なぜ物流業界は人手不足でも回っているのか― 高齢化とDXが進む現場の実態 ― |HRデータ解説|㈱トランストラクチャ

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HR DATA

なぜ物流業界は人手不足でも回っているのか
― 高齢化とDXが進む現場の実態 ―

要点サマリ

  • 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」をもとに、業界別従業員平均年齢を確認します。また、国土交通省「宅配便・メール便取扱実績について」、財務省「法人企業統計調査」をもとに、平均年齢が最も高い運輸・郵送業の業界状況について解説します。
  • 業界全体の従業員平均年齢は10年前と比べ上昇しており、特に運輸・郵送業は48.1歳と高齢化が最も進んでいます。
  • 一方で、運輸・郵送業は直近20年間で物流量は増加し成長が続く業界であること、労働装備率の上昇から設備投資・省人化・DXが進展していることがうかがえます。
  • 成長が続く業界では、将来を見据えた人材の確保・活用・高度化を一体で捉え、中長期的な人材施策を検討していくことが重要となります。

本稿では、生産性指標の解釈における留意点を具体例で示すため、運輸・郵送業を取り上げます。
同業種は労働集約的な性格を持ち、人員規模や労働時間の変化が指標に反映されやすいため、分母要因を踏まえた読み解きの論点が現れやすいと考えられます。

データ解説1:業界別平均年齢の状況

【図表1:業界別平均年齢の状況】

HRデータ解説「運輸・郵送業界の平均年齢」スライド2

出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」に基づき作成(2014年・2024年調査、2015年・2025年公開)。民営事業所/男女計・学歴計/企業規模計(10人以上)を集計。

2024年の産業計の平均年齢は44.1歳となり、2014年と比較して2歳上がっています。全業界で10年前と比べて平均年齢は上がっていますが、特に運輸・郵送業は48.1歳と最も高齢化が進んでいることがわかります。少子高齢化の進行や高齢者の雇用確保措置等の政策により、企業の平均年齢は今後さらに上昇することが予想されます。また、10~15年後にはボリュームゾーンが定年退職を迎え、人手不足がより深刻になることも考えられます。

データ解説2:直近20年間の宅配便取扱個数の推移と運輸・郵送業の労働装備率推移

【図表2:直近20年間の宅配便取扱個数の推移と運輸・郵送業の労働装備率推移】
HRデータ解説「運輸・郵送業界の平均年齢」スライド2

出典:国土交通省「宅配便・メール便取扱実績について」に基づき、TSにて加工。
財務省「法人企業統計調査」(2024年調査、2025年公開。金融業、保険業以外の業種(原数値)・全規模を使用)
※宅配便取扱個数は宅配便+メール便の合計個数。運輸・郵送業全体を完全に代表する指標ではないが、業界における物流量の変化を示す一つの指標として用いる。
※労働装備率は2005年を起点とした増減率を表示。

次に最も高齢化が進んでいる運輸・郵送業の業界状況を確認します。業界規模を見る一つの指標として、宅配便取扱個数の過去20年間の推移を見ると、インターネット通販の拡大も寄与し、宅配便合計量は年々増えています。特に2020年以降の増加は顕著であり、成長・拡大している業界と見ることができます。
さらに、設備投資に関する指標である労働装備率の推移を確認します。2005年を起点とすると、東日本大震災の影響で2011年~2012年に落ち込みは見られますが、それ以降は上昇傾向にあり、全産業の労働装備率と比べても高い水準となっています。特に2024年は「物流の2024年問題」への対応のため、急激に設備・仕組みへの投資が進んだことが考えられます。これらのデータから、運輸・郵送業は高齢化が進む一方で、需要拡大と構造転換を同時に進める「変化の途上にある成長産業」と位置づけることができます。

人事施策への活用例

運輸・郵送業では、業界としての成長が見込まれる一方で、高齢化と人手不足の人材課題が顕在化しています。今後の人事施策は、目先の人手不足解消にとどまらず、人が増えにくく高齢化が進む状況を前提としながら、業界を支える人材を輩出することが重要です。こうした考え方のもと、「人材を確保し、活かし、将来につなげる」という観点から人事施策を整理すると、以下の通りです。
① 人材の確保(採用)
給与や労働条件の魅力付けに加え、生活インフラを支える社会的意義や業界の成長性等の会社・業界魅力にも訴求し、選ばれる企業を目指す。
② 人材の活用(高齢者活用)
高齢者の役割再設計により労働力の確保と技能・ノウハウ継承につなげる。健康管理・安全配慮措置により、高齢者が働きやすい環境を整備する。
③ 人材の高度化(変革人材の輩出)
業界・会社の変革を推進するマネジメント人材やイノベーティブ人材の育成により、持続的成長を支えるための仕組みづくりを行う。

まとめ

本稿では、従業員平均年齢のデータから特に運輸・郵送業にフォーカスし、高齢化が進む一方で、物流量の増加や設備投資の拡大といった動きが見られる中で、業界が成長と変化の途上にあることを示しました。今後は、人材の確保・活用・高度化を一体で捉えた人事施策が重要となり、こうした視点は他の業界にも共通する内容となります。

以上