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HRデータ解説

HR DATA
定年再雇用実態<br />~定年年齢や賃金カーブの実態~ | 関連制度設計

定年再雇用実態~定年年齢や賃金カーブの実態~

 2021年から改正高年齢者雇用安定法が施行され、働く意欲がある高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、70歳までの就業機会確保が努力義務になりました。2013年より、65歳までの雇用確保は義務化されており、制度の内訳をみると「継続雇用制度」が76%、「定年制廃止」「定年延長」が24%となっています。70歳まで働ける制度のある企業は全体の3割あり、「定年延長」には慎重な姿勢がみられるものの、企業にとって必要な人材は何らかの制度で雇用していることが分かります。 図表1:65歳以上まで働ける制度のある企業の状況 出典:厚生労働省厚生労働省 令和2年「高齢者の雇用状況」集計結果 注1) 集計対象企業は、全国の常時雇用する労働者が31人以上の企業 164,151社注2) 「その他の制度で雇用」とは、企業の実情に応じて何らかの仕組みで働くことができる制度を導入している場合を指す    さて今後、定年年齢が65歳に引き上げられるのかどうかは注目される点です。過去を振り返ると1960~70年代には55歳定年が主流でしたが、1986年に制定された高年齢者雇用安定法により60歳定年が努力義務となり、1998年に60歳定年が義務化されました。そして、2000年には65歳までの雇用機会確保が努力義務となり、2004年に義務化、2013年に希望者全員が対象とされ、2025年には経過措置が終了し希望者全員が65歳まで働けるようになります。 60歳定年、65歳までの雇用確保制度の義務化と法改正の動きは加速していますが、各企業における65歳までの定年引上げの動きは、前回の60歳定年制定時と比べて極めて緩やかです。 図表2:企業による定年年齢の推移 出典:厚生労働省「雇用管理調査」(2004年以前)、「就労条件総合調査」(2005年~2017年)、「高齢者の雇用状況」(2018年~2020年) 注1)一律定年制を定めている企業の定年年齢別企業数割合の推移 (一律定年制を定めている企業=100)注2)年齢59歳以下は、2004年まで集計 注3)年齢60歳、61~64歳は、2017年まで集計注4)定年制廃止企業は含んでいない  また、定年再雇用者の賃金の取り扱いについても議論があります。図表3は、データが集計できる1999年以降の所定内賃金の賃金カーブを示しています。データの前半期(薄い色の線)では、若年期には賃金が低く30~40代前半で賃金が大幅にあがり、50~54歳でピークを迎える賃金カーブを描いていますが、近年(濃い色の線)になるにつれて、若年期の賃金が引きあがり、中高年期の賃金カーブが抑えられています。また、ごく僅かながら、賃金カーブのピークが55~59歳に移行している傾向がみられ、賃金カーブの傾きが調整され、長く緩やかな賃金カーブに変化しています。 図表3:賃金カーブの推移 出典:厚生労働省 賃金構造基本統計調査 産業計(企業規模10人以上) 注1)年齢階層別の所定内賃金をグラフ化注2)2007年以前は、「70歳~」データが集計されていない  高年齢者雇用の課題は、賃金の低下に起因する就業意欲の低下、職務配分、職務能力の維持・向上、人件費の増加、健康面への配慮など、さまざま取り上げられています。これらは、職場でのボリュームゾーンであるバブル入社世代、第二次ベビーブーム世代の中高年齢層に限った課題ではなく、次の世代が65歳、70歳になった時に、同じ課題を生じさせないよう会社全体の人事課題として捉えるべきです。そして社員一人ひとりが生き生きと働き、組織としての競争力や生産性の向上につながる取り組みを目指すことが必要です。 働く個人にとっては、企業から必要とされ続けられるよう職務能力を研鑽し、自身の人生設計に基づいてリタイアする時期を選ぶといった意識改革が必要になってきます。一方、企業には、職務や貢献に応じた処遇を実現する人事運用がきちんとなされること、仕事内容や環境の変化が激しい中、計画的な人材育成や職務能力向上のサポートを行うことが求められます。 以上

