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吉岡 宏敏

YOSHIOKA HIROTOSHI

シニアパートナー

PROFILE

東京教育大学理学部応用物理学科卒業。
ベンチャー企業経営、ウィルソンラーニング・ワールドワイド株式会社コーポレイト・コミュニケーション事業部長等を経験後、株式会社ライトマネジメントジャパンに入社。
人材フローマネジメントとキャリアマネジメントの観点から、日本企業の組織人材開発施策の企画・実行支援に数多く携わる。ライトマネジメントジャパン代表取締役社長を経て、現職。 

開かれた場としての企業を
ともに創りたい

企業や組織の意味合いは、ずいぶんと変わりました。
企業は、単に営利装置として継続的に在り続けるだけではなく、すでに、規模的にも影響的にも「社会構成単位」です。働く人々にとっては、組織が、単に仕事に就いて報酬を得る場だけではない、自身の可能性と想いを拓く「機会開発環境」でなければ参加したいとは思いません。

そうした、「社会に開かれ人々が交通する場」としての企業、その経営に資する人事施策をともに創っていきたいと思います。

書籍

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  • 『職はインターネットにあり』
    NTT出版 (1996.6)
  • 『ソシアル・リプレイスメント仮説』
    ユー・ピー・ユー

執筆コラム

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営業は経営を語れ | 人材開発

営業は経営を語れ

 営業教育で取り沙汰されるデキる営業の勘所のひとつに、「誰に会うのか」があげられる。B to B営業であれば、意思決定権限のない担当者ではなく、部長に会う、さらには役員に会うべきなのは、いかにも当たり前のことだ。かくて、「誰がキーマンかをどう見極めるか」といったワザが、営業力向上セミナーでたいそうなノウハウのごとく語られたりする。  「キーマンを見極めるとか、キーマンにどうたどり着くかとか、考えたこともない。だって、自然にそういう立場の人が出てくるんだから」と語るのは、あるIT企業のトップ営業・Aさんだ。彼が、担当者と商談をしていると、しぜんと上席の人が出てくるようになる、というのだ。「ぜひ、部長様にもご挨拶させていただきたく」などとAさんは、言ったこともない。頼むまでもなく、勝手にエラい人が登場してくる。  なぜか。Aさんが経営の話をしているからである。経営視点で顧客企業の状況や課題、それに資するソリューションを話題にしていると、担当者が自分では力不足と思い、上席を引っ張り出してくる。商談は「サービス起点ではなく顧客の課題起点で行う」は、営業のキホンのキではあるが、その課題設定の視座が担当者の域をこえているがゆえの成り行きだろう。  これぞ営業力、とうなずける。よくある営業スキル研修―相手のタイプを見極めて、この客には結論から言う、この客にはデータを提示する、この客には野球の話題から始めるといったコミュニケーション手法などは、いかにも芯を食っていない。B to B営業においては、信頼される言動といった表層ではなく、話す内容と視座こそが眼目という当たり前の事情をAさんは体現している。  では、営業に経営を語らせるにはどうするか。経営リテラシーを学ばせて、自分の顧客の経営課題を分析・仮説し、そのソリューションとして自社サービスの意味づけを行う、というのが正攻法で実践的だろうが、その即効あるスキル研修は作りづらいし、各営業員の経験や能力にも依存する。一つの方法は、選抜型の経営人材育成の施策枠組みに、営業力向上の目論見を重ねることである。  次期経営人材育成は、二つの対象層で行われる。一つは、現管理職対象。とくに上級管理職を対象にする場合はより明確だが、役員育成を目的にする。もう一つは、管理職前の中堅社員対象。「NEXTリーダー育成」といった名称が多い、優秀人材に対する先行的な経営人材育成である。つまり役員候補の候補づくり。ただ、こちらは「先行」だから学んだ経営リテラシーを発揮する場面が今はないというネックがある。  ある会社の「NEXTリーダー育成」研修(6カ月間全7回)では、研修のゴールを「お客様と経営を語り合える」人材づくり、とした。経営リテラシーを学び、通常は自社や自部門の課題と課題解決策を立案・提案するのが、この手の研修の常套的プログラムだが、この会社では、自社の顧客の経営課題を検討し、顧客の立場でマーケティング分析を行い、課題設定し、そこに対して我々はなにができるかをアウトプットさせたのだった。  つまり、まずは顧客と経営の話ができる事業リーダーを目指せ、その先に自社の経営リーダーがあるという道筋。自社と異なり、顧客はさまざまな産業に属し、また社会的影響の受け方もそれぞれ違う。顧客の経営を考えることは、必然的に視野を広げ視座を高め、多様な社会的問題意識を喚起させる。経営のリテラシーという方法論の学習よりも、このことこそがこの研修施策の最大の効用だった。  「経営を語る営業」になにより必須なのは、顧客の立場にたてる視界と社会的問題意識である。「ウチの経営陣が見ているのと同じ風景をみているみたいだな、Aさんは」と感じたから、その担当者は上司につないでいるのだろうから。  

