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社宅制度の現状
~物価差補填システムとしての意味合い~

 「社宅制度」とは、会社が社員の住居を提供する制度です。また、社宅には大きく分けて2種類あります。1つは「借り上げ社宅」で、会社がマンションやアパートなどの賃貸物件を会社名義で借り上げている社宅です。2つ目は「社有社宅」で、会社がマンションやアパートを1棟単位などで購入し、会社の資産として保有している社宅です。

 社宅制度の主なメリットとして、例えば転勤する社員にとっては物件探しの手間が削減されて比較的な安価な家賃で入居できるので、スムーズな転勤がしやすくなることです。そして会社としては、例えば社員に対して住居の保証があるので転勤やそれに伴う異動を実施しやすくなります。

 ところが社宅制度は減少傾向にあります。

図表1:社宅・寮の保有状況の推移

出典:労政時報 第3911号 参考1「人事労務諸制度実施状況調査」に見る社宅・寮の保有状況推移     
注1)本調査は2013年の調査
注2)調査対象:全国証券市場の上場企業(新興市場の上場企業も含む)3432社と上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上)304社の合計3736社。
注3)調査時期2013年1月7日~3月11日

 社有社宅の保有企業数の減少が特に顕著です。社有社宅を保有する企業は90年代は6割を超えていましたが、2000年を境に減少し続け2013年時点では半減しています。社有社宅を保有することで、不動産資産なので固定資産税などの税負担が発生すること、そして老朽化対策のための修繕費や建て替え費といった維持管理費用がかかることなどが減少を加速させている要因です。

 一方で借り上げ社宅は、社有社宅ほどの大幅な減少傾向を示していません。借り上げ社宅は、会社にとっては固定資産税や修繕費の要素が無いため、比較的社有社宅より維持管理費用が安価です。借り上げ社宅制度はむしろ近年若干増えています。

 社宅制度は転勤や異動に伴う社員の居住地の物価差を補填し、実質賃金の平等性を担保することができるメリットがあります。

 物価を考慮した賃金を実質賃金と言います。例えば、物価が低い地域から高い地域へ転勤した際、転勤後も同じ給与である場合は実質的に給与減額になってしまい、社員間の「実質賃金」の平等性が担保されていません。これは「住居」においても同様のことが言えます。

 図表2は、2021年度の「消費者物価地域差指数」における、「住居」に関する地域別の物価水準です。消費者物価地域差指数とは、「全国平均を基準(=100)とした場合に、各地域の物価水準を表した指数」です。物価水準が高い東京都と低い香川県を比較すると、「住居」費目に極めて大きな差があります。

図表2:2021年消費者物価差指数の「住居」費目

出典:総務省「消費者物価地域差指数」-小売物価統計調査(構造編)2021年(令和3年)結果-   
10大費目別消費者物価地域差指数(都道府県)
注)「住居」費目を抜粋している。(住居の指数値が最も高い東京都と、最も低い香川県を抜粋)

 東京をはじめとする都市部への一極集中が再び加速しています。総務省「住民基本台帳人口移動報告」によると、東京都の転入超過数は2022年が始まってから増加傾向にあり、現状、新型コロナウイルス禍前の水準に戻りつつあります。特に東京23区の都心の物件は常に需要が高く、今後も家賃などが上昇していく可能性が高いです。そういった都心部への転勤を伴う異動が発生する場合は、物価差を補填するために社宅制度を整えることが社員にとっては望ましいです。

 社宅制度の導入・継続・廃止を検討する際、「社員の実質賃金の平等性が担保されているのか」という観点を持ち合わせることが大事です。また、都市部への一極集中が加速しつつある現状を踏まえると、都市部と地方の物価差がより広がりますので制度の定期的に見直すことを忘れてはなりません。

以上