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新卒、キャリアに悩む。

執筆者: 村上 江梨子 人事管理

「私、どうしたら良いですか?」
 以前勤めていた会社の新卒一年目のSさんは、よく私にそう訊ねてきていた。Sさんは、目の前の仕事の分からないことを聞いているのではない。今後社内でどのようなキャリアを積めば良いかを悩んでいた。Sさんと初めて会ったのは会社説明会だった。地頭も良く、コミュニケーション能力も高い。会社でやってみたいことも明確で、どう見ても優秀な学生だった。「新卒一年目でキャリアパスに悩むなんて、意識高いなぁ」とも思ったが、いや、ちょっと違う。入社前にやりたいことが明確だったSさんが、どうしてそんな悩みを持ってしまったのか。人事担当としては、そこを考えなければならない。

 そもそも、キャリアパスとは何か。英語では「Career Path」、直訳すると「キャリアを積む道」となる。企業の中でどのような職務経験を積み、立場(役職)に就くのか。またそこにたどり着くためにどのようなスキルを身に付けるかという道筋のことである。こう聞くと、会社にとってキャリアパスを社員に提示することが、いかに大事か分かるだろう。なぜなら、社員が会社でキャリアを積むということは、会社に社員が定着し、かつ長期的に活躍するということだからである。加えて、魅力的なキャリアパスを提示することは、採用力の強化や、優秀な社員の外部流出リスクへの抑止力ともなるかもしれない。
 個人にとっても、キャリアパスを考えることの意味は大きい。自身が目指すキャリアに向かってモチベーションを高く持ち、そこに至るまでに必要な知識や経験、専門性を高める努力を重ねるからだ。また、活発な動きが続く転職市場においては、これまで積んできたキャリアが自身の市場価値を判断するための指標ともなるだろう。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により一時的に減少しているが、昨今の転職市場は活発な動きを見せている。総務省の労働力調査(2019)によれば、過去1年間の転職者は351万人にのぼり、対前年比では22万人の増加となっている。また、「これまでの経験や能力を活かし、更にスキルアップしたい」や、「本当にやりたい仕事が出来る環境を探したい」など、ポジティブな転職理由を聞くことも多くなってきた。つまり社員は、会社の提示するキャリアパスと、自らが描くキャリアパスにギャップが生じた時、転職を決意するのだ。
 その前提に立った時、キャリアパスとは会社から一方的に提示され、その道筋通りに歩けば良いというものではない時代にあることに気付かされる。キャリアパスは、会社に存在するものではなく、実は社員一人一人の中に存在しているのだ。ある会社で働くということは、ただ単に会社が提示するキャリアパスと、自分が歩きたい道筋が合っただけにすぎないのかもしれない。つまり、マッチングしただけなのである。

 採用はマッチングなら、人事担当としてすべきことは何か。それは、適切にマッチングするための材料を多く提示することではないだろうか。会社として社員に歩んでほしい道筋を明確にし、自身が活躍している姿を具体的にイメージさせることだ。では、Sさんのように社員が社内でのキャリアパスに悩んでいたらどうしようか。それは、マッチング度合いが弱くなっている証拠である。相談してくれたことをむしろチャンスと捉えなければならない。なぜ活躍イメージが湧かないのか、社内で活かしてほしい強みは何なのか。それらを棚卸しして実体化するだけでも、社員のもやもやはスッキリするかもしれない。採用はマッチングだからこそ、会社は社員に対して常に明瞭な説明をする準備をしておかなければならないのである。

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プロフィール

村上 江梨子 (むらかみ えりこ)

アナリスト

大学卒業後、建築会社でのコールセンターマネジメント業務、現場マネジメント業務等を経験後、人事業務に従事。グループ会社を含めた社員の採用・教育企画や労務管理業務の人事業務全般に携わった後、当社に入社。コンサルティング部門でアナリストとして、組織・人事コンサルティング業務に従事。

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