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スキル陳腐化のツケを払うべきは誰か

執筆者: 関根 愛 雇用

 社員がどのようなスキルを獲得するか、というのは、社員側が責任を持つべきものであり、会社に責任はないと考えている。
 というのも、スキルとは、社員側に行使の権利がある資産だからだ。会社は、会社が必要とするスキルのために、社員に教育投資をする。ただしその結果得られたスキルの行使は、社員個人の自由意思による。言ってしまえば、欲しいスキルを得られたら、別の会社に持ち逃げすることができる。
 反対に、世の中の技術進歩が凄まじく、社員のスキルが陳腐化する場面が往々にしてある。その場合に、社員の処遇を下げていく(もっと言えば雇用関係を終了する)ことも、本来は何も問題がないと思う。自身のスキルの資産管理をするのは自身だけであり、スキルの市場価値の低下に対する施策を打たなかったがゆえの結果だからだ。

 こう言うと、あまりにもドライすぎると反応されることがある。そうは言っても、社員がスキルを理由に転職できるのに、会社はスキルを理由に解雇できないようになっているのだから、非対称な契約関係であり、日本の雇用のあり方はだいぶ優しいじゃないか、と思うのだ。
 そもそも、自身のスキルを自身が管理すべき資産だと捉えている人材は、その会社での雇用に執着しない。自分のステップアップのために、次に身に着けるべきスキルを見定めて、戦略的に会社を渡り歩く。一方で、自身のスキルのあり方を会社に委ねてしまっていると、いざそのスキルが陳腐化している(から処遇を下げる)と会社がメッセージを出したとき、「今まで頑張ってきたのに、理不尽だ」となる。確かに人情としては辛い反論であるが、社会変化や技術変化を止められない以上、スキルは時価であるという厳然たる事実が、その反論を認めるわけにいかないのだ。

 会社が必要とするスキルと、社員が自身の幸福のために獲得すべきスキルは、同一ではない。なるほど、会社はよく教育研修を行うし、それによって得たスキルを仕事に活かせば評価し、処遇する。だが、それはあくまで「現在もしくは将来の会社利益に繋がるスキル」だ。今の仕事でAというスキルが必要とされ、それを培うために教育投資され、評価され、給料が支払われていたとしても、未来永劫スキルAの時価が高いとは限らない。それを見越して、別のスキルBを磨く、というのは、社員による自身の幸福のための選択である。その時点で会社がスキルBを必要としていないのであれば、会社は教育投資をしない。そしてスキルBを社員が獲得した暁に、別の会社へ転職することも、今の会社がスキルBを求めたときに即応することで自身の価値を再度示すことも、社員側に選択の権利がある。もちろん、何も対応せず、流れに身を任せるというのも、社員側の選択であるが、恐らく幸福追求の面では不合理な選択であろう。

 技術変化が加速する一方である以上、スキルの陳腐化と処遇の低下(あるいは雇用の終了)は、当たり前の時代となるだろう。会社と社員の関係は、より市場性が高いものになる。その環境において生き残ることができるのは、市場の参加者として、自身の持つスキルを戦略的に管理・活用できる社員である。

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プロフィール

関根 愛 (せきね あい)

シニアアナリスト

大学卒業後、ウェブ広告代理店で営業職として、ウェブ広告の新規開拓営業に従事。不動産・人材サービス・教育サービス業界を中心に、メディア広告・リスティング広告・ウェブ制作の提案を行う。
その後、大学受験予備校の事務職として、労務管理業務に従事。採用後から退職までの、社員・パートタイマーの勤怠管理全般に携わった後、当社に入社。コンサルティング部門でアナリストとして、組織・人事コンサルティング業務に従事。

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