新卒初任給の推移(最新)と企業選択理由~人事が押さえたい採用市場の変化と打ち手~ |HRデータ解説|㈱トランストラクチャ

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HR DATA

新卒初任給の推移(最新)と企業選択理由
~人事が押さえたい採用市場の変化と打ち手~

要点サマリ

  • 2025年の初任給は、事務職23万4,000円、技術職23万8,000円と、過去最高水準が続いている
  • 初任給を引き上げた企業は75.5%に達し、賃上げは新卒採用における「前提条件」となりつつある
  • 学生は企業選択において、給与や福利厚生、安定性を重視する傾向が強い
  • 一方で、初任給や安定性の訴求だけでは、企業間の差別化は難しくなっている
  • どのような価値観や志向を持つ学生を採用したいのかを明確にした採用戦略が不可欠である

データ解説1: 初任給の推移

 2025年の初任給は、事務職23万4,000円、技術職23万8,000円と、2024年に続き、過去最高となりました。初任給を増額した企業は75.5%にのぼり、減額した企業は0.1%にとどまっています。この数字から、多くの企業が人材確保を目的に、初任給引き上げへと舵を切っている状況がうかがえます。
 一方で、「物価上昇を踏まえると、実質的にはそれほど高くない」と感じる経営者も少なくありません。しかし、学生が企業を比較する際に見ているのは実質賃金ではなく、あくまで額面水準と他社との相対比較です。初任給はもはや差別化のための武器ではなく、採用市場に参加するための最低条件となりつつあります。

出典:人事院「職種別民間給与実態調査」(2004年~2025年)を元に作成

データ解説2: 入社する企業を選ぶ際に重視するポイント

 日本財団「18歳意識調査」によると、入社する企業を選ぶ際に最も重視されているのは「給与や待遇が優れている(52.6%)」であり、「福利厚生が充実している(35.7%)」がこれに続いています。また、「仕事を通じて実現したいこと」という設問では「経済的安定」が最上位となっており、若年層が将来への不安を強く意識していることが分かります。
 マイナビの調査でも、「安定している会社」「自分のやりたい仕事ができる」「給与の良い会社」が上位に挙がっており、複数の調査結果からも、学生が待遇面や安定性を重視している傾向が確認できます。
 ただし、これらの結果をもって「学生は待遇しか見ていない」と捉えるのは早計です。その背景にあるのは、失敗を避けたいというリスク回避意識です。一定の安心感が得られなければ、その先の仕事内容や成長機会は、比較検討の対象にすらならないのが実態と言えるでしょう。

HRデータ解説「人事が押さえるべき採用市場の変化と打ち手」図表2
HRデータ解説「人事が押さえるべき採用市場の変化と打ち手」図表3

出典:日本財団「18歳意識調査 第68回-就職・仕事観- 報告書」を元に作成

日本の人事上の課題と提言

 これらのデータから、人事が検討すべきポイントは明確です。
 第一に、基本的なことですが、給与や福利厚生、初任給水準については、会社説明会や採用サイトなどで分かりやすく開示する必要があります。情報を十分に示さないことは、かえって学生の不安を高める要因となります。
 第二に、自社が業界内でどのような位置づけにあるのかを把握したうえで、その水準に至った背景や、入社後の昇給・キャリアパスとセットで説明することが重要です。初任給の金額だけを切り取っても、差別化にはつながりません。
 第三に、安定性や待遇面のアピールだけでは、「無難な会社」という印象にとどまりがちです。どのような価値観や志向を持つ学生に来てほしいのかを明確にし、自社ならではの仕事の特徴や成長環境を言語化することが、採用の質を高める鍵となります。

まとめ

 2025年の初任給は過去最高水準となり、学生は給与や待遇、安定性を重視して企業を選択しています。このような環境下では、初任給引き上げは避けられない対応となりましたが、それだけで人材を惹きつけることはできません。
 人事に求められているのは、条件面を整えたうえで、「自社はどのような学生に選ばれるべき企業なのか」を明確にすることです。初任給に振り回されるのではなく、自社の魅力を戦略的に伝える採用設計が、今後ますます重要になります。

以上