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HR DATA

定年再雇用実態
~定年年齢や賃金カーブの実態~

 2021年から改正高年齢者雇用安定法が施行され、働く意欲がある高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、70歳までの就業機会確保が努力義務になりました。2013年より、65歳までの雇用確保は義務化されており、制度の内訳をみると「継続雇用制度」が76%、「定年制廃止」「定年延長」が24%となっています。70歳まで働ける制度のある企業は全体の3割あり、「定年延長」には慎重な姿勢がみられるものの、企業にとって必要な人材は何らかの制度で雇用していることが分かります。

図表1:65歳以上まで働ける制度のある企業の状況

出典:厚生労働省厚生労働省 令和2年「高齢者の雇用状況」集計結果
注1) 集計対象企業は、全国の常時雇用する労働者が31人以上の企業 164,151社
注2) 「その他の制度で雇用」とは、企業の実情に応じて何らかの仕組みで働くことができる制度を導入している場合を指す

 
 さて今後、定年年齢が65歳に引き上げられるのかどうかは注目される点です。過去を振り返ると1960~70年代には55歳定年が主流でしたが、1986年に制定された高年齢者雇用安定法により60歳定年が努力義務となり、1998年に60歳定年が義務化されました。そして、2000年には65歳までの雇用機会確保が努力義務となり、2004年に義務化、2013年に希望者全員が対象とされ、2025年には経過措置が終了し希望者全員が65歳まで働けるようになります。
60歳定年、65歳までの雇用確保制度の義務化と法改正の動きは加速していますが、各企業における65歳までの定年引上げの動きは、前回の60歳定年制定時と比べて極めて緩やかです。

図表2:企業による定年年齢の推移

出典:厚生労働省「雇用管理調査」(2004年以前)、「就労条件総合調査」(2005年~2017年)、「高齢者の雇用状況」(2018年~2020年)
注1)一律定年制を定めている企業の定年年齢別企業数割合の推移 (一律定年制を定めている企業=100)
注2)年齢59歳以下は、2004年まで集計

注3)年齢60歳、61~64歳は、2017年まで集計
注4)定年制廃止企業は含んでいない

 また、定年再雇用者の賃金の取り扱いについても議論があります。図表3は、データが集計できる1999年以降の所定内賃金の賃金カーブを示しています。データの前半期(薄い色の線)では、若年期には賃金が低く30~40代前半で賃金が大幅にあがり、50~54歳でピークを迎える賃金カーブを描いていますが、近年(濃い色の線)になるにつれて、若年期の賃金が引きあがり、中高年期の賃金カーブが抑えられています。また、ごく僅かながら、賃金カーブのピークが55~59歳に移行している傾向がみられ、賃金カーブの傾きが調整され、長く緩やかな賃金カーブに変化しています。

図表3:賃金カーブの推移

出典:厚生労働省 賃金構造基本統計調査 産業計(企業規模10人以上)
注1)年齢階層別の所定内賃金をグラフ化
注2)2007年以前は、「70歳~」データが集計されていない

 高年齢者雇用の課題は、賃金の低下に起因する就業意欲の低下、職務配分、職務能力の維持・向上、人件費の増加、健康面への配慮など、さまざま取り上げられています。これらは、職場でのボリュームゾーンであるバブル入社世代、第二次ベビーブーム世代の中高年齢層に限った課題ではなく、次の世代が65歳、70歳になった時に、同じ課題を生じさせないよう会社全体の人事課題として捉えるべきです。そして社員一人ひとりが生き生きと働き、組織としての競争力や生産性の向上につながる取り組みを目指すことが必要です。
働く個人にとっては、企業から必要とされ続けられるよう職務能力を研鑽し、自身の人生設計に基づいてリタイアする時期を選ぶといった意識改革が必要になってきます。一方、企業には、職務や貢献に応じた処遇を実現する人事運用がきちんとなされること、仕事内容や環境の変化が激しい中、計画的な人材育成や職務能力向上のサポートを行うことが求められます。

以上