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HRデータ解説

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賃金生産性<br />~人的資本の投資価値を把握する有効な指標~ | 人事アナリシスレポート®

賃金生産性~人的資本の投資価値を把握する有効な指標~

 企業は従業員に対して労働の対価として賃金を支払い、経営者は支払った賃金に対する有効性を評価しています。今回取り扱う賃金生産性とは、人件費がどのくらい付加価値創出につながっているかを評価する生産性指標です。  図1は全産業(金融、保険をのぞく)の賃金生産性と従業員の平均賃金の10年間の推移です。賃金生産性は、2020年のコロナウイルス蔓延にともない経済が停滞した影響などから、大きく低減した時期はありますが、増加傾向にあります。また平均賃金をみてみると、増加傾向にはありますが、賃金生産性ほどの増加ではありません。経営側からすると賃金生産性は上昇基調にあり、賃金の有効性が高められていますが、従業員側からすると賃金水準はそれほどあがらず、得られた成果の還元が十分になされていない状況にあることがわかります。 図1 生産性と平均賃金の10年間の推移 出典:財務省「法人企業統計調査」全業種(金融保険除く)よりデータを加工 注1)賃金生産性=付加価値÷人件費 注2)2011年を100とした場合の10年間の推移  各業種別にみると、傾向や課題に違いが認められます。図2は宿泊業の10年間の推移です。宿泊業は非正規社員の比率が高い業種ですが、インバウンドなどにより発展が期待されている業種です。人手不足もあり、外国人労働者の活用や、人が担う業務を機械に置き換えるなど、さまざまな取り組みをし、事業運営を行っている点が特徴です。 賃金生産性は、上昇傾向にありましたが、2019年以降は2011年の水準を割り込んでいます。これはコロナウイルス蔓延の影響を強く受けたためです。一方で平均賃金は2018年以降ようやく2011年当初の水準を上回りましたが、その後やや低下、横ばいとなっています。インバウンドによる需要が回復しているなかで、今後の賃金生産性と賃金の回復が期待されています。 図表2:宿泊業の賃金生産性、平均賃金 出典:財務省「法人企業統計調査」宿泊業よりデータを加工  図3は医療福祉業の10年間の推移です。高齢化などを背景に市場のニーズは拡大しており、人手不足を補うべく人材の獲得を目指し、積極的に平均賃金を増加させているのがわかります。一方で、賃金生産性が賃金水準と比較すると、その増加率は低くなっており、まだ投資に対するリターンが十分に得られていないかもしれません。人命にかかわる業種であり、効率よりも品質が絶対的に優先されることなどから、人材のパフォーマンスを高めていくことについては時間がかかるなど、生産性を高めることが非常に難しい業界と思われます。従業員の平均賃金は上昇傾向にあり、従業員にとっては望ましい傾向になってはいるものの、付加価値をさらに増やしていくことが重要な課題といえます。 図表3:医療福祉業の賃金生産性と平均賃金 出典:財務省「法人企業統計調査」医療福祉業よりデータを加工  今後、企業として対応すべきことは、業種によって異なる賃金生産性の傾向を把握し、自社との比較を行うことで、自社の課題をまず認識する必要があります。賃金生産性を、将来の利益を生み出すための人的資本の投資価値を把握する有効な指標として中長期的に管理することが重要です。賃金生産性の改善には人材への教育や、業務をより効率的に推進できるように労働装備率を高め、それにより、付加価値をしっかり高めていくことです。従業員にとって賃金は、働くうえで欠かせない衛生要因です。サービスを提供し、また生産している従業員の満足度を下げないように、収益をしっかり賃金に還元し、賃金水準を継続的に高めることが重要です。生産性を高める施策を講じ、創出した付加価値を従業員に還元し、そしてさらなる投資につなげていく、この好循環をもたらすことが理想です。 以上

