中小企業の賞与支給月数動向
~最新業種別データ~
目次
要点サマリ
- 2024年度の中小企業(100~999人規模)における賞与支給月数は、最上位が建設業の4.0か月、中間が情報通信業の3.1か月、最下位が宿泊業・飲食サービス業の1.2か月でした(図表1)。2023→2024年度の変動では、運輸業・郵便業が+0.5か月(+25.0%)、卸売業・小売業が+0.1か月(+3.3%)、製造業は–0.2か月(–5.7%)と業種間で大きな差異が確認されました(図表2)。
- 物価高と人手不足が続く状況下で、賞与支給水準は中小企業の採用競争力や従業員定着に直結します。本稿では、2024年度の支給状況(図表1)と直近1年の増減(図表2)を整理し、自社制度を検証・改善する視点を提供します。
本稿で扱う企業規模は景気動向に敏感かつ母数の多い中小企業(100~999人規模)とし、業種は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の業種大分類より、労働集約度や収益構造の異なる領域を幅広くカバーするために選定しました。(名称も調査シート記載のままとしています。)
D 建設業/E 製造業/G 情報通信業/H 運輸業・郵便業
I 卸売業・小売業/K 不動産業・物品賃貸業/M 宿泊業・飲食サービス業
N 生活関連サービス業・娯楽業/P 医療・福祉
出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」男女計シート(所定内給与額・年間賞与額)
データ解説1:2024年中小企業(100-999人)業種別賞与支給状況(図表1)
賞与支給月数=(年間賞与額)÷(月額所定内給与額)
出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和6年(男女計・所定内給与額・年間賞与額)に基づき作成
建設業は月額給与364.2千円に対し賞与4.0か月と最も高水準でした。情報通信業は374.4千円と給与水準が高いものの賞与は3.1か月で中間に位置します。宿泊業・飲食サービス業では月額給与264.8千円に対し1.2か月と、他業種を大きく下回る支給水準でした。
データ解説2:2023→2024年度の変動(図表2)
図表2は2023年度と2024年度の月額所定内給与額および賞与支給月数の増減を金額・率で示しています。
出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年、令和6年(男女計・所定内給与額・年間賞与額)に基づき作成
運輸業・郵便業は給与が+10.5千円(+3.6%)、賞与支給月数が+0.5か月(+25.0%)と最大の伸長を記録しました。建設業は給与+10.8千円(+3.1%)、賞与+0.4か月(+11.1%)と続きます。一方、製造業は給与+8.7千円(+3.0%)にもかかわらず賞与は–0.2か月(–5.7%)と減少し、宿泊業・飲食サービス業も–0.1か月(–7.7%)の減少が見られました。
人事施策への活用例
図表1と図表2を活用し、自社の給与額・賞与支給月数を業界平均と照合して賃上げ率と賞与増減率の乖離の有無を確認し、必要に応じて今年度以降の支給方針に活かしましょう。また、業績が上がっているにもかかわらず賞与増減率が低い場合は、業績連動ロジックの導入など賞与支給ルールの見直しを検討するのもひとつの方法です。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の詳細データは毎年3月下旬に公開されるため、このタイミングで最新値を取り込み、年度更新ごとに比較・分析する体制を整備することを推奨します。
まとめ
2024年度の賞与支給月数と直近1年の変動を分析した結果、建設業・運輸業・郵便業が賃上げと賞与増加の両面で顕著に伸長する一方、製造業や宿泊業・飲食サービス業では減少していることが確認されました。このように定量データを基に自社の状況を客観的に検証することで、必要に応じて制度の見直しを図り、採用競争力や従業員満足度の向上に繋げていきましょう。