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人事分析手法ノートVol.1

第5回 「人件費の配分の妥当性」

執筆:坂下 幸紀   監修:林 明文

<チャート>

この分析は、各社員の昇格スピードと直近の業績評価結果のデータをもとにパフォーマンス別に以下の人材区分に分類分けします。
HP(ハイパフォーマー)1:昇格スピードがとても速く、直近の業績評価結果がとても高い
HP(ハイパフォーマー)2:昇格スピードが速く、直近の業績評価結果が高い
AP(アベレージパフォーマー):昇格スピード、直近の業績評価結果ともに標準的
LP(ローパフォーマー)2:昇格スピードが遅く、直近の業績評価結果が低い
LP(ローパフォーマー)1:昇格スピードがとても遅く、直近の業績評価結果がとても低い

各パフォーマンス区分を更に3つの年収水準区分に分けます。
X:年収水準が外部水準より10%以上高い
Y:年収水準が外部水準より±10%以内
Z:年収水準が外部水準より10%以上低い

このグラフは、縦軸の中央を外部の賃金水準ラインとし、外部賃金水準に対するパフォーマンス・年収水準区分別に人数比率を示しています。

<分析の概要>

 会社は決められた人件費の中で、社員に対して、短期的な業績は賞与で、能力の習熟には昇給で、与えられる役割や職務の違い(レベル)に応じて昇格、昇給で報います。その中で業績に大きく貢献し、能力が高く、標準的なモデルに比べ昇格スピードが早い社員、つまり高業績者(以下ハイパフォーマー)に対しては、多くを報いるでしょうし、また逆に業績にあまり貢献せず、標準的なモデルに比べ昇格スピードが遅い社員、つまり低業績者(以下ローパフォーマー)に対しては、報いを少なくすることが運用上考えられます。

 この分析は上記の人件費の配分の適切さをパフォーマンス別にみることで、人件費の配分が適切になれているかを把握するためのものです。

 具体的にはパフォーマンスに応じて、適切な賃金水準にコントロールがなされているかをみます。ハイパフォーマーには外部労働市場に対して高い(10%以上)年収水準を保つべきですし、またローパフォーマーに対しては、外部労働市場に対して年収水準を低く(10%以下)抑えることで、外部流出圧力を高めていくことが望ましい運用です。仮にローパフォーマーに比べてハイパフォーマーに十分に報いるように傾斜をつける運用がなされていたとしても、外部労働市場に比して十分な水準を確保されていなければ、人件費の配分は妥当でないないということです。ハイパフォーマーだけでなくアベレージパフォーマーも外部賃金水準に対して十分な年収水準を確保することが重要です。

<分析結果から>

 分析の結果については、Xの人数比率は、LP<AP<HPとなっている状態が理想的です。逆にZの人数比率は、LP>AP>HPとなっている状態が理想的です。またHPはXの人数比率が高いことが望ましく、LPはZの人数比率が高いことが望ましいです。

 よってこの分析例については、LP1を除く、LP2、AP、HP2、HP1間の人数比率は望ましい状態にありますが、LP1はZの人数比率が低く、適切な配分がなされていないと言えます。またHPについてもXの人数が少なく、むしろZの人数比率が高くなっており、優秀な人材への外部流出リスクが高くなっていることから、適切な配分がなされていないと言えます。

 どの業種においても、よく見られる傾向ですが、技術が劣化してしまった高年齢、低等級者の年収水準が過去の年功的な人事運用から十分に賃金が抑えられず、高止まりしている場合、LPのXの人数比率が高くなりがちになります。また逆に若く優秀で高い技術を有している社員への配分が十分でなく、優秀な人材への外部流出が発生している状態が見られます。

 分析の結果、改善が必要になった場合、考えられる施策は、「給与制度の見直し」「昇格の厳格運用」の主に2つです。

  まずは等級上下間の固定部分の給与の差を明確にし、また個人の賞与配分における変動部分の比率を高め、メリハリがつくような仕組みとすることが重要です。賞与の配分については、評価結果自体が中央化しているなどの問題も考えられますので、十分に差がつく評価制度への見直しや、必要によっては評価会議などを開催するなど評価の適正を高めていく運用も有効です。

  また昇格も定員などの要件を明確にし、重要な等級への昇格についてはアセスメントを実施するなど、厳格で適正な昇格運用をおこなうことが重要です。低業績者の適切な職群への移行や必要によっては降格人事、代謝施策なども必要と考えられます。

 この分析は、今後の自社の人件費の配分の在り方を決める重要な判断材料となる分析と言えるでしょう。

執筆

坂下 幸紀 (さかした ゆきのり)

コンサルティング部 ディレクター
不動産会社等において、情報システムの開発、IT統制管理や内部統制のプロジェクト管理業務を行う。その後、当社に入社。コンサルティング部門のディレクターとして、人事制度設計、雇用調整、グループ会社の人事戦略策定等のプロジェクトのほか、プロダクト開発、社内教育に従事。

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監修

林 明文 (はやし あきふみ)

代表取締役 シニアパートナー
青山学院大学経済学部卒業。 トーマツコンサルティング株式会社に入社し、人事コンサルティング部門シニアマネージャーとして 数多くの組織、人事、リストラクチャリングのコンサルティングに従事。その後大手再就職支援会社の設立に参画し代表取締役社長を経て現職。明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科客員教授。

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