労働者の自己啓発の実施状況<br />~本人任せではなく企業の支援を~ | 人材開発

労働者の自己啓発の実施状況~本人任せではなく企業の支援を~

 日本企業の能力開発費用の割合が他国に比べて圧倒的に少ない状況です。人的資本経営の潮流の中でも、人材に対してどのように教育を施すかは重要であり、企業が社員の能力開発に積極的に取り組む必要は言うまではないですが、社員各自の自己啓発はどうでしょうか。  労働者(正社員)の自己啓発の実施状況を見ると、この10年以上、自己啓発を実施した人の割合は40%台で推移しています。特に大きな波も無く横這いの状態で推移をしており、平成21年度以降は50%を超えることがありませんでした。日本の労働者がいかに自己啓発を行っていないかがわかります。自己啓発に時間を割けない理由は多種多様かと思いますが、そもそもの仕事が忙しい、女性の場合は家事や育児の問題、そもそも何をテーマに取り組めば良いのかがわからないといった理由もあり得ます。企業側もその事情を調査するなどし、自己啓発の促進を検討する必要があるかもしれません。 図表1:自己啓発をしているもの(正社員)の割合の推移 出典:厚生労働省 能力開発基本調査より作成  労働者(正社員)の自己啓発に対する支援を実施している事業所の推移は、平成20年代前半に比べ、現在は約80%の事業所が実施しています。金銭的支援や情報提供、就業時間や休暇の配慮など様々ではありますが、自己啓発への支援自体はある程度はなされていると考えられます。しかし、自己啓発を実施した労働者の現状を見ると、これらの支援が十分に活用されているとは言えないのではないでしょうか。せっかく準備した人材への投資は確実に活用されているか、確認が必要です。 図表2:労働者(正社員)の自己啓発に対する支援を実施している事業所 出典:厚生労働省 能力開発基本調査※平成26年度調査ではこの調査を実施していない。  産業別での状況を見ると、産業ごとでの特徴が見られます。産業別のOFF-JTの実施と自己啓発を行った労働者の割合を見ると、主に企業が主催する研修などのOFF-JTを実施している割合の大きい産業では、自己啓発を行う労働者の割合も大きいのです。金融業・保険業、情報通信業などはOFF-JT実施、自己啓発ともに高めで、宿泊業・飲食サービス業などのサービス関連の産業ではOFF-JT実施も自己啓発も低めという特徴が出ています。 企業がOFF-JTをしっかりと実施したことで、社員の自己啓発意欲が高まるとも考えられますし、自己啓発が盛んな風土で組織としての取組への期待の声が多く、実施に至るということもあるかもしれません。組織で働く労働者に対しての自己啓発は自分で勝手に頑張るものという考え方ではなく、組織と労働者が相互に求めるものを共有し、自己啓発への取組推進を一緒にしていくことで、自己啓発状況が前進する可能性があります。 図表3:産業別 自己啓発を行ったものの割合とOFF-JTを実施した事業所の割合 出典:厚生労働省 能力開発基本調査 令和4年度より作成  日本企業の能力開発費用は他国に比べて圧倒的に少ない状況ですが、まさにその結果が自己啓発の状況からも見えています。しかし、企業側としてもすべて研修などを準備して学習させるのは不可能です。各個人の自己啓発への積極性を高めていくためには、学びを仕事にどう生かすべきなのかを考えるきっかけづくりが重要です。例えば、研修などの機会を通して、仕事で生せるフレームワークや手法などを学ぶことで、知識欲を高め、成長に向けた動機付けを行います。その後も実践への活用と振り返りを継続することで、学びが定着していくのではないでしょうか。また、支援を行ったならば、教育投資に対する効果の検証をして、次回の教育施策検討に繋げる必要があります。 以上

第一次産業労働力の特徴<br />~危機的状況に打開策はあるか~ | 人事アナリシスレポート®

第一次産業労働力の特徴~危機的状況に打開策はあるか~

 戦後経済の成長は産業構造の変化に伴いながら進展し、第一次産業から第二次産業、第三次産業へとシフトしていきましたが、それは就業者構成にも影響を及ぼしました。  戦後まもなくは第一次産業の就業者数が最も多く、高度経済成長を通じて、第一次産業はその割合を大きく低下させ、1960年を過ぎたころから第二次産業、第三次産業が逆転しています。1954年(昭和29年)に「神武景気」と呼ばれた好景気を皮切りに、日本の戦後高度経済成長が始まり、「岩戸景気」、池田内閣による「国民所得倍増計画」、1964年の東京オリンピック、1970年の大阪万博と、日本の経済成長は目覚ましく、特に第二次産業の重化学工業による生産性の向上によりGDP世界第二位にまでなったという時代です。  その後、第二次産業の就業者数は低下していきますが、第三次産業の就業者数は伸び続けています。  農林水産業中心の構造から、製造業の拡大、そしてサービス業の拡大へと繋がり、産業構造の変化に応じて就業者構造が変化していったのです。   図表1:産業別就業者数推移 出典:総務省「労働力調査」  第一次産業の現状を見ると、就業者は非常に高齢であるということがわかります。  60歳以上の割合は農業、林業においては64%、漁業においては47%です。次世代の担い手が減る中で、今後、高齢の農業者、漁業者のリタイアが増加することが見込まれ、日本の第一次産業は非常に深刻な状況にあると言えます。  日本の食料自給率は過去最低レベルとなっており、輸入に頼らざるを得ない状況では今後の気候変動や食料危機、円安の影響などによって輸入ができなくなる食料がでてくる可能性もあります。  就業者を増やす努力と、企業が第一次産業に参入するなど多方面からの対策が必要であると言われています。   図表2:第一次産業年齢別就業者数 出典: 令和2年国勢調査 就業状態等基本集計  この10年の農業経営体数の推移を見ると、個人経営体は、平成22年を100とすると令和2年には63まで減少し、農家の減少が進行していることがわかります。これは、就業者の高齢化と、後継者がいない問題が直結した結果です。しかし、法人経営体を見ると、平成22年を100とすると、令和2年は136と増加しており、企業の農業への参入が増えています。平成21年の農地法改正に伴い、企業が参入しやすくなったことで、農地法改正後のリース方式での参入が5倍にまでなりました。個人経営体の減少が止められない中で、企業の参入に大きな期待が寄せられています。   図表3:農業経営体数推移 出典: 2020農林業センサス 「推移」は平成22年を100としたときの指数  就業者の高齢化、そして後継者もいない中で、日本の第一次産業は危機的状況にあります。産業を守っていくには企業の参入が不可欠なのではないでしょうか。第一次産業を救う社会貢献活動の意味でも、既存企業が参入し、組織的に取組みをしていくことで、産業を守りに行くことが必要であると考えます。そして近年はAI、ICT、ロボット、ドローンといった最先端技術の活用も不可欠とされています。技術を持った企業が参入し、人手の不足解消、生産性向上のために研究が進んでいますが、さらなる推進が期待されます。  社会全体がこの危機を認識して産業を守っていかなければならないという改革が必要と言えます。 以上  