減少する企業数、増えない起業家<br />~サラリーマン大国、ニッポン~ | その他

減少する企業数、増えない起業家~サラリーマン大国、ニッポン~

 近年、働き方の多様化、価値観の多様化という言葉を頻繁に耳にするようになりました。テレビやインターネットでは、頻繁に若い起業家やフリーランスが取り上げられるようになったり、個人のスキルを販売するようなサービスが展開されたりと、企業に属さない働き方が増えている感を覚えます。  しかしながら、実際には独立や開業・起業はさほど多くありません。1999年を基準として企業数の推移をみると、右肩下がりに減少してきたことが分かります。起業・開業が少なく、開業率より廃業率が高いことが原因です。 (図表1:企業規模別企業数の増減率(1999年対比)) 出典: 総務省「平成11年、13年、16年、18年事業所・企業統計調査」、「平成21年、26年経済センサス基礎調査」、総務省・経済産業省「平成24年、28年経済センサス‐活動調査」注:企業数=会社数+個人事業者数とする。    開廃業率の推移をみると、2000年ごろまでは開業率が廃業率を上回っており、企業数が増加していたことが分かります。しかしながら、その後は、廃業率が開業率を上回る年も多く企業数が減少してきました。近年、再び僅かながら開業率が廃業率を上回っていますが、盛んに開業が行われているといえる程の水準ではありません。 (図表2:開業率・廃業率の推移) 出典: 厚生労働省「雇用保険事業年報」    一方、企業に雇用されている労働者の数は、2019年には2002年の雇用者の約115%と大きく増えています。企業が減っている中で雇用者数が増加していることは、1企業あたりの従業員数が増加していることを意味します。企業の集積度が高まってきていることが分かります。 (図表3:役員を除く雇用者の推移) 出典: 総務省統計局「労働力調査 長期時系列データ」注:役員を除く雇用者には、正規社員・非正規社員(パート、アルバイト等)、契約社員、嘱託社員等が含まれる    昨今、働き方の多様化がよく議論されますが、現在の日本においては企業数は増えておらず、サラリーマンの数は増加傾向にあります。ビジネスパーソンにとって、主要な選択肢は独立・開業することや、フリーランスとして活躍すること、そしてサラリーマンとして雇用されることでしょう。前者の2つは輝かしく、また自由な生き方を想起させ注目度も高まっていますが、起業・開業にはリスクも伴うことから、実際に選択する人はさほど多くないようです。実際にキャリア選択の幅が広がるのはまだ先のことでしょう。

労働組合組織率<br />~集団的労働法の時代から個別的労働法の時代へ~ | 人事制度運用支援

労働組合組織率~集団的労働法の時代から個別的労働法の時代へ~

 労働組合と聞いてどのくらい身近に感じるかは世代や関わりのある業種・業界によりかなりの差があるのではないでしょうか。  日本における労働組合の組織率は低下の一途をたどっています。労働組合組織率は、戦後間もない1948年の55.8%がピークであり、1980年ごろには約30%まで低下し、2019年には16.7%となっています。   図表1:労働組合組織率 出典:厚生労働省「労働組合基礎調査」(「労使関係総合調査労働組合基礎調査」)  ただし、産業別に見ると低下の度合いや組織率の水準には大きな差があります。労働市場における人材の流動性が比較的高い業種、例えば宿泊、飲食サービス業など、では組織率が低くなっています。一方、長期雇用が前提となっている企業が多い金融業やインフラ産業では組織率が高い傾向にあります。   図表2:産業別労働組合組織率 厚生労働省「労働組合基礎調査」(「労使関係総合調査労働組合基礎調査」)  労働組合員の数の観点では、1994年の1269万人をピークに減少しています。雇用者数が右肩上がりに大きく増加している中で労働組合員数が減少することで、雇用者に占める労働組合員の割合が大きく低下していることが分かります。   図表3:労働組合員数の推移 厚生労働省「労働組合基礎調査」(「労使関係総合調査労働組合基礎調査」  戦後約70年の間に変化したのは単なる数字だけではありません。産業の在り方、経済発展の速度、企業経営の進化など、労使を取り巻くあらゆる環境が変化を遂げる中で、労働組合組織率も変化をしてきたのです。  労働組合の歴史は遠く19世紀のイギリスまでさかのぼります。最も早く資本主義が浸透し産業が急速に発展する過程で、他者に雇われて働く者が急増したためです。当時の労働環境はひどいものであり、労働者個人には雇い主と交渉する力などありませんでした。しかし労働者は数が多いことを利用して、集団で助け合いながらストライキ等をするようになったのです。  日本では、明治維新による資本主義化をきっかけに、イギリスより100年ほど遅れて労使間の交渉が行われるようになりました。最初は製糸工場や炭鉱にて、雇い主に対する抗議やストライキが行われました。その後、1897年ごろから本格的に鉄工組合などの日本最初の労働組合が組織されるようになったのです。爆発的に労働組合が組織されるようになったのは戦後、民主化政策が進められた時期です。1955年には賃上げを要求する春闘が始まり、1974年には過去最高の32%超の賃上げを獲得するなどし、高度経済成長を下支えしました。  一方で、1980年代以降は集団的労働法ではなく、個別的労働法の分野が重視されるようになり、関連した法改正や立法もなされています。具体的には1985年に労働者派遣法の改正があり、その後は労働時間に関して度重なる労働法の改正や、男女の雇用機会均等や育児・介護に伴う働き方に関する立法がなされました。労働紛争の解決についても従来は団体争議が中心でしたが、2001年には個別労働紛争解決法という、個人対企業の争議を前提とした立法がなされるなど大きな変化を見せています。  これらの背景には労働力を集約した画一的な産業・労働の時代から、産業の種類や働き方の多様化の時代への変化があります。個人の事情や価値観を考慮した働き方の実現に労働組合が協力することもありますが、労働者が一丸となって会社と闘うという対立構造自体が薄れてきているのです。  また、企業経営の進化も労働組合組織率の低下に影響しています。昔は経営者VS労働者という単純な構図でしたが、現在は様々なステークホルダーのうちの1つであり、単純な対立構図ではなくなってきているのです。  働き方が多様化し、個としての労働者を守るためのルール作りがなされ、労働環境・条件に関する個人のリテラシーも高まりつつあります。労働者は労働組合に頼るだけでなく、多様な交渉方法を持ちつつあると言えます。  企業側の観点で捉えると、組合との画一的な対立構造における交渉や調整だけでは十分でなくなっているということです。  

