投稿日:2023.06.26 最終更新日:2024.04.04
第一次産業労働力の特徴
~危機的状況に打開策はあるか~
戦後経済の成長は産業構造の変化に伴いながら進展し、第一次産業から第二次産業、第三次産業へとシフトしていきましたが、それは就業者構成にも影響を及ぼしました。
戦後まもなくは第一次産業の就業者数が最も多く、高度経済成長を通じて、第一次産業はその割合を大きく低下させ、1960年を過ぎたころから第二次産業、第三次産業が逆転しています。1954年(昭和29年)に「神武景気」と呼ばれた好景気を皮切りに、日本の戦後高度経済成長が始まり、「岩戸景気」、池田内閣による「国民所得倍増計画」、1964年の東京オリンピック、1970年の大阪万博と、日本の経済成長は目覚ましく、特に第二次産業の重化学工業による生産性の向上によりGDP世界第二位にまでなったという時代です。
その後、第二次産業の就業者数は低下していきますが、第三次産業の就業者数は伸び続けています。
農林水産業中心の構造から、製造業の拡大、そしてサービス業の拡大へと繋がり、産業構造の変化に応じて就業者構造が変化していったのです。
出典:総務省「労働力調査」
第一次産業の現状を見ると、就業者は非常に高齢であるということがわかります。
60歳以上の割合は農業、林業においては64%、漁業においては47%です。次世代の担い手が減る中で、今後、高齢の農業者、漁業者のリタイアが増加することが見込まれ、日本の第一次産業は非常に深刻な状況にあると言えます。
日本の食料自給率は過去最低レベルとなっており、輸入に頼らざるを得ない状況では今後の気候変動や食料危機、円安の影響などによって輸入ができなくなる食料がでてくる可能性もあります。
就業者を増やす努力と、企業が第一次産業に参入するなど多方面からの対策が必要であると言われています。
出典: 令和2年国勢調査 就業状態等基本集計
この10年の農業経営体数の推移を見ると、個人経営体は、平成22年を100とすると令和2年には63まで減少し、農家の減少が進行していることがわかります。これは、就業者の高齢化と、後継者がいない問題が直結した結果です。しかし、法人経営体を見ると、平成22年を100とすると、令和2年は136と増加しており、企業の農業への参入が増えています。平成21年の農地法改正に伴い、企業が参入しやすくなったことで、農地法改正後のリース方式での参入が5倍にまでなりました。個人経営体の減少が止められない中で、企業の参入に大きな期待が寄せられています。
出典: 2020農林業センサス
「推移」は平成22年を100としたときの指数
就業者の高齢化、そして後継者もいない中で、日本の第一次産業は危機的状況にあります。産業を守っていくには企業の参入が不可欠なのではないでしょうか。第一次産業を救う社会貢献活動の意味でも、既存企業が参入し、組織的に取組みをしていくことで、産業を守りに行くことが必要であると考えます。そして近年はAI、ICT、ロボット、ドローンといった最先端技術の活用も不可欠とされています。技術を持った企業が参入し、人手の不足解消、生産性向上のために研究が進んでいますが、さらなる推進が期待されます。
社会全体がこの危機を認識して産業を守っていかなければならないという改革が必要と言えます。
以上