投稿日:2026.01.23 最終更新日:2026.01.23
OECD失業率から考える日本の課題と改善策
~低失業率という「強み」を競争力へ~
要点サマリ
- OECD加盟国の失業率は、2020年のコロナ禍をピークとして、多くの国で低下基調に転じている
- 欧米主要国では2022年以降、景気回復と労働需給の引き締まりを背景に、歴史的に見ても低水準の失業率が続いている
- スペインやイタリアなど一部の国では依然として相対的に高い水準にあるものの、改善傾向が明確に確認できる
- 日本の失業率は全期間を通じて低位で安定しており、国際比較の中でも特異な水準にある
- こうした低失業率は、日本の雇用の安定性を示す一方で、人材の流動性が限定的である可能性も示唆している
データ解説
OECDが提供する「Unemployment Rate」失業率は労働力人口に対して失業者数で割った指標で、雇用慣行や政策、景気変動の影響を反映する点が特徴である。
グラフは、OECD加盟国における2020年から2024年までの失業率推移を示している。2020年は新型コロナウイルスの影響により、多くの国で失業率が上昇したが、2021年以降は経済再開と財政・雇用政策の効果により改善が進んだ。特に米国、韓国、ドイツなどでは歴史的に見ても低い失業率水準が続いている。
一方、スペインやイタリアは依然として高水準ではあるものの、着実な低下傾向が確認できる。日本は全期間を通じて2〜3%台と低位で安定しており、雇用の維持力の強さが際立つ結果となっている。
【図表1:OECD加盟国失業率の推移】

出典:OECD Data Explorer(OECDオンライン統計データベース)
https://data-explorer.oecd.org/
対象:OECD加盟国中心
指標:“Unemployment Rate” =「失業率(%)」=「失業者数」÷「労働力人口」×100
日本の人事上の課題と提言
日本の失業率がOECD諸国の中でも低水準で推移してきた背景には、少子高齢化による労働供給の減少といった人口構造要因に加え、解雇規制の運用や長期雇用を前提とした人事慣行など、複数の構造要因が重なっている。企業は景気後退局面においても解雇を極力回避し、配置転換や残業時間の調整といった社内的な対応によって雇用を維持してきた。こうした雇用維持の姿勢は、従業員の安心感や組織への帰属意識を高め、長期的な人材育成や技能蓄積を可能にしてきた点で、日本企業の競争力を支えてきた側面がある。
一方で、この雇用構造は、労働市場全体で見ると人材の移動を緩やかにし、成長分野や新たな職務への人材シフトを時間的に遅らせる要因ともなっている。その結果、失業率は低水準であるにもかかわらず、企業間・職種間での需給調整が進みにくく、多くの企業が採用難を感じやすい状況が生じている。特にデジタル領域や専門性の高い分野では、必要なスキルを持つ人材が市場に十分に供給されず、慢性的な不足感が生まれやすい。
こうした課題を企業側から見ると、従来の評価・処遇制度が、職務やスキルそのものよりも年功や社内経験を重視して設計されてきた点も無関係ではない。この結果、社内にどのようなスキルや経験が蓄積されているのかを、経営視点で把握・活用することが難しくなり、社外から人材を採用する際にも、必要な人材像や処遇水準を明確に定義しにくい状況が生じてきた。
今後の人事戦略において重要なのは、従来の雇用安定や長期育成の考え方を否定することではなく、それらを前提とした上で、職務とスキルをより意識した人材マネジメントへと段階的に進化させていくことである。具体的には、主要な職務や役割について求められるスキルを整理し、社内人材の育成・配置・登用と、社外からの採用の双方に活用できる共通言語を整備することが求められる。
あわせて、人材の循環についても「流動性を高めること」自体を目的化するのではなく、事業戦略に照らして必要な分野に人材が適切に移動・成長できる状態を目指す視点が重要となる。リスキリング支援や社内公募制度の高度化は、そのための手段として位置づけられるべきである。
OECD各国で失業率が改善する中、日本が低失業率を維持していることは引き続き強みである。その強みを生かしつつ、社内に滞留しがちな人材やスキルを成長分野へとつなぎ、生産性や競争力の向上に転換できるかどうかが、今後の日本企業における人事戦略の重要な分岐点となっている。
以上