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講座 - Lecture -

人事分析手法ノートVol.1

第1回 「業績と人件費の連動性」

執筆:林 明文  

<チャート>

業績と人件費の連動性に関する分析です。
 
この分析では過去数年間の売上(売上総利益)と人件費の増減率の関係を示したものです。前年よりの売上高増減率と人件費の増減率を数年分グラフにプロットしたものです。
 
*横軸・・・売上高の増減率、縦軸・・・人件費の増減率
<分析の概要>
 この分析は、“人件費連動性分析”“人件費伸縮性診断”などと呼ばれ、企業の業績と人件費の関係を分析するものです。分析方法は、数年間の売上(売上総利益)と人件費から毎年の増減率を計算してグラフにプロットするもので、非常にシンプルな分析です。通常は業績が前年よりも上昇すれば、業務量が増加したり業績好調により社員への還元を増やす傾向にありますので、人件費が増加する傾向にあります。業績がマイナス成長の時には、その逆で人件費は少なくなることが求められます。昨今では環境変化が激しく、そのため人件費も“変動費化”が重要と言われています。業績が良い時には人件費が増加してもよいのですが、逆の特にはその期の内に人件費が減少するようにコントロールされていることが重要なのです。多くの企業では人件費はコストの中で大きな割合を占めます。この人件費を業績の状況に合せてうまくコントロールしているかを判断するわかりやすい指標となります。人件費の環境適合度を測るとも言えるでしょう。
<分析結果から>
 分析の結果は非常に簡単です。基本的には売上が↑人件費が↑、売上が↓人件費が↓であれば外部からみて人件費の適正な伸縮性は確保されていると見えます。しかし矢印がちぐはぐになっている場合、特に売上が↓人件費が↑の場合には注意が必要です。業績が低下しているにも関わらず、人件費が上昇しているということです。企業によっていろいろな事情はあるのでしょうが、人件費が固定費化している、ないしは人件費のコントロールが組織として機能していないことが懸念されます。業績が低下しているのですから、人員数(正社員や非正社員、派遣社員など)の人数を減少させることや、賞与や超過勤務を適切にコントロールすることが求められます。そのような伸縮機能がうまく働いていないと、人件費の構造やコントロールを見直さなくては、安定した経営ができないということです。
 また、売上が↑の時でもその増加率以上に人件費が増加していれば、生産性は低くなっていると言えるでしょう。
 
 この分析を行うと業種や企業によって結果が大きく異なります。業種的には、小売業やサービス業など、環境変化に鋭敏な業界では、人件費のコントロールは厳格にされている傾向にあります。また社歴の長い企業では人件費が固定費化している傾向があり、業績が下がっても人件費が直ちに下げられない例も散見されます。
 人件費を業績に合せて伸縮させるためには、さまざまな施策が考えられます。雇用という観点からは、正社員と非正社員、派遣社員、アウトソーシングなどの構成の見直しが必要となります。また人事制度的には賞与を業績連動型にすることなどが代表的な施策となります。さらには超過勤務手当については、日常の時間管理の見直しなども必要になるかも知れません。
 この分析は環境変化に強い人件費構造にするための一つの重要な分析手法です。非常に簡単ながら、改めて自社の人件費の推移をグラフで見ることでわかりやすく理解できる手法です。

執筆

林 明文 (はやし あきふみ)

代表取締役 シニアパートナー
青山学院大学経済学部卒業。 トーマツコンサルティング株式会社に入社し、人事コンサルティング部門シニアマネージャーとして 数多くの組織、人事、リストラクチャリングのコンサルティングに従事。その後大手再就職支援会社の設立に参画し代表取締役社長を経て現職。明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科客員教授。

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