必要な人材は何らかの制度で雇用していることが分かります。 図表1:65歳以上まで働ける制度のある企業の状況 出典:厚生労働省厚生労働省 令和2年「高齢者の雇用状況」集計結果 注1) 集計対象企業は、全国の常時雇用する労働者が31人以上の企業 164,151社注2) 「その他の制度で雇用」とは、企業の実情に応じて何らかの仕組みで働くことができる制度を導入している場合を指す    さて今後、定年年齢が65歳に引き上げられるのかどうかは注目される点です。過去を振り返ると1960~70年代には55歳定年が主流でしたが、1986年に制定された高年齢者雇用安定法により60歳定年が努力義務となり、1998年に60歳定年が義務化されました。そして、2000年には65歳までの雇用機会確保が努力義務となり、2004年に義務化、2013年に希望者全員が対象とされ、2025年には経過措置が終了し希望者全員が65歳まで働けるようになります。 60歳定年、65歳までの雇用確保制度の義務化と法改正の動きは加速していますが、各企業における65歳までの定年引上げの動きは、前回の60歳定年制定時と比べて極めて緩やかです。 図表2:企業による定年年齢の推移 出典:厚生労働省「雇用管理調査」(2004年以前)、「就労条件総合調査」(2005年~2017年)、「高齢者の雇用状況」(2018年~2020年) 注1)一律定年制を定めている企業の定年年齢別企業数割合の推移 (一律定年制を定めている企業=100)注2)年齢59歳以下は、2004年まで集計 注3)年齢60歳、61~64歳は、2017年まで集計注4)定年制廃止企業は含んでいない  また、定年再雇用者の賃金の取り扱いについても議論があります。図表3は、データが集計できる1999年以降の所定内賃金の賃金カーブを示しています。データの前半期(薄い色の線)では、若年期には賃金が低く30~40代前半で賃金が大幅にあがり、50~54歳でピークを迎える賃金カーブを描いていますが、近年(濃い色の線)になるにつれて、若年期の賃金が引きあがり、中高年期の賃金カーブが抑えられています。また、ごく僅かながら、賃金カーブのピークが55~59歳に移行している傾向がみられ、賃金カーブの傾きが調整され、長く緩やかな賃金カーブに変化しています。 図表3:賃金カーブの推移 出典:厚生労働省 賃金構造基本統計調査 産業計(企業規模10人以上) 注1)年齢階層別の所定内賃金をグラフ化注2)2007年以前は、「70歳~」データが集計されていない  高年齢者雇用の課題は、賃金の低下に起因する就業意欲の低下、職務配分、職務能力の維持・向上、人件費の増加、健康面への配慮など、さまざま取り上げられています。これらは、職場でのボリュームゾーンであるバブル入社世代、第二次ベビーブーム世代の中高年齢層に限った課題ではなく、次の世代が65歳、70歳になった時に、同じ課題を生じさせないよう会社全体の人事課題として捉えるべきです。そして社員一人ひとりが生き生きと働き、組織としての競争力や生産性の向上につながる取り組みを目指すことが必要です。 働く個人にとっては、企業から必要とされ続けられるよう職務能力を研鑽し、自身の人生設計に基づいてリタイアする時期を選ぶといった意識改革が必要になってきます。一方、企業には、職務や貢献に応じた処遇を実現する人事運用がきちんとなされること、仕事内容や環境の変化が激しい中、計画的な人材育成や職務能力向上のサポートを行うことが求められます。 以上