なんのためのエンゲージか | 調査・診断

なんのためのエンゲージか

  20年以上前、多国籍企業で働くようになって、エンゲージメントという言葉を知った。毎年、エンゲージメントサーベイの結果が国別にフィードバックされ、自国の数字改善に向けた行動の報告・共有・実践を強いられるという行事には辟易しつつも、多国籍の経営を統制する単純でオペレーショナルな手法にはなるほどと感服。各国従業員の「心情」の定量把握として、社員満足度とかモチベーションではなく、あくまでも組織成果に結果する(といわれる)エンゲージメントレベルを測るという点も、さすが業績指向のスタンスとして新鮮に感じた記憶がある。    当時、我々が受けていたサーベイでは、エンゲージメントレベルは以下の4つの総合設問で測られていた。 ・I speak highly of my organization's brand and services. ・I would recommend my organization as a great place to work. ・I feel motivated in my current job. ・Overall I am satisfied with my current job.    それに対する相関性を診るための設問群が、Global & Local Sr. Leadership 、Recognition & Reward、Culture、Work Environment、Immediate Manager といったカテゴリーで用意されていた。5,6年前から、日本でもエンゲージメントの大事さが喧伝されるようになって、そのサーベイもさまざまに提供されているが、だいたい構造はこの頃のものと変わらない。何がエンゲージメントを高めるかについても、ドライバーはすでに明らかになっている。その具体表現は論者や研究者、サーベイ会社によって異なるものの、結局のところ、従業員がいだく3つの「実感」に集約できる。   有意義感 貢献実感 成長実感    ひらたくいえば、 ①目の前の仕事の意義(会社にとっての/社会にとっての/自分のキャリアにとっての)がわかっていて ②承認や報奨で自身のなしえたことの価値が確認でき、③仕事を通じての成長が実感できている、ということである。ゆえに、これら実感を喚起できれば、エンゲージメントは高まる。    さて、冒頭「組織成果に結果する(といわれる)エンゲージメントレベル」と書いた。人々が、エンゲージされて働くことで、高い意欲と主体性をもって目の前の業務に臨み、パフォーマンスを上げ、組織の生産性向上に資する、とされる。ひいては、企業価値(=経済価値)向上につながるゆえに、今年始まった人的資本情報開示でも、KPIの一つとしてエンゲージメントレベルを記載する会社は多い。    要は、「皆が自ら頑張って働き成果あげてくれる」から、いうことだが、その限りではエンゲージメントの効用としてずいぶんと矮小なのではないか。たとえば、中国語で「頑張れ」を「加油」というがごとく、良い燃料を入れることで機械を最大稼働するかのような印象だ。機械ならぬヒトが働くとは、決められた業務を遂行するのではなく、やるべき業務を考えだす=業務創造にこそ本領がある。そうした、人が「考え、創り出す」行動こそをドライブするのがエンゲージメントだ、と考えたほうが腑に落ちるし、元気がでる。    実際、組織論や人材マネジメント論の領域では、エンゲージメントの向上が創造性発揮に直結する原理はあきらかにされていないものの、エンゲージメントが創造性発揮に寄与する可能性が、多くの研究者に指摘されている。また、エンゲージメントの語源、仏語の「アンガーシュマン」は、サルトルの自由と創造に関わる言及によってよく知られている。サルトルは、アンガージュマンを通じて、人間は自由を行使し新しい価値や意味を生み出し、社会を変革していくべきだと主張した。ここでは、自由な意思をもつ人々を創造へむけ駆動する鍵としてアンガージュマン=エンゲージメントが語られていたように見える。    資本主義社会の発展とは、差異の創出(=イノベーション)により駆動されるものとシュンペーターは言ったが、企業において差異を生み出すのは、モノでもカネでもなくヒトという資源。ヒトが差異を創出するための、つまり人々が創造性を発揮するための鍵がエンゲージメントとしたほうがダイナミックだし、それこそが人的資本経営のKPIにふさわしい。    エンゲージメントが従業員の創造性を喚起するものだとすると、先の3つの実感のなかで、「有意義感」こそが、もっとも重要になるはずである。発達心理学でいう「人は目標の意味に共感し意欲を持つとき最大に能力を発揮する」からだし、そもそも創造という行為は、役割とか任務といった受け身でできることではなく、「みずから成したいと思う目的への没頭」がなければ始まらないからだ。    やるべきことの意義を自分事として確信することが、創造性発揮にむけ人々をエンゲージする。であれば、イノベーションのためには、会社の目的、事業の哲学、仕事の意味を、人々を触発し得るものとして提示できるか否かが、まず問われてくるだろう。エンゲージメントサーベイは、その検証の第一歩なのである。    

