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人事分析手法ノートVol.1

第4回 「社員の生産性」

執筆:林 明文  

<チャート>

この分析は自社の生産性数値(当チャートでは労働生産性を用いています)を数年間表示すると同時に、同業同規模の企業の平均と比較しています。
<分析の概要>
 この分析は社員の生産性を把握するためのものです。生産性の指標は代表的なものがいくつかあります。一般的なものとしては、

   売上生産性・・・一人当たり売上
  売上総利益生産性・・・一人当たり売上総利益
  労働生産性・・・一人当たり付加価値

 などです。

 これらの指標は企業によってわかりやすいものを用いるのがよいですが、人事管理上最も正確で重要であるのは、労働生産性になります。他の指標とともに労働生産性も分析の対象とすることをお勧めします。

 売上生産性は、製造業や建設業など原価に労務費が算入されている企業で使用されることが多く、単純な計算で求めることができるため簡易的に使用される指標です。しかし派遣や請負を多用している企業などでは、正確な数値とは言えなくなります。売上総利益生産性は、卸売、小売業のように減価に労務費が算入されていない企業で使用されます。労働生産性は、企業が新たに生み出す価値(付加価値)の一人当たり額であるので、もっとも生産性としては正確な額と言えるでしょう。付加価値の計算が多少面倒であるために、現時点ではあまり多くの企業で使用されていませんが、極めて重要な指標であると再認識が必要です。

 これらの生産性指標を年度別に統計を取ることによって、自社の生産性の数位がわかります。また同業種同規模の生産性数値と比較すると自社の生産性の工程が把握できます。例えば財務省の“金融財政月報”などにはこのような業種別規模別の指標が発表されていますので、簡易に比較することができます。
<分析結果から>
 この分析を行うと年別の生産性の推移が明確になります。まず自社の生産性の推移が低下している企業では、業績指標(売上や付加価値など)が低下しているか、人数が増加していることになります。対応策としては、業績指標を上昇させるための施策、具体的には商品や営業的施策の見直し強化や、社員の能力の向上(教育研修やOJTの強化)などになるでしょう。また人数が多すぎる可能性もありますので、非正規社員の削減など人数を精査することも必要になります。正社員雇用中心で、生産性指標が急落している企業では正社員の削減なども視野に入れなくてはなりません。

 自社の推移だけでなく業界平均に比較して生産性が低い場合にも対策が必要となります。同業に比較して生産性が低いのですから、商品やサービスの見直しやマーケティング的観点の見直しが必要になります。また社員のレベルが低いことも想定されることから、人事全般に対して根本的に見直すことも必要になります。いずれにしても“競合優位性”という視点では、競合他社に生産性という観点で劣っているということですので、優位さが失われている原因を明確にしなければなりません。

 社員の生産性は一定の水準以上でなければ、社員の雇用も望ましい処遇でできません。一定水準以上の生産性を高めるには、人事的施策だけでなく、ビジネスモデルのありかたや競合優位という観点も含めて経営全般としての施策も検討しなければなりません。

執筆

林 明文 (はやし あきふみ)

代表取締役 シニアパートナー
青山学院大学経済学部卒業。 トーマツコンサルティング株式会社に入社し、人事コンサルティング部門シニアマネージャーとして 数多くの組織、人事、リストラクチャリングのコンサルティングに従事。その後大手再就職支援会社の設立に参画し代表取締役社長を経て現職。明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科客員教授。

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