可処分所得30年の推移|月収は15%減少、社会保険料は50%増加 | 人事制度設計

可処分所得30年の推移|月収は15%減少、社会保険料は50%増加

 我が国の労働者の月収は直近30年間で減少しています。それにもかかわらずこの間、社会保険料や税負担は増加し続けています。そのため、月収からそれらを差し引いて残る手取りの給料(=可処分所得)は大きく減少しているのです。  また、そもそも物価が上昇し続けているにもかかわらず、それに伴って月収が増えていないため、実質的な賃金としての月収も減少しています。  以上を踏まえると、実質的な賃金としての月収が減少する中、社会保険料や税負担の増加で手取りの給料(=可処分所得)も減少しているという非常に深刻な問題を抱えているということです。  月収はピーク時の1997年頃から最低値の2013年頃まで約15年間で15%も減少しています(371千円から315千円に56千円減少)。これはバブル崩壊やリーマンショックで景気が悪化したこともありますが、企業が内部留保を進め、人件費への配分を抑えるようになったことも理由の一つでしょう。 (図表1) 出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」*月収:一人当たりの現金給与総額(決まって支給する給与と特別に支払われた給与の合計額)  社会保険料(従業員負担率)は増加傾向にあり、直近30年間で負担率が1.5倍になっています。これは高齢化の影響で医療費支出が増加したことや、長引く不況で労働者の給料が伸び悩み、保険料収入が伸び悩んでいることがあげられます。また、所得税に関しては最高税率が年々引き上げられています。 (図表2) 出典:内閣府「税制調査会_社会保険料率(従業員負担分の推移)」*各保険料率について日本年金機構、全国健康保険協会、厚生労働省のデータを参考とした  そして、物価が上昇することによる実質的な賃金の減少です。2000年頃までは物価指数の伸びを名目賃金の伸びが上回っており実質賃金は増加傾向でした。しかし、それ以降は物価指数の伸びに名目賃金の伸びが追いつかず、実質賃金は下降傾向となりました。結果、現在の実質賃金は1990年の88%程度となっています。 (図表3) 出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」、総務省「消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)」*名目賃金:図1の一人当たりの月収を指数化したもの*実質賃金:名目賃金を消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)でデフレートして算出  直近30年間の賃金推移を先進国内で比較すると伸び悩んでいるのは我が国のみです。今後グローバルに戦う上で優秀な人材を確保するには各国に引けを取らない賃金水準とする必要があります。また、社員に労働の対価として賃金を支払い、生活基盤の安定性を確保する事も企業の重要な責務です。そのため、今後も物価が上昇し、各種の税金や社会保険料も増加していくと考えた時に、社員の実質的な賃金を増やしていくことは非常に重要です。そしてこれらを実現するためにも、今後社員の生産性を一層高めて会社業績を向上させるとともに、社員への人件費配分を高めなければならないでしょう。 以上