「人が集まる企業」のKPI | 調査・診断

「人が集まる企業」のKPI

 人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方、とされる。  人的資本経営の情報開示が求められるのは、投資家がそうした非財務的情報も考慮して投資判断をするためであり、それが株価に影響するため各社本腰をいれて情報開示の巧拙を競わなければならなくなった。しかし、人事施策と株価変動の関係については、せいぜい人員削減施策の影響がプラスに出たりマイナスに出たりといった事例があるくらいで、調査も分析もされていない。よって「金融商品としての自社」に最適な開示情報の選定ははなはだ難しい。  ゆえにそこはいったんおいて、では、そもそもわが社の企業価値向上につながる人的資本経営とはなにか、と考えたのが、情報開示に臨んだ各社に共通するスタンスだったろう。しかし、何が企業価値を高めるかについても普遍的な答えはない。例えば、エンゲージメントレベルをあげることが生産性向上につながる、ダイバーシティ&インクルージョンがイノベーションの苗床になる、従業員が幸福であれば(Well-being)結果的に企業は成長する・・・、といったよく言われるコトワリを自社にあてはめても、そうした人事施策が自社の企業価値向上につながる保証はない。    で結局のところ、多くの企業は国から例示された定型一般的な指標情報の開示に留まるといった横並び姿勢を見せたのが、情報開示初年度の状況だった。女性管理職比率〇〇%、目標○○%といった当たり障りのない指標開示には、独自の指標はほとんど見当たらないし、その会社ならではの人的資本経営の思想は伝わってこない。  企業価値向上うんぬん以前に、なにより「優秀な人材の確保」がなければ始まらないのだから、開示すべき情報は、求める人材像が明快で、働く場として魅力的かどうか、つまりその情報を見た人が働きたいと思うかどうかの観点でまず検討すべきではなかったか。開示情報=新卒採用広報の際に提示する情報だと考えれば、人材獲得競争のなかで差別性の高いメッセージたりえているかが問われるから、横並びなどもってのほかで、独自性の高い情報開示に腐心しなければならなかったはずである。  新卒採用広報における企業PRとは、製品やサービスのPRのように「企業の現状」を魅力的な効用として見せることではない。入社した自身の将来の姿がイメージできるような「企業の未来」を確かなものとして提示することである。確かさを保証するものは、組織と人材に関する明確な経営意思(=方針)と実現のリアリティ。人的資本経営としてその会社は何を目指すか、つまり入社する自分たちがどのような人材を目指しどのような場に身を置くか、そのリアリティを裏付ける重要なファクターこそが、開示情報に示される固有の指標、その現状の達成度合いと目標に向けたマイルストーンである。  とすれば、人的資本経営とはまず、「人が集まる企業」としての自社のアイデンティティを問い直し、追究し、形づけることから始まるのではないか。人的「資源」を「資本」と言い換えても、企業都合で人々の能力を高め、十全に使用/活用し、企業価値(¬つまり経済価値)を向上させるという構図に変わりはない。それだけではない、人々が交通し、成長し、機会開発する「場」としての企業の価値向上に目を向けることからも、各社各様の人的資本経営の指標はさまざまにありうるはずである。