データから見る製造業の人事課題<br />~製造業 就業者と有効求人倍率~ | 人事制度

データから見る製造業の人事課題~製造業 就業者と有効求人倍率~

 日本は優れた製造技術によって信頼性の高い製品を生み出し、世界各国から「ものづくり大国」とも言われてきました。日本の製造業は現状どのようなものでしょうか。  ここ数年製造業のGDPは110兆円程度を推移しており、2021年の経済活動別国内総生産(名目)では製造業が最も構成比が高く、次いで卸売・小売業、不動産業となっています。製造業は日本経済を支える大きな産業です。しかし、昨今の世界情勢から原油価格高騰の影響により生産コストの増加など影響は引き続き深刻な状況です。 図表1 業種別GDP 出典:内閣府 2021年度国民経済計算  実際に製造業での人材需給はどのような状況なのでしょうか。有効求人場合率の推移を確認すると、製造業に関わる職業の有効求人倍率は全般的に上昇傾向です。特に「機械整備・修理」「金属材料製造、金属加工、金属溶接・溶断」は3を超えています。「機械組立」「生産設備制御・監視」などは元から相対的に倍率は低い状況でしたが、倍率の上昇率も大きくはなく、IT化、ロボティクスによる省人化が理由として考えられます。製造業の中でも職業による差が生じつつも、人手不足は進むことが考えられます。 図表2: 職業別有効求人倍率 パートタイム含む常用 出典:厚生労働省 「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」  日本経済を支える産業の製造業ですが、働く人々の年齢はどうでしょうか。34歳以下の就業者は2021年で263万人で、この約20年で3割減っています。それに伴って製造業の34歳以下の就業者割合は徐々に下がり、ここ数年は25%台が続いています。反対に65歳以上の就業者数は2021年91万人、2002年と比較をすると、約1.5倍と増えており、業界の高齢化が進んでいると言えます。  他の業種でも同様に、若年層の就業者割合の低下、高齢者の就業者割合の上昇の形になっています。若い人材が減ると言うことは、素晴らしい技術の継承者がいなくなることが考えられ、どのように継承し、発展させていくかを真剣に考えなくてはなりません。 図表3: 製造業就業者数と割合 出典: 総務省「労働力調査」  人材の高齢化と人材不足は一朝一夕に解決できる問題ではなく、これから先、世界はこの問題とともに経済活動を続けていかなくてはなりません。製造業においては、シニア活用の土壌を整えることと同時にどのように技術継承を行うか、また求職者に向けて製造業、会社の魅力を伝える工夫をすることが必要と考えます。  65歳を超えても働いてもらうためには、シニア層の職務の割り当てや待遇方針を明確にし、やりがいを持って働いてもらうための制度の検討が必要です。  また、シニア層がこれまで築いてきた技術をどのように後進に継承するのかも重要です。「経験と勘」、「見て学べ」という属人的なものはなく、どのような人でも一定の成果をあげられるマニュアルを作成するなど継承の準備は必須と言えます。  製造業のイメージとして、厳しい業界というイメージも昔はありました。しかし、昨今は働き方改革の影響もあり改善がされ、働きやすい環境も整備されてきているようです。こういった働きやすさの向上施策は引き続き努力すること、そして採用活動において会社側から魅力をしっかりと求職者に伝えることで人材採用に繋がる可能性があります。 以上

