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人事分析手法ノートVol.2

第4回 「等級別給与分配範囲」

執筆:久保 博子   監修:林 明文

<チャート>

<分析の概要>
 本分析は等級ごとの給与額(月給)が異なる等級間で重複していないかどうかを検証する分析です。一般に等級とは、能力、役割、職務といった要素で人材のレベルを定義したものです。そのため給与が等級に連動したものであるならば、等級間で月給が重複しないほうが望ましいと言えます。しかし、そもそも、等級は職務や能力によって決めるが、給与は年齢や勤続年数を考慮して支払うという方針の会社であれば、多少の重複はあっても問題はないということになります。本分析は、等級間の給与に適切な差があるかを分析するものです。
 制度としてのそもそも等級間の重複があるのか、また運用の結果、重複しているのかを知るために、本来の制度、つまり理論的に各等級でもらえ得る給与の等級間比較(理論)と、実際の給与(実態)、の2つの視点で行う必要があります。

(理論分析)
 制度として、等級間に給与の理論範囲に重複があるかないかということを認識するのが理論分析です。
 各等級の制度の理論範囲とは、各等級でもらえ得る給与の最低額と最高額できまります。この分析では給与の支給対象者が同じ条件であることが前提の比較となるので、分析対象とする給与項目を選別する必要があります。たとえば、職務給、役職手当、時間外手当、営業手当、技術手当、家族手当、転勤手当、危険手当が支給されている会社のケースでは、理論値の算出には、職務給と役職手当のみを使用します。営業手当や技術手当など、職種により支給対象者が限定された手当や家族の有無や人数により支給される属人性の高い給与項目は分析項目から外します。このケースの場合、等級別理論値の最大値は、当該等級の職務給額の上限値にその等級で任用されうる役職で最も高い役職手当額を足した額です。最小値は、当該等級の職務給額の下限値にその等級で任用されうる役職の最も低い役職手当額を足した額です。当該等級で任用されない者もいる場合は職務給の下限額が最小値となります。

(実態分析)
 実際に各等級で支給されている金額の最大値と最小値から算出される賃金範囲を等級間で比較し、重複を認識するのが実態値分析です。
 実態値の算出で使用する給与項目は、理論値で使用したものに加え、時間外手当も用います。実態値の範囲は、同一等級において、使用する給与項目を足した金額で最も高い金額の値、最小値は最も低い値により認識できます。
<分析結果から>
(理論値の重複)
 そもそも「重複型」の給与制度を導入している会社ということになり、制度設計方針と合致しているのであれば問題とは捉えません。これは年功的要素を制度に反映させている会社によくある現象です。年齢給が入っている制度や、等級ごとの給与レンジに上限を設けず、どんなに長期にわたって同一等級に滞留していても昇給させる仕組みをもっている制度では、等級間の重複が発生します。
 しかし、制度設計方針が等級に応じて処遇することを謳っていたにも関わらず理論値として重複していたとしたら、これは現在の制度の設計が非合理的であるということになります。制度方針にもとづいた合理的設計に見直す必要があるでしょう。

(実態値の重複)
 制度として重複していれば、実態値が重複するのは当然です。但し、理論重複よりも大幅に重複している場合は、運用実態を見直す必要があります。また、制度としては重複しないが、運用により重複が発生しているケースもあります。これは問題として認識する必要があるでしょう。この重複の原因には、残業による逆転、降格させたが給与を下げていなかった、採用時に格付けと採用時の提示給与額のギャップが発生した、ということが多く挙げられます。残業による部分は理論設計時における適切な階差の設定や残業抑制によることで解消すべきかと思いますが、それ以外のケースは、運用をきちんと行うということに尽きます。(採用時のケースは採用調整給を支給するなどの別ルールを設けて運用することが必要です)
 理論においても、実態においても、重複していると、一生懸命に働いても下の等級にいる人と処遇が同じ、もしくは下の等級の人のほうが高い処遇という現象が発生し、仕事そのものや、昇格に向けてのモチベーションがわきづらいという問題を抱えることになります。また、よく言われているように、非管理職に残業代をつけると管理職の給与を超えてしまうことにより、管理職になりたがらない社員がいるという問題も発生します。
 等級と給与のバランスは、給与支給の思想にもよりますが、やはり、昇格へのインセンティブ、等級制度と給与制度の紐づきを分かりやすくする制度とするならば、理論においても実態においても重複しない、階差のある仕組みとすることが望ましいといえるでしょう。

執筆

久保 博子 (くぼ ひろこ)

コンサルティング部 シニアマネージャー
国内大手生命保険会社を経て、現職。プロジェクトマネージャーとして組織・人事コンサルティング業務に携わる。人事制度設計を始め、グループ人事管理の仕組みやセカンドキャリア制度、研修企画等、数多くの企業の人事改革プロジェクトを担当。他方、自社内の商品開発業務や、管理部門の実務責任者として全社の基盤構築業務にも従事。

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監修

林 明文 (はやし あきふみ)

代表取締役 シニアパートナー
青山学院大学経済学部卒業。 トーマツコンサルティング株式会社に入社し、人事コンサルティング部門シニアマネージャーとして 数多くの組織、人事、リストラクチャリングのコンサルティングに従事。その後大手再就職支援会社の設立に参画し代表取締役社長を経て現職。明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科客員教授。

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