優秀人材が採れない原因とは?先進国比較でわかる日本企業の人事制度と賃金改革

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HR DATA

「なぜ優秀人材が採れない…」|日本企業に根付く構造的な人事制度特性
―先進国との比較から考える今後の賃金戦略と再設計―

要点サマリ

  • OECD主要国では、2015年以降、平均年収が中長期的に上昇しており、特に米国やドイツ、イタリアなどで伸びが顕著である
  • 日本の平均年収は、2015年比では緩やかな上昇にとどまり、国際比較の中で相対的な地位低下が進んでいる
  • 2020年以降のコロナ禍では一時的な変動が見られたが、多くの国は2021年以降に回復・再成長局面へ移行している
  • 日本は雇用の安定性を維持する一方、賃金水準の伸びが限定的であり、人材獲得競争における構造的な制約が顕在化している
  • 今後の人事戦略では、「雇用維持」中心の発想から、「付加価値と賃金の連動」を軸とした設計への転換が重要となる

データ解説:OECD主要国における平均年収の推移

【図表:OECD主要国における平均年収の推移(2015年日本=100)】

HRデータ解説「日本企業に根付く構造的な人事制度特性」スライド

出所:OECD Data Explorer(OECDオンライン統計データベース) /指標:“Average annual wages”(購買力平価ベース、フルタイム換算)

本稿で用いるデータは、OECDが提供する 「平均年収(Average annual wages)」 指標である。これは、各国の国民経済計算に基づく総賃金支払額を平均従業員数で割り、フルタイム換算ベースで算出されたものであり、国際比較において標準的に用いられる賃金指標である 。

図表は、2015年の日本の平均年収100とした指数で、2015年から2024年までの推移を示している。なお、各国間の物価水準の差を調整するため、購買力平価(PPP)ベースが採用されており、実質的な生活水準に近い比較が可能となっている。

グラフを見ると、米国は2015年時点で日本を大きく上回る水準にあり、その後も一貫して上昇基調を維持している。ドイツ、カナダ、オーストラリアといった主要先進国も同様に、コロナ禍前後の変動を経ながら、中長期では明確な増加傾向が確認できる。

一方、日本の平均年収は、2015年比では緩やかな上昇(年率1%未満程度)にとどまり、2020年以降も大きな反発や加速は見られていない。結果として、他国との相対差は年を追うごとに拡大しており、「日本の賃金が下がった」というよりも、「他国がより速く上昇した」ことによる相対的停滞が浮き彫りとなっている。

人事施策の活用例

日本の平均年収が国際的に見て伸び悩んできた背景には、景気循環だけでなく、日本企業に根付く人事・賃金制度の構造的特性がある。長期雇用と年功的要素を前提とした賃金体系は、雇用の安定を支えてきた一方で、職務内容や専門スキル、市場における人材価値を賃金に反映しにくい仕組みとなってきた。その結果、人件費は抑制されやすく、成長局面においても高付加価値人材の賃金を機動的に引き上げることが難しい。この制度的特性が、OECD諸国との平均年収の差として累積的に表れている。

こうした状況の下で、多くの日本企業では採用難や優秀人材の確保が課題となっている。購買力平価ベースで見た平均年収の水準は、グローバルな人材市場における日本の競争力や魅力度を左右する重要な指標であり、もはや人事部門にとどまらない経営課題である。

まとめ

今後の人事戦略において重要なのは、景気対応としての一律的な賃上げではなく、職務やスキル、市場水準を踏まえた報酬設計を行い、人件費を戦略的に配分することである。OECDデータが示す平均年収の推移は、雇用の安定という強みを維持しつつ、賃金を価値創出への投資として再設計できるかどうかが、日本企業の競争力を左右する分岐点であることを示している。

以上