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人事分析手法ノートVol.2

第1回 「労働分配率について」

執筆:   監修:林 明文

■付加価値
*この分析は基準期に照らした自社の労働分配率、付加価値、人件費の増減率を数年間表示しています。
 
<付加価値の概要>
 付加価値は、企業が新たに生み出した価値を測る指標ですが、使用される算出方法には、代表的なものがいくつかあります。一般的なものを記載します。
 
 上記の指標以外にも多くの指標があります。自社の過去水準と比較するのであれば、自社独自の方法でも構いませんが、他社と比較する場合は、他社の算出方式に合わせる必要があります。算出のし易さから言えば、製造業は控除方式、非製造業は加算方式が簡易的に算出できます。付加価値は売上高や利益だけでは測れない企業活動の結果として生み出した価値自体を測定することができます。人事管理においてこの付加価値は非常に重要な指標であり、生産性や後述する人件費比率を算定する上では欠かすことのできないものです。
 
■労働分配率<チャート>
*この分析は自社の労働分配率を数年間表示すると同時に同業種同規模の企業の平均と比較しています。
<分析の概要>
 この分析は、適正な人件費水準を把握するためのものですが、適正人件費の算出に使用される指標には、代表的なものがいくつかあります。一般的なものは、以下のものです。
 
 売上高人件費比率・・・・・売上高に占める人件費の割合
 売上総利益人件費比率・・・売上総利益に占める人件費の割合
 労働分配率・・・・・・・・付加価値に占める人件費の割合
 
 これらの指標のどれを用いるかは企業によって様々ですが、適正な人件費を算出するために最も相応しい指標は労働分配率であると考えられます。売上高人件費比率は、簡易的に算出できるために多くの企業で使用される指標ですが、売上高に外部費用となる変動費が含まれています。この変動費と人件費は連動しないため、適正人件費を算出する上では、正確な数値の算出がし難い部分があります。売上総利益を使用した売上総利益人件費比率は、売上高から外部費用となる原価を差し引いた数値に占める人件費として算出されますので、適正人件費を算出する上で有効です。労働分配率に使用される付加価値は、売上高から他社へ支払う費用を差し引いたもので企業が生み出した価値となる指標です。別の言い方をすれば、企業が自社で生み出した価値の総和と言うことができます。付加価値に占める人件費の割合が労働分配率となりますので、適正な人件費を算出する上では最も望ましい指標だと言えます。
 
 年度別にこの労働分配率の統計を取ることによって、自社の人件費水準の推移が分かります。また、同業種同規模の労働分配率と比較すると自社の人件費水準の高低が把握できます。財務省の“財政金融統計月報”や経済産業省の“企業活動基本調査”などにはこのような業種別規模別の指標が発表されていますので、簡易に比較することができます。
 
 ただし、労働分配率は、同業種同規模であっても、ビジネスモデルの違いによって企業ごとにその適正値が異なります。そのため、まずは過去の労働分配率推移から、最も健全に利益が出せていた年度の労働分配率を適正と考えることです。これは、実際に人件費や付加価値が一定の望ましい状態であったという実績ですから、実現不可能なものではありません。もっとも、外部環境やビジネスモデルに顕著な変化が生じている時期は除く必要があります。外部水準は、自社の適正値を基準とした上で、参考値として活用することが望ましいでしょう。
<分析結果から>
 この分析を行うと年度別の自社の労働分配率の推移が明確になり、望ましい状態の期と現在とで労働分配率がどの程度乖離しているのかを診断できます。自社の労働分配率の推移が上昇している企業では、付加価値(業績指標)が低下しているか、人件費が増加していることになります。対応策としては、付加価値を上昇させるための施策、具体的には商品・サービスの向上(新商品の開発・既存商品の見直し)、社員生産性の向上(営業施策見直しや営業効率の向上、教育研修・OJTの強化による生産性の向上)等が必要となります。

 また、人件費が多すぎる可能性もありますので、正社員・非正社員の人件費単価(給与・賞与、福利厚生費 等)や人数を精査することも必要になります。必要に応じて給与制度の見直しや雇用施策を行わなければなりません。

 自社の推移だけでなく業界平均に比較して労働分配率が高い場合にも対策が必要となります。
 
 労働分配率は、経営の視点では一定の水準以下に抑えていることが望ましいとされていますが、社員の視点では一定の水準が確保されていなければ十分な労働意欲が喚起されません。そのため、人事管理上は、これら双方の視点を踏まえた適正な労働分配率を定めた上で、現在の人件費が適正な水準であるかを管理し、必要に応じてタイムリーに是正措置を講じることが重要だと言えます。

執筆

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監修

林 明文 (はやし あきふみ)

代表取締役 シニアパートナー
青山学院大学経済学部卒業。 トーマツコンサルティング株式会社に入社し、人事コンサルティング部門シニアマネージャーとして 数多くの組織、人事、リストラクチャリングのコンサルティングに従事。その後大手再就職支援会社の設立に参画し代表取締役社長を経て現職。明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科客員教授。

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