道府県別 世帯収入・貯蓄高ランキング<br />~貯金好きな県、消費好きな県~ | 人事制度設計

道府県別 世帯収入・貯蓄高ランキング~貯金好きな県、消費好きな県~

 世帯収入が多い都道府県と言えばどこを思い浮かべるでしょうか。大企業や人が多く集まっている首都圏でしょうか。世帯ごとの収入ランキングを見ると、確かに東京都や神奈川県がトップにランクインしています。一方で貯蓄高のランキングとなると少し様子が異なります。今回は都道府県別の世帯収入・貯蓄高ランキングについて解説します。世帯の構成や消費の傾向なども併せて詳しく見ることで数字だけでは表せない、いわゆる「県民性」も垣間見られ非常に興味深いトピックです。   図表1:都道府県別 世帯収入ランキング 出典:総務省統計局「2019年全国家計構造調査」  道府県別の世帯収入ランキングでは、1位が東京都、2位は神奈川県と首都圏の2都県がランクインしています。東京都は日本の首都であり、大企業が多く集まっていることから個人の年収水準の高さも日本トップです。神奈川県でも個人年収の高さが世帯年収に現れています。東京都内の企業へ通勤し東京都水準の年収を得ている人も多く、また、京浜工業地帯の中核であり関連する業種の大規模な企業に勤める人も多いためです。  3位以降は、首都圏以外の県が高順位にランクインしています。3位愛知県、4位富山県、5位福井県です。愛知県にはトヨタ自動車を中心とした自動車関連企業が集まっています。また、愛知県の名古屋市は日本三大都市の一つであり、多くの人・企業が集まっており、中部地方全体の経済の中心ともなっているため、個人の年収も高い傾向にあるのです。  4位・5位は、上位3位の都県とは上位にランクインしている理由が異なります。上位3位までは主要な経済圏であることによる個人年収の高さが世帯年収の高さに影響していました。一方、4位の富山県、5位の福井県の個人の年収の高さは全国平均を下回っています。個人あたりの単価ではなく、世帯当たりの人数・有業者数が多いため、世帯収入が高いのです。女性配偶者の有業率も他都道府県と比べて高く、共働きランキングでも常に上位にランクインしています。   図表2:都道府県別 世帯貯蓄高÷世帯収入ランキング 出典:総務省統計局「2019年全国家計構造調査」  貯蓄高・収入のデータをもとに、「貯蓄高÷年間収入」のランキングを作成してみました。この表が示しているのは各都道府県において「平均的に何年分の年収を蓄えているか」ということです。  都道府県によって1位の2.9年分~47位の1.4年分まで、約2倍の大きな差が見られました。上位5県のうち、3位神奈川県、5位愛知県は収入ランキングでも上位にランクインしており、収入の高さが貯蓄高の高さにもつながっていると考えられます。。  一方、1位の奈良県、2位の兵庫県、4位の徳島県はそれぞれ収入ランキング23位、20位、35位と決して高くはありません。一定の年収の範囲内で上手く支出をコントロールする傾向、もしくは、支出より貯蓄を重視する傾向にあるのではないかと推察されます。  また、収入ランキングでは1位の東京都は、収入に対する貯蓄高は大きくなく、20位にとどまっています。家賃等の生活コストが嵩んでいることが主な要因でしょう。  下位5県についても、2パターンに分けられます。収入・貯蓄共に低い順位となっているのが鹿児島県、宮崎県、沖縄県です。一方、佐賀県は収入では23位と平均的でありながら貯蓄高は低い水準です。収入に対する支出が他の県よりも多いと考えられます。   図表3:散布図 出典:総務省統計局「2019年全国家計構造調査」  都道府県別の世帯収入と世帯貯蓄高の間には、一定の相関性がみられます。その中で県民性や生活環境等により収入に対して貯蓄が多い、少ない等の一定のバラツキがあることが分かりました。  世帯人員数や女性・高齢者の就業率など、労働市場全体のポートフォリオの変化により、じわじわと変化が生じる可能性はありますが、今回取り上げたデータの傾向は直ちに大きく変化するものではないと考えられます。  他の都道府県別データと併せてこれらのデータをビジネスの観点で見ると非常に興味深いです。当然、消費の内訳などから有利な業種・業態、地価等の多様なデータを含めて判断する必要がありますが、例えば、他の都道府県よりも収入に対して貯蓄が低い地域に出店すれば、人件費は低く抑えられる一方で消費活動が活発で売上を上げやすいかもしれない、などと仮説を立てることができるのです。  

