投稿日:2026.02.18 最終更新日:2026.02.18
労働分配率
~DXと人材投資で紡ぐ“人への還元”の新戦略~
目次
要点サマリ
- 労働分配率は低下傾向にある一方、付加価値や一人当たり人件費は2013年以降上昇している。
- 教育学習支援業は、人依存型から仕組み型へ転換した代表例であり、他産業にも共通する示唆がある。
- 労働分配率の変化は、必ずしも賃金抑制ではなく「事業モデル転換」の結果として捉える必要がある。
序文
昨今賃上げが強調されていますが、企業が生み出した付加価値をどう事業構造に乗せていくか等、配分についての議論は不十分です。労働分配率は、単なる賃金水準の是非ではなく、企業のビジネスモデルや価値創出の在り方を映し出す指標と言えます。2025年7月の本レポートでは、情報通信業と娯楽業を比較分析しました。今回は、全産業の動向を踏まえつつ、ビジネスモデルの転換が著しい教育学習支援業を取り上げ、その変化が示す経営・人事上の論点を整理します。
データ解説1: 初任給の推移
【図表1:全産業の労働分配率・付加価値・一人当たりの人件費の推移】

出所:財務省「2024年 法人企業統計調査」(全規模)より作成
労働分配率=人件費 ÷ 付加価値(営業利益、人件費、不動産賃料、租税公課)
全産業のデータを見ると、労働分配率は低下傾向にある一方、付加価値や一人当たり人件費(名目)は2013年以降上昇しており、企業収益の拡大と賃金改善が進んでいるように見えます。しかし、物価上昇を踏まえると実質賃金の伸びは十分とは言えず、今後は継続的な賃金還元と生産性向上を伴う人材投資を戦略的に進める必要があります。
データ解説2: 教育学習支援業の労働分配率・付加価値・一人当たりの人件費推移
【図表2:教育学習支援業の労働分配率・付加価値・一人当たりの人件費推移】

出所:財務省「2024年 法人企業統計調査」(全規模)より作成
教育・学習支援業は、事業モデルの転換が労働分配率に表れている一例です。教育関連業者の倒産動向は2015年から4年連続して増加しています(※)。経営環境の悪化を背景に、機械化・IT化の進展や、サブスクリプション型サービス・eラーニングといった低単価ビジネスが拡大し、競争の激化とコスト圧力が強まりました。その結果、人材に依存した労働集約型モデルから、コンテンツやシステムを中心としたビジネスモデルへの転換が進み、付加価値構造や人件費の位置づけの変化が労働分配率を抑制する要因の一つになっていると考えられます。
人事施策への提案
事業の在り方が変われば、価値創出の中心となる人材像も変わります。教育産業では、「教える人」に加えて、「教育するシステムを構築する人材」への投資が今後の成長の鍵となります。同様に、多くの産業で業務改革が進む中、短期的な収益を支える人材と、中長期的に事業や付加価値構造を変革する人材の見極めと、戦略的なポートフォリオ設計が重要です。人事部門には、従来の職種・雇用区分に捕らわれず、ポートフォリオと連動した「人への配分方針」が求められます。
まとめ
労働分配率は、単に賃金の多寡を測る指標ではなく、企業がどんな事業構造を選択し、どこに人材とコストを投じているかを映し出す指標です。各企業には事業戦略やビジネスモデルの変化を踏まえ、労働分配率を「戦略と人材投資の結果を読み解く羅針盤」として活用することを推奨します。
以上