OECD男女賃金格差から考える課題と改善策 ~格差是正は人的資本経営のアジェンダ~ |HRデータ解説|㈱トランストラクチャ

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HR DATA

OECD男女賃金格差から考える課題と改善策
~格差是正は人的資本経営のアジェンダ~

要点サマリ

  • 日本の男女賃金格差は改善傾向にあるが、2024年時点で約22%とOECD平均(約11%)を大きく上回る。
  • 本指標は職種や勤続年数を統制しないunadjusted gapであり、日本の雇用慣行・昇進構造・就業継続率を含む「構造差」を反映している。
  • 格差の主因は、長時間労働前提の評価制度、年功的昇進、総合職中心モデル、管理職層の男女偏在にある。
  • 現在、男女賃金差異は法定開示項目であり、すでに「社会課題」ではなく「経営指標」である。
  • 格差是正はDE&I施策ではなく、人材ポートフォリオ最適化による企業価値向上戦略である。

 人的資本開示の制度化により、男女賃金差異は企業評価の対象となった。
• 女性活躍推進法:301人以上企業に男女賃金差異の公表義務
• 育児・介護休業法:男性育休取得率の公表義務
• 有価証券報告書:人的資本情報の記載義務

 つまり、男女賃金格差は任意のCSR論点ではなく、開示対象の経営KPIである。
 本稿では、国際比較データを起点に、日本企業固有の構造課題を明らかにし、経営として取り組むべき論点を提示する。

データ解説:OECD加盟国(一部)男女賃金格差推移

 本指標は、フルタイム賃金労働者の調整前総収入中央値を基に算出した男女差である。2005年に32.8%だった日本の格差は、2024年には約22%まで縮小した。しかしOECD平均の約11%と比べると依然として高水準であり、相対的な遅れは明らかである。
 なお、この数値は職種や役職、勤続年数を統制していない「unadjusted gap」であり、同一労働同一賃金の差を示すものではない。昇進構造や就業継続率を含む労働市場全体の構造差を反映している点が重要である。
 日本では出産・育児期に女性が時短勤務や非正規雇用へ移行しやすく、賃金カーブが分断されやすい。また、管理職層における男性比率の高さが中央値格差を押し上げている。長時間労働を前提とした評価制度や全国転勤を伴う総合職モデルも、構造的要因として作用している。 

【図表:OECD加盟国(一部)男女賃金格差推移】
HRデータ解説_OECD男女賃金格差_20260310の図表

出典:OECD DATE Explorer(OECDオンライン統計データベース)
https://data-explorer.oecd.org/
対象:OECD加盟国中心
指標:男性と女性の中央値収入と男性の中央値収入の差
収入の推定値は一般的にフルタイムの賃金および給与労働者の調整前の総収入

日本の人事上の課題と提言

 現在、301人以上企業には男女賃金差異の公表が義務付けられており、人的資本情報として開示対象となっている。格差はすでに「理念」の問題ではなく、投資家や求職者から評価される経営KPIである。
 格差是正を加速するためには、制度と文化の両面からの改革が不可欠だ。第一に、役割・職務基準への移行と評価の透明化により、「時間投入型」評価から成果基準への転換を進める必要がある。第二に、出産・育児期を経てもキャリアが分断されない設計を行うことが重要である。管理職候補層の早期育成、リスキリング機会の保障、男性育休の実効取得、転勤制度の見直しなどが具体策となる。
 さらに、経営トップ自らが数値目標を掲げ、進捗をモニタリングする体制が不可欠である。格差是正は人事部門の施策ではなく、経営アジェンダとして扱うべきテーマである。

まとめ

 日本の男女賃金格差は改善しているものの、国際水準との差は依然大きい。その背景には、日本型雇用慣行や昇進構造、ライフイベントによるキャリア分断が複合的に存在している。
 人口減少と人材獲得競争が激化するなか、女性人材の活用は倫理的要請ではなく、供給制約への戦略的対応である。男女賃金格差の是正は「平等」の議論にとどまらず、人的資本の最適配分を通じた企業価値向上の取り組みである。経営として主体的に向き合う企業のみが、持続的成長を実現できるだろう。

以上