労働力人口<br />~多様な人材の活用と労働力需要の抑制がカギ~ | 適正人員・人件費算定

労働力人口~多様な人材の活用と労働力需要の抑制がカギ~

 現在、日本の人口は減少傾向にあり、同時に労働力も伸び止まりを見せています。今回は労働力人口の推移や、年齢別や性別といった属性ごとの就業者数について解説します。  労働力人口の過去の推移をみると、1990年代半ばまでは増加傾向にあり、1990年以降は伸び止まり、そして若干の減少傾向にありました。2010年代半ばからは僅かながら減少に歯止めがかかっています。女性や高齢者の活用により労働力の内訳を変えることにより、大幅な減少は免れている状況ですが、いずれは減少傾向に転じるでしょう。 図表1:労働力人口(単位:万人) 出典: 総務省統計局 「労働力調査」注)労働力人口の1952年以前は14歳以上人口のうちの該当する者 労働力人口とは、満15歳以上のうち、労働する意思と能力を持った人口を指す。具体的には、実際に働いている人のほか、労働の意思や能力があるものの失業中の人が含まれており、満15歳以上であっても専業の学生や主婦は除かれている。  そこで、年代別の就業者数と就業者に占める60歳以上人口の割合を見てみると、就業者全体の数は1995年をピークに減少傾向にあるものの、60歳以上の就業者は増加しています。60歳以上の就業者は1980年時点で約540万人でしたが、2015年には約1270万人と2.3倍の伸びを見せています。就業者全体に占める割合においても、1980年ごろまでは9%前後で推移していたものの、2015年時点では21.5%とやはり大きく増加しています。  今後は、少子高齢化により59歳以下の労働力の確保がますます難しくなるため、労働力を充足すべく定年延長や定年再雇用はますます進み、60歳以上の就業者は増加するでしょう。 図表2:年齢別就業者数・60歳以上割合 出典: 総務省「国勢調査」  続いて、男女別の就業者数と就業者に占める女性の割合を見てみます。男性の就業者数は、労働力人口・就業者数全体の推移と同様に伸び止まり、1995年以降は減少傾向にあります。  一方、女性の就業者数は1995年から近年に至るまで2600万人弱の水準でほぼ横ばいに推移しており、労働者に占める女性労働者の割合は増加傾向にあります。労働力人口の減少に伴っていずれは女性就業者数も伸び止まりを見せると思われますが、当面は女性労働者の割合が増え、労働市場全体や各企業内の労働力構成が大きく変わっていくでしょう。 図表3:男女別就業者数・女性割合 出典: 総務省「国勢調査」    女性・高齢者の他に外国人労働者の活用も年々進んでおり、2008年の48万人から2020年の172万人へと約3.5倍に増えています  少子高齢化により日本全体の人口が減少する中、今後も労働力人口が大きく増加することは考えづらい状況です。国内労働力の減少や構成の変化を受けて企業内のポートフォリオも大きく変化をしていくことでしょう。例えば1980年以前は外国人や高齢者の労働者は割合的にはほとんどおらず、女性も1/3程度でしたが、近い将来、男女が5:5の割合となり、外国人労働者が労働者全体の10%を超え、高齢者の割合も現在と比べて非常に高くなるでしょう。  今後に目を向けると、労働力の需給のコントロールが重要性を増します。前述の通り労働力は減少傾向になるので、女性や高齢者・外国人の活用によってダイバーシティを促進し供給量を増やすことが必要です。そして、ITやロボティクスなどの先端技術の活用や生産性向上施策によって、そもそもの労働力需要を抑えることも重要となります。  迫りくる労働力人口の不足を前に、各企業は女性・高齢者、外国人を戦力化しやすい労働環境の整備と、従業員の生産性向上施策、そして先端技術の活用による労働力需要の抑制を両立しなければなりません。

生涯賃金の推移<br />~大きく下がった生涯賃金~ | 人事制度設計

生涯賃金の推移~大きく下がった生涯賃金~

 一般的に生涯賃金とは入社してから定年までの間に受け取る総賃金を指します。当記事では年次別に生涯賃金を示していますが、これは統計調査年別に各年齢の年収を合計して算出しています(諸手当や残業代含む月給及び賞与額から構成され、退職金は含まない)。そのため、調査年の賃金額が景気動向等に影響を受けて変化した場合、生涯賃金もそれに連動して変化しています。  例えば、大卒男性の場合、ピーク時の1993年頃から最低値の2013年頃まで20年間で15%も減少しています(324百万円から277百万円に47百万円減少)。これは、バブル崩壊やリーマンショックで景気が悪化したことや、株主重視経営が進んで労働者の賃金が抑えられたからだと考えられます。  また、男女の生涯賃金を比較すると、毎年約40百万円の差(1990年~2018年の平均)が生じており、一貫して女性の生涯賃金が低い(男性の85%程度)傾向であることがわかります。これは、男性と比較して女性は総合職より一般職の割合が高いことや、総合職で入社したとしても処遇の高い管理職に就けていないためだと考えられます。 (図表1) 出典:労働政策研究・研修機構『ユースフル統計2020』  さらに、生涯賃金データを性別・企業規模別に見てみると、男性の方が企業規模による生涯賃金差が生じやすくなっています。具体的には、男性は最大約90百万円、女性は最大約60百万円の差が生じています(性別に2018年時の1000名以上規模と10-99名規模を比較)。 (図表2) 出典:労働政策研究・研修機構『ユースフル統計2020』  我が国の生涯賃金は過去と比較して大きく下がっていますが、これはあくまで名目賃金で計算したデータであり、実質賃金で見ると更に深刻な状態であると言えます。また、直近約30年間の賃金推移を先進国内で比較すると、伸び悩んでいるのは我が国のみです。今後各国に引けを取らない賃金水準とするためには、会社の生産性を上げると同時に過度な株主重視経営を控え、人件費の適正な分配を実現していくことが重要です。 以上

