AIを使うと損失が増える_ワークスロップ(workslop)の罠 |コラム|株式会社トランストラクチャ(東京都)

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AIを使うと損失が増える_ワークスロップ(workslop)の罠

 AIは、強力な道具である。一方で、扱い方によくよく気を付けないと、見栄えは良いのに中身が伴わない成果物を生みやすい。会社の中においては、これは、単なる『質の低い文書』では、終わらない。必要な役割を果たしておらず、受け手に「確認・修正・差し戻しの負担」を発生させるため、害とも言えよう。

 こうした「他者から受け取った、一見もっともらしいが、実際には低品質で、本来果たすべき仕事を達成していない成果物」を「ワークスロップ(workslop)」と呼ぶ。スタンフォード大学とBetterUp Labsの研究員が2025年9月に発表した論文で定義された新たな概念だ。

 問題は、作成者がAIに任せたことで、仕事の目的や文脈、必要水準を自分で十分に咀嚼しないまま提出してしまう点にある。すると受け手は、まず「何がズレているのか」を見抜き、そのうえで差し戻すのか、自分で直すのかを判断しなければならない。実に迷惑である。

 当該論文では、米国企業で働く1150人のデスクワーカーを対象にした調査を行っている。算出された損失の概要は下記の通りだ。

 当社で実際にあった「ワークスロップ」の一例も紹介しよう。とある若手社員が、営業先企業の情報と、提案サービスとの関連をAIで分析し、資料を作成した。上司と共有すると、「これは、使えない」と、読んでもらえなかった。資料が長大すぎて何を言いたいのか、一見して分からないためだ。さらに上司が口頭で説明を求め、質問を重ねる。若手社員は上手く対応ができない。「自分の頭で考える」過程をAIで代替したため、内容が自分のものになっていないためだ。

 また少し話題はそれるが、「AIの便利さに頼るほど、自分の思考力・判断力が落ちていく。また、そのことに気づきにくい」という厄介な点にも触れたい。

 手で書く、体を動かして実際にやってみる、人と対話する――その過程の中で得られる発見やひらめきは、人間の思考力・判断力の向上に欠かすことができないものだ。しかしその機会は、効率化と引き換えに失われやすい。脳科学者の中には「AI を使うことによって脳を使えなくなる人、AI を全く使わないで脳が使える人が生まれ、逆の格差をAIが生むのでは」と主張する人もいる。AIによる効率化で生まれた余白やアウトプット量によって、自身の能力が向上したかのように錯覚するが、思考関連の能力自体は上がっていない、むしろ発揮する機会を失い下がってしまっている可能性もあるのだ。

 もちろん、だからAIを使うな、という話ではない。重要なのは、AIを「自分の代わり」に使うのではなく、「自分の思考を増幅する道具」として使うことだ。スタンフォードの議論でも、優れた使い手はAIに丸投げする“乗客”ではなく、自ら操縦する“パイロット”として振る舞うべきだとされている。

 大切なのは、AIか人間かという二項対立ではない。
「これは自分が本当に伝えたいことか」と問い続け、責任をもったアウトプットを提供し続ける姿勢ではないであろうか。

参照)
Harvard Business Review, September 22, 2025(updated September 25, 2025)
https://hbr.org/2025/09/ai-generated-workslop-is-destroying-productivity

※文中の図はAIによって作成

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