有給休暇は取りやすくなったか<br />~取得率推移と産業別比較~ | モチベーションサーベイ

有給休暇は取りやすくなったか~取得率推移と産業別比較~

 年次有給休暇の取得率は低いと言われてきました。労働者の心身のリフレッシュを図ることを目的とした有給休暇ですが、請求することへのためらいから取得率は低調であるとされています。2019年より働き方改革の一環として、年に5日の有給休暇を取得させることが経営者の義務となりました。有給休暇の現状と、労働時間、その課題はどういったものでしょうか。  労働者一人当たりの平均年次有給休暇取得率の推移を見ると、ここ数年取得率はやや上昇傾向です。しかし、政府は令和7年までに有給休暇の取得率を70%までにするという目標を掲げており、現在そこにはまだ及ばず、まだ「有給休暇がとりやすい」とはまだ言い難いのではないでしょうか。このまま取得率を上げていくためには、各企業において有給休暇取得の促進を図っていくことが必須です。  では、労働時間はどうでしょうか。総実労働時間・所定内労働時間・所定外労働時間の推移を見ると、2018年までは横ばいが続きましたが、コロナウィルスの影響による労働時間の抑制も影響してか2020年は総実労働時間・所定内労働時間・所定外労働時間すべて減少しました。コロナウィルスは労働時間に抑制にいい意味でも悪い意味でも影響を与えたと言えます。社会の変化を契機に、労働者の意識の変化も起こりました。仕事とプライベートの両立ができる労働時間や、休暇の取得は労働者にとって非常に重要なポイントになっています。道半ばの有給休暇取得率、労働時間の抑制がどのように推移していくかは、各企業の今後の取組みにかかっていると言えます。 (図表1:有給休暇取得率と労働時間の推移) 出典:厚生労働省 令和3年就労条件総合調査厚生労働省 令和3年版 労働経済の分析 -新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響-  ※労働時間:労働者が実際に労働した時間数。休憩時間は給与支給の有無にかかわらず除かれる。有給休暇取得分も除かれる。    産業別の有休取得率を見ると、産業別に有給休暇の取得率に差があることがわかります。特に電気・ガス・熱供給・水道業のインフラ関連については73.3%と高水準です。一方、卸売業、小売業や宿泊・飲食サービス業などは50%を切っており、有給休暇の取得がし辛い現状が見て取れます。不特定多数の一般顧客がメインの顧客である産業ですが、近年人材不足は深刻です。業務が回らない部分の解決のため、例えばホテルのフロント受付業務を人ではなく、機械に置き換える、小売店でのセルフレジの導入を進めている企業も増えています。システムの活用と社員の活躍のバランスを取り、社員が休みを取ることができる状況を模索することは必須です。 (図表2: 産業別労働者1人平均有給休暇取得率) 出典:厚生労働省 令和3年就労条件総合調査  有給休暇の取得は労働者の権利です。必要に応じて気兼ねなく、取得できるようにするには組織の風土の問題があります。有給休暇を取ることを申し訳なく感じることなく申請を出すことができる組織の雰囲気の醸成です。その雰囲気醸成の手前には、有給休暇取得をしても仕事が滞りなく進む状態が必須です。有給休暇で休む人がいたとしても業務が滞らない体制、準備、システムの活用など、人の数だけでなく業務全体を見通した改善を検討する必要があります。 社員がメリハリを持って働く環境を整え、労働生産性の向上、社員の満足度を向上させる風土と体制づくりを実現し、本当の働き方改革を実行していくことが求められます。 以上

ICTによる生産性向上<br />~ICT投資の推移と効果~ | 人事アナリシスレポート®

ICTによる生産性向上~ICT投資の推移と効果~

 近年、新しい経済・社会の仕組み、更には新しい生き方、働き方が現れており、それは情報通信技術(ICT)の力無くしては実現しえないものです。情報通信機器を揃え、ソフトウエアを導入したとして、実際の効果どうなのでしょうか。  日本のICTに対する投資の推移を見ると、2007年を100とした指数で見ると、2020年は115となり、投資額わずかな上昇です。コロナウィルスの影響から新たな働き方に対応するための方法としてICT投資が必要に迫られたことや、今後のDX推進に向けた投資も必要なことから投資額は伸びていくのではないでしょうか。また、外的要因(経済危機や震災など)によって投資額が減少することもわかります。  弊社HRデータ解説の「DX人材戦略~IMD世界デジタル競争力ランキングから考える日本企業の課題~」において、日本は情報通信への投資は世界の中でもランキングが低く、働き方のニューノーマルに向けた企業によるテクノロジーの投資は課題と言えます。 (https://www.transtructure.com/hrdata/20220719/) (図表1:ICT投資の推移) 出典:総務省(2022)「令和3年度 ICTの経済分析に関する調査」  ※赤線は2007年の合計値を100としたときの指数    生産性向上を目的としたデジタル化の効果を国別にみると、「期待通り」とする回答が多いですが、日本においては「期待以上」という回答は極端に少なく、また「期待する効果を得られていない」という回答も約30%です。一方、米国では「期待以上」が非常に高く、ドイツ、中国では「期待通り」が日本と比較して多いことがわかります。この他国との比較において差が出る理由は「本来必要なものに対しての投資が少ない」「日本人のデジタルに対する期待値の高さ」かもしれませんし、「導入したシステムを使いこなすスキルや人材が不足している」「デジタルに対する理解が不足し組織内で推進しにくい」といった事情があるかもしれません。いずれにしても、期待した効果が得られないということは、さらにデジタル化を進めていこうとする風は吹きづらくなってしまうのではないでしょうか。 (図表2: 生産性向上を目的としたデジタル化の効果(国別)) 出典:総務省(2022)「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」    ICT投資をしたとして、効果が得られなければ意味がありません。効果を得るためには、経営レベルでの投資の目的および目標や評価指標の明確化を行うこと、実際に使用する人々の理解と意識改革、システム活用による生産性向上のための現在の業務改革、といった一連の取り組みが必要なのではないでしょうか。 理解と意識改革の面ではITリテラシー向上が必要ということであれば、リカレント教育やリスキリングの機会も必要でしょう。また、業務改革については、慣例的業務の撤廃や導入するシステムに業務を合わせに行くぐらいの改革が必要かもしれません。  そして、ICTを活用した「新たな価値創造」が重要になります。そこにはIT人材やサービスの価値創造、変革を推進する人材の採用や既存社員からの配置、活用が必要になるでしょう。  働き方の変化やDXの推進に際して、企業は適切なICT投資への検討と実践に取り組まなくてはなりません。 以上

