TOP > 講座一覧 > 人事分析手法ノートVol.1 > 第7回 「適正な人件費」

講座 - Lecture -

人事分析手法ノートVol.1

第7回 「適正な人件費」

執筆:古川 拓馬   監修:林 明文

<チャート>
この分析は過去複数年(5~10年程度)の人件費及び付加価値のデータを収集し、労働分配率を算定します。
※付加価値:総人件費、租税公課、動産・不動産賃借料、営業利益の総額
※労働分配率:付加価値/総人件費
<分析の概要>
 この分析は、主要な業績指標と人件費の関連から自社の直近期の人件費額が適正な人件費額と比較した場合の過不足を分析するものです。

 主要な業績指標には労働分配率を使用して行うことが最も妥当性が高いです。労働分配率とは付加価値(企業が新たに生み出した価値の額)に占める人件費の割合であり、人件費の適正額を算出する場合に使用する代表的な指標です。この労働分配率が高い場合は、人件費が経営を圧迫しており、人件費が高過ぎることになります。逆に、労働分配率が低い場合は社員に対しての配分が少な過ぎることになります。他にも売上高人件費率や売上総利益人件費比率といった指標を活用する場合もありますが、企業が生み出した新たな価値という観点の分析としては正確性が劣る為、労働分配率を使用する方が妥当性の高い分析と言えます。

 この分析は、過去数年間の労働分配率を使用して直近期における適正な労働分配率を予測します。最も代表的なものは過去数年間の平均値です。その他にも最高最低期を除いた平均値や、直近の経営環境の平均という観点で直近3年間の平均値を使用する場合もあります。いずれかの予測労働分配率を適正な労働分配率と仮定して、適正な範囲を設定します。

 このようにして、適正な労働分配率が予測できれば、直近期の付加価値に適正な労働分配率を乗じることによって適正な人件費額を算出することができます。その結果、直近の人件費額を過不足及びその額を求めることができます。
<分析結果から>

 分析の結果、適正な人件費額と現状の過不足の率が±5%以内程度であれば大きな問題はないと判断します。しかし、5%以上の過不足がある場合には、人件費配分に対しての過去傾向値との差が大きく、問題であると判断することができます。具体的には、人件費額が5%以上過剰の場合、人件費が適正な状態に比較して過剰に配分されていることになり、人件費の削減施策を検討する必要があります。人員数の削減や人件費単価の削減等の施策を実行しなければ、労働分配率が適正な状態よりも過剰な状態が継続してしまい、人件費が企業経営を圧迫している状態が継続してしまうことになります。逆に、5%以上不足している場合、社員に対する配分が少ないことになり、人件費額を増加させることを検討する必要があります。利益が出ているにもかかわらず、社員に還元されない場合、社員のモチベーションダウンの要因となる可能性がある為、社員への適正な分配のあり方を検討する必要があります。

 この分析は、非常に単純な構造の分析ですが、人件費の過不足を一定の合理性を持って示す手法として極めて重要な分析です。また、過去の人件費の傾向から今後の自社の人件費額の判断を行う上で極めて重要な判断材料となる分析と言えるでしょう。

 加えて、複数の事業を行っている企業の場合、事業構造の違いによって労働分配率が大きく異なる為、事業別にこの分析を行う方がより望ましいと言えます。

 

執筆

古川 拓馬 (ふるかわ たくま)

コンサルティング部 ディレクター
大学卒業後、大手国内独立系コンサルティング会社において、人材開発、組織・人事コンサルティングの企画営業業務を行う。その後、当社に入社。コンサルティング部門のシニアマネージャーとして、組織・人事コンサルティング業務に携わるほか、研修・セミナー講師やプロダクト開発、人事分析の品質管理、社内教育に従事。

詳細はこちら

監修

林 明文 (はやし あきふみ)

代表取締役 シニアパートナー
青山学院大学経済学部卒業。 トーマツコンサルティング株式会社に入社し、人事コンサルティング部門シニアマネージャーとして 数多くの組織、人事、リストラクチャリングのコンサルティングに従事。その後大手再就職支援会社の設立に参画し代表取締役社長を経て現職。明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科客員教授。

詳細はこちら

ご相談・お問い合わせはこちら お電話:03-5213-3931 資料請求・お問い合わせ
ページTOPへ