減少する企業数、増えない起業家<br />~サラリーマン大国、ニッポン~ | その他

減少する企業数、増えない起業家~サラリーマン大国、ニッポン~

 近年、働き方の多様化、価値観の多様化という言葉を頻繁に耳にするようになりました。テレビやインターネットでは、頻繁に若い起業家やフリーランスが取り上げられるようになったり、個人のスキルを販売するようなサービスが展開されたりと、企業に属さない働き方が増えている感を覚えます。  しかしながら、実際には独立や開業・起業はさほど多くありません。1999年を基準として企業数の推移をみると、右肩下がりに減少してきたことが分かります。起業・開業が少なく、開業率より廃業率が高いことが原因です。 (図表1:企業規模別企業数の増減率(1999年対比)) 出典: 総務省「平成11年、13年、16年、18年事業所・企業統計調査」、「平成21年、26年経済センサス基礎調査」、総務省・経済産業省「平成24年、28年経済センサス‐活動調査」注:企業数=会社数+個人事業者数とする。    開廃業率の推移をみると、2000年ごろまでは開業率が廃業率を上回っており、企業数が増加していたことが分かります。しかしながら、その後は、廃業率が開業率を上回る年も多く企業数が減少してきました。近年、再び僅かながら開業率が廃業率を上回っていますが、盛んに開業が行われているといえる程の水準ではありません。 (図表2:開業率・廃業率の推移) 出典: 厚生労働省「雇用保険事業年報」    一方、企業に雇用されている労働者の数は、2019年には2002年の雇用者の約115%と大きく増えています。企業が減っている中で雇用者数が増加していることは、1企業あたりの従業員数が増加していることを意味します。企業の集積度が高まってきていることが分かります。 (図表3:役員を除く雇用者の推移) 出典: 総務省統計局「労働力調査 長期時系列データ」注:役員を除く雇用者には、正規社員・非正規社員(パート、アルバイト等)、契約社員、嘱託社員等が含まれる    昨今、働き方の多様化がよく議論されますが、現在の日本においては企業数は増えておらず、サラリーマンの数は増加傾向にあります。ビジネスパーソンにとって、主要な選択肢は独立・開業することや、フリーランスとして活躍すること、そしてサラリーマンとして雇用されることでしょう。前者の2つは輝かしく、また自由な生き方を想起させ注目度も高まっていますが、起業・開業にはリスクも伴うことから、実際に選択する人はさほど多くないようです。実際にキャリア選択の幅が広がるのはまだ先のことでしょう。

労働組合組織率<br />~集団的労働法の時代から個別的労働法の時代へ~ | 人事制度運用支援

労働組合組織率~集団的労働法の時代から個別的労働法の時代へ~

 労働組合と聞いてどのくらい身近に感じるかは世代や関わりのある業種・業界によりかなりの差があるのではないでしょうか。  日本における労働組合の組織率は低下の一途をたどっています。労働組合組織率は、戦後間もない1948年の55.8%がピークであり、1980年ごろには約30%まで低下し、2019年には16.7%となっています。   図表1:労働組合組織率 出典:厚生労働省「労働組合基礎調査」(「労使関係総合調査労働組合基礎調査」)  ただし、産業別に見ると低下の度合いや組織率の水準には大きな差があります。労働市場における人材の流動性が比較的高い業種、例えば宿泊、飲食サービス業など、では組織率が低くなっています。一方、長期雇用が前提となっている企業が多い金融業やインフラ産業では組織率が高い傾向にあります。   図表2:産業別労働組合組織率 厚生労働省「労働組合基礎調査」(「労使関係総合調査労働組合基礎調査」)  労働組合員の数の観点では、1994年の1269万人をピークに減少しています。雇用者数が右肩上がりに大きく増加している中で労働組合員数が減少することで、雇用者に占める労働組合員の割合が大きく低下していることが分かります。   図表3:労働組合員数の推移 厚生労働省「労働組合基礎調査」(「労使関係総合調査労働組合基礎調査」  戦後約70年の間に変化したのは単なる数字だけではありません。産業の在り方、経済発展の速度、企業経営の進化など、労使を取り巻くあらゆる環境が変化を遂げる中で、労働組合組織率も変化をしてきたのです。  労働組合の歴史は遠く19世紀のイギリスまでさかのぼります。最も早く資本主義が浸透し産業が急速に発展する過程で、他者に雇われて働く者が急増したためです。当時の労働環境はひどいものであり、労働者個人には雇い主と交渉する力などありませんでした。しかし労働者は数が多いことを利用して、集団で助け合いながらストライキ等をするようになったのです。  日本では、明治維新による資本主義化をきっかけに、イギリスより100年ほど遅れて労使間の交渉が行われるようになりました。最初は製糸工場や炭鉱にて、雇い主に対する抗議やストライキが行われました。その後、1897年ごろから本格的に鉄工組合などの日本最初の労働組合が組織されるようになったのです。爆発的に労働組合が組織されるようになったのは戦後、民主化政策が進められた時期です。1955年には賃上げを要求する春闘が始まり、1974年には過去最高の32%超の賃上げを獲得するなどし、高度経済成長を下支えしました。  一方で、1980年代以降は集団的労働法ではなく、個別的労働法の分野が重視されるようになり、関連した法改正や立法もなされています。具体的には1985年に労働者派遣法の改正があり、その後は労働時間に関して度重なる労働法の改正や、男女の雇用機会均等や育児・介護に伴う働き方に関する立法がなされました。労働紛争の解決についても従来は団体争議が中心でしたが、2001年には個別労働紛争解決法という、個人対企業の争議を前提とした立法がなされるなど大きな変化を見せています。  これらの背景には労働力を集約した画一的な産業・労働の時代から、産業の種類や働き方の多様化の時代への変化があります。個人の事情や価値観を考慮した働き方の実現に労働組合が協力することもありますが、労働者が一丸となって会社と闘うという対立構造自体が薄れてきているのです。  また、企業経営の進化も労働組合組織率の低下に影響しています。昔は経営者VS労働者という単純な構図でしたが、現在は様々なステークホルダーのうちの1つであり、単純な対立構図ではなくなってきているのです。  働き方が多様化し、個としての労働者を守るためのルール作りがなされ、労働環境・条件に関する個人のリテラシーも高まりつつあります。労働者は労働組合に頼るだけでなく、多様な交渉方法を持ちつつあると言えます。  企業側の観点で捉えると、組合との画一的な対立構造における交渉や調整だけでは十分でなくなっているということです。  