育休取得状況の推移<br />~仕事と家事を見直すチャンス~ | モチベーションサーベイ

育休取得状況の推移~仕事と家事を見直すチャンス~

 育児休業(以下育休)とは、育児をする労働者を時間的かつ金銭的に支援する制度です。育休は、男女の雇用機会の均等の実現、少子化への対応などといった社会的責任があり、経営者、人事がその責任を強く認識していく必要があります。  日本の育休取得率は全体として非常に低い水準です。特に男性の育休取得率は他国に比べても著しく低く、女性の育休取得率は85%に対し、男性はわずか14%弱です。しかも数年前まではわずか2%程度という状況でした。(図表1) 育児や家事の負担が女性に偏り少子化の要因になっている背景を踏まえて、政府は、2025年までに男性の育休取得率を30%に上げる数値目標を掲げています。 (図表1:育児休業取得率の推移) 出典: 厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」「育児・介護休業制度等に関する事項」 注)本調査は男女別に掲載されているグラフを、1つのグラフに統合している。  男性の育休取得率は目標の30%まで程遠いですが、増加傾向であることは好ましい状況です。しかし取得率が上がっても育児休業期間について大きな問題があります。企業の対応や社内での理解との間に温度差があることで”短期間の育休”を取得する男性が多いのが実情です。性は、半数が1年以上の育休期間を取得する一方で、男性は、半数以上が2週間未満の期間しか取得していません。男性は育休を取得しているとはいえ、その期間についてはまだ十分ではないと言えます。(図表2) (図表2:取得期間別育児休業後復職者割合) 出典: 厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」「育児・介護休業制度等に関する事項」      (単位:%) 注)「育児休業後復職者」は、調査前年度1年間に育児休業を終了し、復職した者をいう。  男性の育休取得及び育休期間が女性と比較してまだ不十分である要因は、主に4つあると考えられます。「育休取得による代替要員の確保」、「業務の引継ぎ調整」、「育休取得による不利な処遇になる懸念」、「前例がない等の社内文化」です。  1つ目と2つ目の要因は、「実際に抜けた『穴』を問題なく埋められるのか」についての懸念です。業務の担当者がいなくても問題なく遂行させるためには、”あの人にしか分からない”といった業務の属人化を解消し、標準化させる必要があります。また業務の棚卸しが出来れば、その仕事に見合った人材のレベル感や、業務の難易度を元に給与のレベル感を再定義できる機会にも繋がります。 (図表3:男性部下の育児休業への懸念) 出典:サイボウズチームワーク総研『「男性育休」についての意識調査』    ・調査対象:部下に男性正社員/公務員をもつ上司(課長職相当~経営者):2,000名 ・調査期間:2022年4月15日(金)~20日(水) ・調査方法:パネルを活用したインターネット調査  3つ目の要因は、会社と本人の間で認識の齟齬が生じていることです。会社としては、法律で認められた制度であり不利益な処遇をしてはならないと認識している一方で、本人にとっては“育休が昇格や昇給の妨げになるかもしれない“と懸念し、両者間で処遇に対する認識が一致していない可能性が考えられます。昇格や昇給の判定に育休の取得有無は全く関係が無い、ということを会社は社員に対して適切に周知していく必要があります。  4つ目の問題である前例がない等の社内文化は、経営者や管理職の視点によるものです。部下に対して育休を取得しやすい環境を作るのはもちろんのこと、担当者が不在でも業務が回る仕組みを構築することは“前例がない”に対する解決策の1つとなるでしょう。  ご家庭内での家事分担における個人の意識の改善も重要です。出産前後で生活環境や家事の内容は大きく変わり、出産後の女性が一手に家事を担うのは負担が大きいです。家事をパートナーに任せっきりにせず、なるべく分担をし、育休期間の間に家事・育児の新生活に慣れることが望ましいです。  育休は、取得すれば良いということではなく、十分な期間を設けて育児をすることが本質的です。育休を皮切りに、今一度会社の仕事の在り方・ご家庭での家事分担を振り返ってみてはいかがでしょうか。  