メンタルヘルス対策<br />~心の病が最も多い世代とストレスの内容~ | モチベーションサーベイ

メンタルヘルス対策~心の病が最も多い世代とストレスの内容~

 近年、職場における若者のメンタルヘルス対策が話題に上がることが多くなっています。そこで今回は、年代別の心の病の割合と、従業員が抱える就業上のストレスの内容について解説します。  企業に対する調査の結果によると、実際に心の病を抱える従業員が最も多い年代として10~20代を挙げている企業が増加傾向にあります。多くの企業の経営者や人事担当者の方々が、口にする「若者のメンタルヘルスの問題が増えてきている」との感覚は、実態に合っていると言えます。  過去に目を向けると、2000年代前半には心の病が最も多い年代として挙げられる年代は、30代が突出していました。30代は、職場・プライベート共に変化や心身にかかる負荷が大きく、心の病を抱えがちな年代であったのです。具体的には、職場では「働き盛り」「管理職(候補)」と期待され、質・量共に業務上の負担が掛かりがちな世代であると同時に、結婚や育児、場合によっては両親の扶養や介護が始まる等、プライベートにおいても変化が多い世代であることが推察されます。  その後、2019年時点では、50代以上を除き、10~40代がほぼ同水準となっています。10~20代については過去からの増加率が高いため若年層のメンタルヘルスに対する問題意識を特に抱きがちですが、年齢による差が無くなってきているというのが現状です。  年齢差が無くなってきた要因は、複数考えられますが、職場において年功的要素が徐々に薄まってきたことや、生産性向上への強い要請を背景に、即戦力志向が強まってきていることも一因でしょう。従来、一定程度の年数をかけて育成された30代の従業員に対して期待してきた役割や負荷が、前後の年代に対しても広がりつつあると考えられます。また、ライフスタイル・ライフプランに対する価値観の多様化も進み、プライベートで抱えるストレスについても年代差が少なくなってきているのではないでしょうか。   図表1:心の病の最も多い年代 出典: 公益財団法人 日本生産性本部「第9回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果」(2019年11月22日)  続いて、年代ごとの業務上のストレスの内容に目を向けてみても年代による大きな差はないことが分かります。  いずれの年代においても最も多いのは「仕事の質・量」に対するストレスです。労働者として職業生活を送る上で致し方ない部分もあるとは考えられますが、企業には長時間労働の防止等によるワークライフバランスへの考慮と生産性向上施策等を講じることが求められます。  その次に多いのは「仕事の失敗・責任の発生等」であり、「仕事の質・量」に続いて仕事そのものに関する項目が挙げられています。続いて「対人関係」「役割・地位の変化等」が挙げられています。  仕事そのものに対するストレスと、職場というコミュニティの中での立ち位置や他者との相対的な関係性の中で引き起こされるストレスが、職業上のストレスのうちの大部分を占めていることがわかります。この傾向には年代による差は、ほとんど見受けられません。   図表2:仕事や職業生活に関する強いストレスの内容 出典: 厚生労働省「平成30年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」 注:1人3つまでの選択式であるため最大値は300%である  今後も引き続き継続的なストレスチェックを実施し、従業員のストレス状態を把握・観察し続ける必要があります。また、各年代に共通する「仕事の質・量」によるストレスを軽減・緩和すべく業務の質・量の調整を通じて従業員のワークライフバランスを保つことも重要です。  

年功序列の賃金カーブは無くなる|勤続年数ではなく能力や成果の評価制度が必要 | 人事制度設計

年功序列の賃金カーブは無くなる|勤続年数ではなく能力や成果の評価制度が必要

 日本では長年いわゆる「年功序列」による人事運用を行ってきました。「年功序列」とは、社員が会社に長く在籍すればするほど処遇を高くすることです。日本では、時代により多少の差はありますが、入社時と勤続30年時点では約2倍の処遇差があるのです。  入社時と勤続30年時点の処遇の上昇率を時代ごとに見てみると、1976年、1995年、2019年でそれぞれおよそ2.3倍、2.2倍、1.7倍です。上昇率が特に顕著な1976年は高度経済成長後の経済が安定していた時期であり、勤続年数が長ければ長いほど処遇が上がっていく年功序列的傾向が色濃かったことが分かります。  1970年代に対して1990年代はバブル経済が崩壊し、経営の効率化を迫られた時期です。1995年のグラフを見ると、傾向としては右肩上がりではあるものの、1976年と比べると上昇率が抑えられています。年功序列的傾向は残っているものの、その度合いは薄まってきていると言えます。  さらに、2019年の数字を見ると、勤続年数の増加による処遇の上昇率はさらに小さくなっています。近年は失われた30年とも呼ばれる低成長時代であり、年齢や勤続年数の長さに対して報いる余裕がない企業が多くなっていることも一因でしょう。またグローバル化が進んだことによる競争力強化の観点や、自社で育成する余裕がないことから即戦力を求める傾向が強まっていることも関係していると考えられます。自社に貢献している期間の長さではなく、能力に応じて処遇する企業が増えているのです。 (図表1:勤続年数別賃金格差(所定内賃金)) 出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 注:1976年、1995年、2019年の各調査年での男女計の「勤続0年」の平均所定内賃金額を100としたときの各勤続年数階級の平均所定内給与額を表している  勤続年数増加による給与の上昇率が下がってきているとはいえ、諸外国と比較をすると、日本では近年においても年功的な傾向は依然として強いことが分かります。  「勤続1~5年」から「勤続30年以上」への処遇の上昇率は日本で1.8倍であり、1.4倍前後であるイタリア・イギリス・フランスなど、ヨーロッパの主要な国々と比較して高い水準にあります。また、スウェーデンでは勤続15年を超えると給与は右肩下がりとなっており、ピークである「15年~19年」時点でも1.1倍、「勤続30年以上」では約1倍と低い水準です。ちなみに、ドイツでは日本と同じく長期雇用を前提としているため1.7倍と高い水準にあります。 (図表2:勤続年数別賃金格差(国際比較)) 出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2018」 注1: 日本の勤続1~5年欄は1年以上5年未満, 勤続6~9年欄は5年以上10年未満 注2:公務・防衛・義務的社外補償を除く非農林漁業を対象とした産業計  一部企業では新卒初任給を年収1,000万円とするなど、年齢や社歴に関わらず、能力や成果に対して処遇を決めることなどが話題になっています。また、労働市場の流動化が進み中途入社をする労働者の割合が増加することにより、勤続年数が短くても給与が高い人が増えることが考えらます。これらを要因に、勤続年数が短い属性の処遇が高くなることが予想されます。   一方で、今後は勤続年数が長いからといって処遇が高くなるとは限らないでしょう。長期の功労よりも、現在保有している能力やパフォーマンスの高さに対して処遇する会社が増えると考えられるためです。  これらの影響により、今後は勤続年数と処遇の高さとの関連性はさらに弱まるでしょう。「賃金カーブ」という言葉がなくなる日もそう遠くはないかもしれません。

