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HR DATA

副業は増えているのか?
~「多様で柔軟な働き方」の幻想~

 近年、「副業」というワードをよく耳にするようになりました。2018年に厚生労働省作成のモデル就業規則から「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という副業を禁止する文言が削除されるなど、従来の働き方からの変革が求められています。企業は、従来の働き方や就業管理と真剣に向き合わなければなりません。

 日本における副業者数は徐々に増加傾向にあるものの、雇用者全体に占める割合は低く、副業という働き方はまだ一般的ではありません。副業者が増加傾向にある背景の一つには、一つの会社で定年まで勤めあげるという会社中心の考え方から、各自のライフスタイルやキャリアプランに合わせて柔軟に働き方を選択する労働者中心の考え方にシフトしていることが挙げられます。しかし、人数は増えているものの、2017年度における雇用者に占める副業者の割合は2.2%と、まだ副業は浸透していないことが分かります。

図表1:雇用者に占める副業者数

出典:総務省統計局「昭和62年~平成29年 就業構造基本調査」を加工して作成
注1)本グラフにおける副業者は、本業・副業どちらも雇用者として従事している者を指し、自営業者もしくは家族従業者として従事する者は含まない。
注2)雇用者には「会社などの役員」である者を含む。

なお、コロナウイルス感染症拡大後に新たに副業を始めた人の割合は2.6%(※注・※注2)と、短期的には増加していますが、長期的な観点からはコロナウイルス感染症をきっかけに副業が広まっているとは言い難い状況です。

 そして、所得階層別の副業率には、極めて大きな特徴があります。所得階層別に3区分すると、高い層(1,000万円以上)と低い層(199万円以下)の副業率は高いのです。高い層は、高度な専門技術やスキルを有しており、労働市場で人材不足となっている層であることから、スキルを活かす場が多いことが挙げられます。また、低い層は、非正規社員の占める割合も多く、より収入を得るために複数の仕事を掛け持ちされています。その結果、他の所得階層よりも高い数値となっています。
 一方、ボリュームゾーンとなる中間層(200~999万円)の副業率は低く、特に400~599万円において2.1%と低い結果となっています。日本において副業を推進していくには、このボリュームゾーンの人々の副業率をいかに上げることができるかが重要なポイントとなります。

図2:所得階層別の副業者数

出典:総務省統計局「平成29年 就業構造基本調査」を加工して作成
注)本グラフにおける副業者は、本業で雇用者として従事している者を指し、自営業者もしくは家族従業者として従事する者は含まない。
注2)雇用者には「会社などの役員」である者を含む。

 ボリュームゾーンとなる中間層の副業率が低い理由の一つとして、企業の副業に対する制度の整備が進んでおらず、対応が遅れていることが挙げられます。「平成26年度 兼業・副業に係る取り組み実態調査事業 報告書」(中小企業庁委託事業)では、「副業を推進している」と回答した企業は0%、「推進していないが容認している」と回答した企業は14.7%のみという結果でした。また、2021年に行われた「第4回 コロナウイルス感染症影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(内閣府)では、「副業が許容されている」と回答した就業者は26.7%のみであり、過半数以上の企業において副業制度が整備されていない、もしくは従業員へ制度が浸透しておりませんでした。

 副業の対応を進めるにあたり、企業は労働日数や労働時間に柔軟性を持たせるなど、フルタイム雇用に頼る従来の就業管理方法からの脱却が求められています。また、企業側が制度を整えるだけではなく、労働者側も柔軟な働き方に対応できるよう意識改革をしなければなりません。時代に即した就業管理へアップデートできているか、そして、従業員が柔軟な働き方を受け入れることかできるのか、経営方針や事業内容と照らし合わせながら、今一度見直す必要があります。
以上

※注)出典:内閣府「第2回 コロナウイルス感染症影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」
※注2)本業・副業ともに雇用者以外の者も含む。