生産性を高める積極的な設備投資のすすめ<br />~労働装備率と労働生産性~ | 人事アナリシスレポート®

生産性を高める積極的な設備投資のすすめ~労働装備率と労働生産性~

 企業は機械や設備に投資をし、そしてその機械や設備をより有効に活用することで、付加価値を創出し、生産性の向上につなげています。企業の機械や装備がどの程度充実しているのかを示す指標として「労働装備率」があります。労働装備率とは、有形固定資産を労働力で除した指標になります。  日本は国際的には生産性が低く、また生産性を高めていくための投資がまだ不十分であると言われています。図1はその労働装備率と労働生産性、そして人員数の推移です。まず労働装備率は低下傾向にあり、2018年度にやや増加はしましたが、2014年度水準には至っておりません。企業の有形固定資産は増え続けていますが、それを上回る形で人員数が増え続けたことが要因です。一方で労働生産性は上昇トレンドではありましたが、直近は横ばいに推移しており、今後、適切な投資を行い、労働生産性を高めていくことが企業の課題となっております。 (図表1:全業種の労働装備率と労働生産性、人員数) 出典:財務省「法人企業統計調査」全業種(金融保険除く)よりデータを加工 注1)労働装備率=有形固定資産÷人員数 注2)労働生産性=付加価値÷人員数 注3)2014年度を起点とした各年度の3年間の移動平均値の推移、2012年は東日本大震災、2019年度以降はコロナウイルス蔓延における影響が大きく、数値として平時ととらえづらい時期として、除外    また各業種別にみると、傾向や課題に違いがみられます。機械や設備への投資をはかり、少ない人員数の中で、生産性を高めている業種があります。運輸業郵便業です。ドライバーの長時間労働など労務問題が多い業種ですが、大幅に人員数が減っていく一方で、労働装備率は全産業に比べ高い水準で推移し、労働生産性ともに上昇傾向にあります。 (図表2:運輸業郵便業の労働装備率と労働生産性、人員数) 出典:財務省「法人企業統計調査」運輸業郵便業よりデータを加工  そして労働装備率をより高めていったほうが望ましい業種として医療福祉業があります。高齢化などを背景に市場のニーズは拡大していることもあり、大幅に人員数が増加している一方で、労働装備率は低下しています。肝心の労働生産性も横ばいとなっております。 (図表3:医療福祉業の労働装備率と労働生産性、人員数) 出典:財務省「法人企業統計調査」医療福祉業よりデータを加工  業種によってその傾向をとらえることが前提にはなりますが、全般として今後企業として対応すべきことは以下2点となります。  1つ目は、減少傾向にある日本の労働力人口を補うためにも、ICT、DXといったテーマの下、積極的に設備投資をおこない、新たなビジネスモデルを創出し、不足している人材を補いつつ生産性を高めていくことが重要です。  そして2つ目は業務を高度化し、生産性向上につなげていくことです。投資した機械や設備を効果的に活用していくため、企業の業種、特性にあったテクニカルスキルを磨き、付加価値につなげていくことが重要になります。 企業としては、労働装備を充実させ、業務の効率化を進め、人員数を適正に維持しつつ、生産性を高めていくこと、そして収益をしっかり賃金に還元し、賃金水準を継続的に高めていくことを目指していく必要があります。 以上

低い日本企業の能力開発費用<br />~リスキリング時代到来の必然性~ | 人材開発

低い日本企業の能力開発費用~リスキリング時代到来の必然性~

 「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」が令和3年11月19日に閣議決定されました。厚生労働省では、デジタル人材育成の強化等を目的に、令和4年度から3年間で4,000億円規模の施策パッケージを創設しました。人材開発支援助成金に「人への投資促進コース」が設けられ、高度デジタル人材の輩出のため、海外の大学院での訓練を含む職業訓練や定額制訓練が助成の対象で、1社あたり年間最大1500万円が支給されます。  背景には、国際競争力の低さや、日本の労働生産性の低さに対する強い危機感があり、これを克服するには、スキル量の向上や保有するスキルの転換が必要だと考えられています。例えば、2021年の世界経済フォーラム(WEF)の 世界ITレポート(The Global Information Technology Report)によると、日本の弱点として、ICT Skills(68位/130か国)・ICT services exports(86位/130か国)・ICT environment(95位/130か国)、Growth rate of GDP per person engaged(100位/130か国)が挙げられています。「リスキリングした方が良い」という論調より、「リスキリングしなければ先が無い」と表現すべき状況です。  国内でも、産業構造は絶えず変化しています。第3次産業に従事する労働者は労働者全体の7割を超え、第1次・2次産業で働く割合は減少しています。さらに、第3次産業の中でも内訳は変化しており、職種別に見ると専門的・技術的職業従事者・サービス業従事者・事務従事者が増加しています。限られた労働力の中で、成長分野の競争力を強化するためには、(A)衰退産業の労働力を如何に新規分野の労働力に転換するか、(B)現在既に新分野に従事している人材の質をいかに引き上げるかしか選択肢はなく、リスキリングが迫られるのです。 (図表1:職種別労働人口割合の推移(長期時系列)) 出典: 総務省統計局「労働力調査」  能力開発の重要性・緊急度が高まる一方で、GDPに占める企業の能力開発費用の割合は諸外国と比較をすると著しく低水準です。アメリカ・フランス・ドイツ・イタリア・イギリスでは、GDPの1%以上を能力開発費として投資していますが、日本は0.1%程度であり、OJTや個人の自主的取り組みに頼っている状況です。日本では、新しい技術の獲得や付加価値の追求に対する積極性が十分ではないことが分かります。 (図表2:GDPに占める企業の能力開発費の割合の国際比較) 出典:平成30年版 労働経済の分析 -働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について-(厚生労働省)  世界中でビジネスの高度化が進み、産業構造の変化もスピードアップしています。一方、日本国内では、少子高齢化により労働力が減る一方です。企業は、生き残りのため・競争力の強化のために、絶えずビジネスモデルの変革と変革を牽引する人材への投資を続けねばならなりません。競争力ある労働力を生み出し、競争力向上をしなければ、日本の国・日本の企業の先は厳しいと言えましょう。 以上