女性の就業率の推移|女性が活躍できる労働環境・人事制度の整備 | 人事制度運用支援

女性の就業率の推移|女性が活躍できる労働環境・人事制度の整備

 昨今、日本では女性の社会進出が進み、就業者数が増加しています。2019年時点で約2,650万人となっており、2000年の2,450万人から200万人も増加しています。その為、今後は女性就業者がより活躍できる基盤をさらに整備することが重要な経営課題となります。  日本の生産年齢人口(15歳から65歳未満)が減少を続けている中、女性就業者数が増加している背景には、就業率の飛躍的な向上があげられます。女性の生産年齢人口は2000年で約4,300万人でしたが、2019年では約3,700万人と大きく減少しています。その一方で、女性の就業率は2000年に57%でしたが、2019年では70%を超えているのです。  また、女性の就業率向上の主たる要因は次の3つと考えられます。まず、労働需要の増加です。少子高齢化に伴って生産年齢人口が減少し、社会的に労働力の不足が叫ばれていました。次に、女性の就業意識の変化です。例えば、世帯年収の減少に伴って専業主婦世帯では従前の所得水準を維持できなくなり、労働参加している背景があります。他にも、労働参加を促す政策等の法整備が進んだ事も理由に挙げられます。   (図表1) 出典:総務省『労働力調査、人口推計』  また、我が国の女性就業率をG7各国と比較すると、2005年頃までは7か国中6位で他国に遅れを取っている状況でした。そしてこの間、上位3か国と比較すると毎年約10%もの差が開いています。 直近の2019年時点では1位のドイツに及ば無いものの、カナダ・イギリスと同水準(同率2位程度)に位置づけ、大きく躍進しています。また、日本の増加度合いは1位のドイツ、同率2位のカナダ・イギリスより大きいため、この傾向が継続すれば5-10年程度で日本の順位が1位になる可能性があります。   (図表2) 出典:OECD(2021)『 Employment rate (indicator). doi: 10.1787/1de68a9b-en (Accessed on 12 March 2021)』 注) イタリアは直近約20年間連続最下位で比較とならない為データから除いている  短期的には、新型コロナウイルスによる経済活動低迷の影響により、就業率の増加傾向が鈍化する可能性があります。しかしながら中長期的には、再度増加傾向に転じるのではないでしょうか。なぜなら、少子高齢化に伴う慢性的な人手不足や、女性活躍推進法の改正等政府による働きかけが継続すると考えられる為です。  日本は労働需給という観点では需要が多く、慢性的な労働力不足の状態です。その為、女性就業者の増加は人手不足の解消という点で効果があります。但し、就業者数の急速な増加とともに、今後は就業の“質”が大きな課題となります。男女が平等かつ働きやすい環境を整備することが喫緊の課題ということです。その為には、企業においての意識改革と働き方の改革が必要となるでしょう。意識改革とは、「仕事のチャンスは男女平等に与えられる」という考えを醸成する事です。仕事は男性が担い、家事・育児は女性が担うという考えを改める必要があります。例えば、男性の育児休暇を推進する事で、家事・育児を男女平等に分担する意識を育てる事が出来るでしょう。また、家事育児をしながら効率的な働き方をするための具体的な施策の推進も必要でしょう。例えばテレワークの徹底した活用などがその代表的なものになります。 以上