可処分所得30年の推移|月収は15%減少、社会保険料は50%増加 | 人事制度設計

可処分所得30年の推移|月収は15%減少、社会保険料は50%増加

 我が国の労働者の月収は直近30年間で減少しています。それにもかかわらずこの間、社会保険料や税負担は増加し続けています。そのため、月収からそれらを差し引いて残る手取りの給料(=可処分所得)は大きく減少しているのです。  また、そもそも物価が上昇し続けているにもかかわらず、それに伴って月収が増えていないため、実質的な賃金としての月収も減少しています。  以上を踏まえると、実質的な賃金としての月収が減少する中、社会保険料や税負担の増加で手取りの給料(=可処分所得)も減少しているという非常に深刻な問題を抱えているということです。  月収はピーク時の1997年頃から最低値の2013年頃まで約15年間で15%も減少しています(371千円から315千円に56千円減少)。これはバブル崩壊やリーマンショックで景気が悪化したこともありますが、企業が内部留保を進め、人件費への配分を抑えるようになったことも理由の一つでしょう。 (図表1) 出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」*月収:一人当たりの現金給与総額(決まって支給する給与と特別に支払われた給与の合計額)  社会保険料(従業員負担率)は増加傾向にあり、直近30年間で負担率が1.5倍になっています。これは高齢化の影響で医療費支出が増加したことや、長引く不況で労働者の給料が伸び悩み、保険料収入が伸び悩んでいることがあげられます。また、所得税に関しては最高税率が年々引き上げられています。 (図表2) 出典:内閣府「税制調査会_社会保険料率(従業員負担分の推移)」*各保険料率について日本年金機構、全国健康保険協会、厚生労働省のデータを参考とした  そして、物価が上昇することによる実質的な賃金の減少です。2000年頃までは物価指数の伸びを名目賃金の伸びが上回っており実質賃金は増加傾向でした。しかし、それ以降は物価指数の伸びに名目賃金の伸びが追いつかず、実質賃金は下降傾向となりました。結果、現在の実質賃金は1990年の88%程度となっています。 (図表3) 出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」、総務省「消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)」*名目賃金:図1の一人当たりの月収を指数化したもの*実質賃金:名目賃金を消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)でデフレートして算出  直近30年間の賃金推移を先進国内で比較すると伸び悩んでいるのは我が国のみです。今後グローバルに戦う上で優秀な人材を確保するには各国に引けを取らない賃金水準とする必要があります。また、社員に労働の対価として賃金を支払い、生活基盤の安定性を確保する事も企業の重要な責務です。そのため、今後も物価が上昇し、各種の税金や社会保険料も増加していくと考えた時に、社員の実質的な賃金を増やしていくことは非常に重要です。そしてこれらを実現するためにも、今後社員の生産性を一層高めて会社業績を向上させるとともに、社員への人件費配分を高めなければならないでしょう。 以上