労働分配率<br />~人への分配の好循環に向けて~ | 人事アナリシスレポート®

労働分配率~人への分配の好循環に向けて~

 『配当金100円以上を目標に、・・・・・積極的かつ安定的な株主還元を行っていきます。』というのは、IR関連の資料で見かけることがあります。しかし、『中期経営計画では、3年間平均の労働分配率は60%を基準とし、従業員の平均年収1,000万円を目指して、積極的かつ安定的な従業員還元を行っていきます。』 このような文章はあまり見かけません。 自社の人件費総額、人件費の分配方針(労働分配率)について、意識している企業は多くないのではないでしょうか。  近年、日本の労働分配率は緩やかに低下しています(図表1オレンジ線)。企業が事業活動を通じて新たに生み出した価値(付加価値)を、人件費として従業員に分配する割合が減少していることを意味します。一方、従業員1人当たりの人件費(図表1緑線)は横ばいです。  労働分配率は、経年で推移を把握し、内部環境や外部環境の変化に応じて見直すことが必要です。自社の利益分配の観点からは、労働生産性の推移が、社員の生活面での安定という観点からは、消費者物価指数の推移が代表的な参考指標となります。従業員1人が生み出す価値である労働生産性(図表1青線)は、やや上昇傾向にあり、2007年度を底として、消費者物価指数もほぼ同じような推移を描いています。   図表1   労働分配率、消費者物価指数と労働生産性、1人当たり人件費の推移 資料出所:財務省 法人企業統計調査時系列データ 全産業(金融業、保険業以外)、全規模より作成  また、適正な労働分配率水準は、同規模同業種の水準を参考にすることができます。図表2は、労働分配率と従業員1人あたり人件費の関係を図示しています。大型の設備や施設を要する装置産業や大企業では、「労働分配率が低く、人件費は高い」、労働力に頼る割合が高い労働集約産業や中小企業では、「労働分配率が高く、人件費は低い」傾向が分かります。前者は、会社と従業員にとってwin-winの状態です。会社および従業員は、新たに生み出す価値(付加価値)を高める努力をし、人件費上昇分以上に利益があがった結果として、労働分配率が下がります。こうなると、利益の余剰分を将来への投資、株主・社会・地域といったステークホルダーに還元していくことが可能になります。こうした分配の循環スパイラルを回していくことが、企業成長の目指す姿の一つです。   図表2 業種・資本金規模別労働分配率と1人当たり人件費 資料出所:財務省 法人企業統計調査時系列データ 全産業(金融業、保険業以外)、全規模より作成 創意工夫や新しいアイデアを生み出す「人」は、付加価値の源泉であり、人への分配を未来への投資として捉えることが、会社と従業員にとってwin-winの状態や分配の好循環につながっていくのではないでしょうか。自社が生み出す新たな価値について、株主配当、内部留保や設備投資に関する価値分配と同様、人に対する価値分配についても、自社で議論しておくことが重要です。 【用語解説】 ・付加価値=人件費(役員給与+役員賞与+従業員給与⁺従業員賞与⁺福利厚生費)+支払利息等⁺動産・不動産賃借料⁺租税公課⁺営業純益 ・労働分配率=人件費÷付加価値 ・従業員1人当たり給与=(従業員給与+従業員賞与+福利厚生費)÷従業員人員数 ・労働生産性=付加価値÷(役員人員数+従業員人員数) ・消費者物価指数 総合(All item) 年度平均  ※資料出所:総務省 以上  

