TOP > 対談 > 第3回 「ビジネスマンのアンチエイジング」

トランストラクチャのコンサルタントと、人事領域の有識者の方や企業の経営者、人事責任者の方との対談を通して、
企業が直面している各種課題を掘り下げ、原因を探るとともに、課題解決の糸口となるような斬新な提案をしてまいります。

第3回 ビジネスマンのアンチエイジング

65歳以上が人口の10%以上を占める高齢化社会が進んでいる。高齢者に対する人事管理は、高齢者の人事制度とともに健康管理面の重要性も増してきている。今回はアンチエイジングの専門家である東海大学医学部久保教授と人事コンサルティング会社トランストラクチャの林明文社長で、高齢化社会における人事施策について話し合った。

高齢化社会と企業への影響

一昔前のサラリーマンであれば40~50歳は着実に年次を重ね、定年まで勤め勇退という時代でした。現在は65歳までの雇用義務化に伴い、社員の高齢化に対して健康管理の重要性が高まってきています。今後70歳までの雇用延長も想定される時代で、企業が今後成長していくためには、人事管理にも医学的視点が必要になると感じています。
久保
高齢化とともに健康管理は極めて重要です。企業という組織全体に対しての影響という観点と働く個人としての観点があると思いますが、個人の観点で言えば“長寿”がキーワードでしょう。長寿には3種類あります。普通の長寿・健康長寿(介護にならない長寿)・能力長寿の3種類です。このうち、企業の成長に求められるのは、能力長寿ではないでしょうか。能力長寿とは、企業の中で一定の役割を果たすことができる長寿の在り方です。
能力長寿という考え方は面白いですね。例えば第一次産業従事者は、元々高齢者が多く活き活き働くことができています。一方で、能力長寿は中小企業では人材不足の関係で元々働く条件に組み込まれ、大企業でのみ問題となっているように思えます。仮に能力長寿が大企業だけの問題なら、その仕組みを変えることが必要でしょう。またこの問題を議論する上で参考となる諸外国での先進事例はあるでしょうか。
久保
個人的な見解ですが、30年以上臨床に携わってきた中で、この問題は、大企業・中小企業という区別はできないと思います。先進事例としては、北欧では認知症の予防のために早期の介入をしているようです。これは能力長寿を踏まえたアプローチと思います。日本でもある一定の年齢で多くの方が認知症のリスクを検査できる仕組みとアプローチの充実が望まれます。

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今後の人事施策

現状では高齢者の雇用は、長年勤めたことへの温情的意味合いの強い“延長雇用”と考えられ、経営としてあまり重視されていません。しかし、“延長雇用”は“戦略的な雇用”として今後位置付けられることになるでしょう。なぜなら、企業における高齢者の比率の上昇と共に重要性が高まるからです。今後高齢者が企業で主力になっていくためにはスキル・モチベーション・コンディションを整える必要があると言われます。特にコンディションの問題は、医学に大きく関わります。
久保
コンディションを上げるには、健康面への配慮が重要です。最近では特に2つの問題が注目されています。1つは男性の更年期障害です。更年期障害になってしまうと、男性ホルモンの減少が影響し、モチベーションが上がらないという問題が発生します。もう1つは、メンタルヘルス(鬱)の問題です。こちらも企業に与える影響は大きいです。
人事一般の分野では、メンタルケアの体制は10年ほど前に発達したと言われています。事実、簡易的なチェックリストも整備されてはいます。更に最近では、企業責任で健康診断の範囲を見直す動きがあるようにも思います。
久保
メンタルケアは、現状の検査だけでは全く不十分だと思います。簡易的な診断だけでは、メンタルの調子を十分に把握することはできません。実際に適切な治療をし、コンディションを整える必要があります。また高齢化の問題でいえば、例えばロコモティブシンドロームという運動器の障害により日常生活に支障をきたすリスクがあり、アンチエイジングの分野でも注目されています。最近多く発生する問題を見ても、能力長寿を維持するためには健康管理に対する企業の取り組みの議論が必要と感じます。

高齢化社会における組織パフォーマンスの展望

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現在と10年後の企業のパフォーマンスを比較すると、平均年齢が上昇する分10年後は確実に低下するのではないかと思います。仮に現在のパフォーマンスを100とすると、10年後は医学的な見地からどれくらい落ちると予想されるでしょうか。
久保
データの検証がなければ正しいことは言えませんが、少なくとも同じということはないでしょうね。
2~3割程度減少する可能性も否定できません。
3割落ちると経営には大打撃です。経営者が聞くと驚く数値でしょう。今の経営者への警鐘となります。高齢化問題が確実に迫る中、人事制度・雇用も重要ですが、企業にとって健康問題は緊急の課題と言えると思いますが、経営者・人事管理部門の方にメッセージをお願いします。
久保
経営者の方は、まず老化に関するドックを自分で受けてみることをお勧めします。よく「自分の体は、自分が一番よく知っている。」と言われる方がいますが、実際はそうではないことが多いのです。実際に検査してはじめて分かることが多くあります。経営者個人がそれを受け止めて、さらに自社の今後について再検討することをお勧めします。
“延長雇用”を考えるなら、まず経営者から検査をする必要があるということですね。
久保
まずは企業の経営者の方の意識改革を進める必要がありますね。
高齢者向けの人事管理の施策としては、人事制度はむしろ補助的なものであり、久保先生の担当されている健康管理の分野が主になっていくくらいの重要性があると思います。今後重要な経営課題であることを再認識し、人事管理の重要な機能としての健康管理について活発な議論が行われることを期待します。

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久保 明

1979年慶應義塾大学医学部卒業。1988年米国ワシントン州立大学医学部動脈硬化研究部門に留学。「高輪メディカルクリニック」を設立し16年間院長を務めた。現在は医療法人社団湖聖会 銀座医院 院長補佐・抗加齢センター長などを兼務。 人の老化度を測る「健康寿命ドック」を開発し、その結果に基いたソリューション(運動や栄養指導)を実践。生活習慣病の診療と予防医療・アンチエイジング医学の確立に注力。サプリメントやスポーツ医学の世界最先端の情報と実践を駆使した講演や企業のアドバイザーとしても活動している。

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林 明文

青山学院大学経済学部卒業。トーマツコンサルティング株式会社に入社し、人事コンサルティング部門シニアマネージャーとして数多くの組織、人事、リストラクチャリングのコンサルティングに従事。その後大手再就職支援会社の設立に参画し代表取締役社長を経て現職。

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