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人事分析手法ノートVol.2

第2回 「賞与の業績連動性」

執筆:古川 拓馬   監修:林 明文

<チャート>
この分析は過去数年間の賞与と営業利益(賞与配分前営業利益)の関係を示したものです。各年のポイントをプロットし、近似曲線を引きます。
※縦軸・・賞与総額  横軸・・賞与配分前営業利益 
<分析の概要>
 この分析は“賞与連動性分析”と呼ばれており、企業の賞与と利益の関係を分析するものです。一般的には正社員の年収構造として月給賞与制を採用している企業が多く、月給は社員の生活保障的面がある為、固定的です。一方、賞与は月給とは異なり業績に応じて額が変動する変動的な給与です。その為、人件費の一部である賞与額が当期の業績に応じて連動していることは極めて重要です。この賞与額のコントロールが適正になされているかを判断するうえで非常に重要な分析といえます。

  賞与額を決定する準拠指標としては、売上高、営業利益、経常利益など企業によって様々です。準拠指標として何が適切かは企業の判断による為、一概にいえませんが、本来的な事業活動から獲得した利益である営業利益を使用することが合理的といえます。この営業利益の中から一定比率を賞与に配分する考え方が妥当と考えられます。つまり、賞与配分前の営業利益額と賞与額の間に正の相関関係があることが望ましい状態といえます。賞与配分前の営業利益額と賞与額をプロットした傾向線が一次関数の直線的なグラフであれば非常にわかり易いです。グラフの傾きが小さいと業績にかかわらず賞与額が固定的となる為、一定の右肩上がりの傾きをもったグラフであることが望ましいといえます。また、チャートの45度線より上方にポイントがプロットされた場合は、賞与を支払って営業赤字となり、利益額に比較して賞与額が過剰な状態といえます。
<分析結果から>
 分析の結果、賞与配分前の営業利益額と賞与額の傾向線が一定の右肩上がりの傾きであれば、賞与額が企業の利益額に応じて適正に連動している判断することができます。一方、傾向線の傾きが小さく、平行に近い場合や、右肩上がりの傾きではない場合、また45度線より上方にポイントがプロットされている場合は賞与額が業績に応じてコントロールされておらず、合理性がないと判断することができます。賞与原資の決定方法や、賞与支払い時期について見直すことが必要になります。

 本来、賞与は当期の利益の一部を社員に分配するものですが、多くの日本企業では、歴史的慣習もあり、社員の生活保障としての固定的な部分が賞与に含まれています。その為、企業業績に関わらず生活保障部分として年間数ヶ月分は賞与を支払う必要があることが多いです。
 
 また、労働組合との労使交渉の関係で、前期の業績から当期の賞与額を決定するという、いわゆる“期ズレ”の賞与決定方法となっている場合も散見されます。それゆえ、賞与のポリシー及び支給目的を明確に設定することが重要になります。賞与を利益の分配とするか、生活保障と考えるのか、その両方なのかを明確にする必要があります。

 今日の経営環境の変化が激しい状況においては、当期の業績に応じて人件費の伸縮性を確保し、企業損益のコントロールをすることは極めて肝要です。この分析は、過去の賞与と業績の関係から、これまでの賞与決定方法に問題がないかを検証すると共に、今後の自社の企業損益のコントロール手段をいかに確保するかを決める重要な判断材料となる分析と言えるでしょう。

執筆

古川 拓馬 (ふるかわ たくま)

コンサルティング部 ディレクター
大学卒業後、大手国内独立系コンサルティング会社において、人材開発、組織・人事コンサルティングの企画営業業務を行う。その後、当社に入社。コンサルティング部門のシニアマネージャーとして、組織・人事コンサルティング業務に携わるほか、研修・セミナー講師やプロダクト開発、人事分析の品質管理、社内教育に従事。

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監修

林 明文 (はやし あきふみ)

代表取締役 シニアパートナー
青山学院大学経済学部卒業。 トーマツコンサルティング株式会社に入社し、人事コンサルティング部門シニアマネージャーとして 数多くの組織、人事、リストラクチャリングのコンサルティングに従事。その後大手再就職支援会社の設立に参画し代表取締役社長を経て現職。明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科客員教授。

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