最低賃金2,000円?!人件費を下げるのでなく付加価値の向上が迫られる時代へ | 人事アナリシスレポート®

最低賃金2,000円?!人件費を下げるのでなく付加価値の向上が迫られる時代へ

 毎年改正される最低賃金ですが、今年2022年は全国平均で時給961円(前年比31円)とすることが決定し、現在と同じ最低賃金の仕組みとなってから、過去最大の増加幅となりました。東京都の最低賃金は1,072円に引き上げられました。  この決定は、特に、人件費の単価が最低賃金水準のパート・アルバイトを数多く抱える企業に、大打撃となるはずです。また、改正のたびに、初任給水準だけを引き上げる改定を繰り返してきた企業からは、「賃金カーブの角度が寝てしまう」ことについての相談が多くなっており、年齢と共に徐々に賃金を上げていく「賃金カーブ」の処遇思想自体が、既に限界を迎えていることが分かります。  今回は、国内の最低賃金引き上げの推移の他、最低賃金や労働生産性の各国比較を参照し、今後のあるべき事業展開・人材活用方針、処遇制度方針について考えます。  2022年の最低賃金は、2021年と比較して3.3%の上昇率と、過去最大の増加幅です。この決定に際して、国際情勢の変化による物価上昇などが考慮されました。2002年の663円と比較すると20年間で約1.4倍に引き上げられており、かなり大きく引き上げられてきた印象を持たれるかもしれません。   図表1:最低賃金引き上げの推移 出典:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」  一方で、諸先進国の最低賃金と比較すると、日本の最低賃金水準はまだ十分に高いとは言えません。G7のうち、最低賃金の仕組みが存在しないイタリア、州により水準が異なるカナダを除く5か国の中で日本は最低水準です。為替レートにもよりますが、2022年10月21日時点の為替レートを用いて、ドル換算で比較をすると、日本の最新の最低賃金は、イギリス・フランスの60%程度の水準です。消費財の多くを輸入製品に頼る日常生活を考えると、日本で給与を得ながら輸入された商品を消費し続ける生活をするには、1,500円~2,000円ほどの時給単価が必要かもしれません。   図表2:最低賃金各国比較 出典:データブック国際労働比較2022|労働政策研究・研修機構(JILPT)P127 を基に筆者加工 注:USD換算においては2022/10/21の為替レートを使用  さらに、1人当たりがどれだけの付加価値を稼いでいるかを示す指標である労働生産性の各国比較を参照します。日本は、単価自体が低いにも拘わらず、労働生産性も低く、他国と比較して労働生産性の伸びも鈍化しています。   図表3:労働生産性各国比較 出典:OECD Database (https://stats.oecd.org/index.aspx?DataSetCode=PDB_LV#) 2022年2月現在  単価の低い労働者が、薄利な利益を稼いでいる事業の構造が示唆されます。メーカーを例に上げると、同じ分野のモノを作る企業であっても、日本企業では、原料を輸入し、部品を製造・輸出するケース多く、一方、労働生産性が高い欧州諸国の企業では、日本を含むアジア諸国から部品を輸入し、より上流の部品や完成品を製造・輸出する割合が多いです。原料を部品にするよりも、部品を完成品にする方が利益率が良く、付加価値額が高いため、多少人件費水準が高くとも、労働生産性を高く維持できます。すべての産業や企業で一概に同じ傾向にあるとは言えませんが、少子高齢化により日本国内の内需が伸びない状況下では、グローバルに需要を見出し、ビジネスプロセスの中で、より優位な立ち位置に立つだけの競争力が必要なことが分かります。  ビジネスモデルや商品・サービス、商流の変革無しに、人件費削減・抑制に依存した労働生産性の向上には限界があります。極端に言えば、「最低賃金上昇による人件費コスト上昇分をどこで帳尻合わせようか」という議論から永遠に抜け出すことが出来ません。  より利幅の高いビジネス領域にポジショニングをシフトし、付加価値額を向上するビジネスモデルの追求、人件費単価を上げても1人あたりが稼ぐ価値が上がるビジネスの構造・人材活用の仕組み作りが迫られます。 以上  

教育研修費<br />~変化対応のための人への投資~ | 人材開発

教育研修費~変化対応のための人への投資~

 日本企業のこの数十年での世界における競争力の低下の原因として、「人への投資」不足があげられます。日本は世界の中でも、能力開発費用の割合が他国に比べて圧倒的に少ない状況です。このような状況を打破するためには、「人への投資」の抜本強化が必要と言われています。  各企業、従業員に対する教育研修をコストと捉えるか、投資と捉え有効な施策を展開できるかが非常に重要なポイントとなります。  これまでのOFF-JTに支出した企業割合と、一人当たりの額の平均の推移を見ると、企業割合は徐々にではありますが増えていました。しかし、コロナウィルス蔓延という経験のない社会情勢となり、その影響から支出した企業割合、労働者一人当たりへの平均額は減少しています。コロナウィルスにより一変した社会、生活、そしてそれを契機に労働者の働き方への価値観も変わりました。この社会の変化と価値観の変化に対応した人材育成の指針策定と実行が求められるのではないでしょうか。つまり、いままで毎年やってきた研修を繰り返すのではなく、今後数年を見通して、会社の経営計画とそれを実現するために必要な人材はどのような人材なのかを明確にし、それに則した研修の組立がより重要となるのです。 図表1:OFF-JTに費用支出した企業割合とOFF-JTに支出した費用の労働者一人当たり平均額の推移 出典:厚生労働省 令和3年度能力開発基本調査  教育予算を策定する際に最も優先する基準としては、「前年度の実績額」が最も多いという調査結果があります。前年度の予算額と合計すると61%となり、前年度ベースでの教育予算策定が圧倒的に多い結果です。  人を資本と捉え、激しい時代に対応できる人材を育成することが企業の成長につながると考えるのであれば、適宜適切な教育研修の提供が必要です。それが予算策定は前年度踏襲であると、施策を実行したくてもできない可能性も出てきます。 図表2: 教育研修費用予算を策定する際に最も優先する基準 出典:産労総合研究所 2021年度 教育研修費用の実態調査  コロナ以降、劇的に変わった社会の中で、勝ち抜いていくためこれまでの教育研修を見直すのは必須です。企業に必要なスキル-保有スキルで不足する部分を埋めるためにどのような教育を施すのか、それは人事部だけの課題ではなく、企業全体としての課題と捉えるべきです。企業として、この先どのような経営をし、何を生み出すのか、そこにはどのような人材が必要なのかを明確にし、会社全体として教育研修にどれほど力を入れていくのか、未来と人への投資を結びつけた考え方がより一層重要となるでしょう。 以上