産業別雇用者数<br />~どの産業に雇用が集中している?~ | 適正人員・人件費算定

産業別雇用者数~どの産業に雇用が集中している?~

 日本の景気が安定してきた2013年以降、雇用者数※は増加傾向であり、2020年までの7年間で約180万人増加しています。しかし、すべからく全ての産業において雇用者数が増加しているわけではありません。社会環境の変化やテクノロジーの進化に伴って産業構造は常に変動しており、労働需要の縮小・拡大が産業別に起こるからです。 ※15-64歳の生産年齢人口における雇用者数(うち役員を除く正規及び非正規社員)  雇用者の増減数(2013年比2020年データ)を産業別に見てみると、雇用者数が増加している主な産業は「医療・福祉」「情報通信業」です。そして、これらの産業の増加数は雇用者全体の増加数の約60%を占めており、雇用が集中していることが分かります。  一方、雇用者数が減少している主な産業は「建設業」「生活関連サービス業」です。これらの産業の減少数は雇用者全体の減少数の約80%を占めております。 (図表) 出典:総務省『労働力調査』 注1)15-64歳の生産年齢人口における雇用者数(うち役員を除く正規及び非正規社員)データを活用 注2)主に雇用者数100万人以上の産業を抜粋  では、雇用者数の増減率(2013年比2020年データ)を産業別に見てみます。増加率は上から「情報通信業」「学術研究,専門技術サービス業」の順に大きく、これらの産業は雇用者増加数が一番大きい「医療・福祉」よりも増加の度合いが強いです。現在、「情報通信業」「学術研究,専門技術サービス業」ともに「医療・福祉」より雇用者数自体は少ないですが、仮にこの傾向が続けばいずれ規模の逆転が起こる可能性があるという事です。 一方、減少率は上から「生活関連サービス業」「建設業」の順に大きくなっています。これらの産業は減少数・減少の度合い双方が強い為、今後もこの傾向が続けば他の産業に比べ一層雇用者数が減る事となります。  雇用者数の増減要因の一つに、社会環境の変化やテクノロジーの進化に伴う労働需要の拡大・縮小があります。例えば昨今、「医療・福祉」は高齢化の進展や共働きの増加、「情報通信業」はICTの革新・利活用が進んでいます。その為、サービス提供のニーズが高まり、労働需要が拡大して雇用者数が増加したと考えられます。 一方で、当然ながら労働需要が拡大していても雇用者数が減少する場合もあります。例えば「建設業」は、リーマンショック以降オリンピックに向けて建設投資額が回復し、労働需要は拡大してきていると考えられますが、雇用者数が減少しています。これは、就業希望者数の低迷・ボリュームゾーンとなる高齢者の引退が進んでいる為だと考えられます。 以上

失業率の推移<br />~完全雇用状態の日本、今後の変化は?~ | 適正人員・人件費算定

失業率の推移~完全雇用状態の日本、今後の変化は?~

 直近約30年間の日本の失業率はおよそ2%から5%の間で推移しています。5%に達したのはバブル崩壊後とリーマンショック後であり、一時的に高い水準となっていますが、平均値では約3.4%に留まっています。3%以下の状態は、失業者がほとんどいない完全雇用の状態とも言われていることから、日本の失業率は低い水準にあると言えます。  一方で、諸外国に目を向けると、日本と比較しておおむね高い水準で失業率が推移していることが分かります。1991年から2019年の間の失業率を平均値で比較すると、日本では約3.4%であるのに対して、フランス、イタリア、ドイツでは7%を超えており、アメリカ・イギリスでも5%弱の水準です。日本では、諸外国と比較して労働者に対する求人の数が多く、失業率が低くなっているのです。 (図表:Unemployment rate(%)(G7)) 出典: Inretnational Labor Organization(ILO), "Unemployment rate by sex and age -- ILO modelled estimates, Nov. 2020 (%) -- Annual"    失業率がどの程度の水準であれば低いと言えるかについては諸説ありますが、2019年8月に日本の完全失業率が2.2%となった際、総務省は「景気など構造的要因による失業率はほぼゼロとなって」おり、「完全雇用に近い状況にある」との見方を示しています¹。また、イギリスの経済学者W.ベバリッジは失業率が3%の状態を完全雇用状態と定義しています。  過去の推移や諸外国との比較から、日本の失業率は景気悪化時には一定の失業者が生じて失業率が上昇するものの、平時においては完全雇用状態に近い、低い水準にあることが分かります。  今後の短期的な見通しとしては、COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大による経済活動の低迷の影響がこれから生じるものと思われ注視が必要ですが、日本全体の人手不足感を鑑みるに過去2回のピークほどは上昇しないのではないでしょうか。  一方で、中長期的に将来を見据えると、高齢化によるシニア層の余剰、産業構造やテクノロジーの変化による労働力に関する需給の変動、働く意識の変化などの影響が予想されます。具体的な例を挙げると、今後もITや福祉の分野では求職者よりも採用数が多くなる一方、事務等の領域では省力化やAI化が進んで採用数が少なくなることが予想されます。労働力の需給のギャップが大きくなることにより、失業率が高くなる可能性があるのです。 以上 参考文献 ¹:日本経済新聞「8月の完全失業率2.2%、総務省「完全雇用に近い状況」」(2019年10月1日)