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酒造りで見るリーダーの資質

執筆者: 飯島 宗裕 人材育成

 一昔前の話だが、私は日本酒好きが高じて「きき酒師(日本酒のソムリエ)」という資格を取り、それでも満足せず、酒蔵で酒造りの手伝いをしていた時がある。最近では日本酒製造の体制も多様化しているが、酒蔵には「杜氏(とうじ)」という最高製造責任者がおり、蔵人(くらびと)という職人をまとめながら酒造りを行なうのが一般的である。私も杜氏の指導の下で酒造りをしていたわけだが、その姿を見て「リーダーの資質」を感じたのでここに紹介したい。
私の出会った杜氏は普段は温和で口調も優しい。しかし、一旦酒造りの現場に入るととても厳しくなる。その違いは「本当に同じ人なのか」と思うほどだ。
なぜ杜氏は厳しいのか。それは「美味しい日本酒を造りたい」という強い想いを持っているからだけではない。酒造りの現場はとても危険であり、例えば米が発酵しているタンク内に人が落ちると窒息死してしまう。他にも梯子から落ちての骨折、蒸気による火傷など、毎年何らかの事故が起きている。これらの事故はちょっとした油断やミスが原因となることが多く、安全を確保するためにあえて杜氏は厳しく接し、常に注意を促しているのだ。
なぜ杜氏は優しいのか。それは、チームワークを引き出すためである。もともと酒造りは農業や漁業ができない冬の間に集団で出稼ぎに来るというシステムだ。別の言い方をすれば、蔵人たちは冬の間に酒造りのために家族のもとを離れて、厳しい仕事を続けなくてはならない。その蔵人たちを気にかけ、モチベーションを高め、最高の仕事をする状態にすることも杜氏の大切な役割なのである。
私が手伝った蔵元では、杜氏から「飯島君の誕生日はいつだ?」と聞かれ、「来月です」と答えたところ、「じゃあ、今日は飯島君の誕生日1か月前記念だな。飲むか!」と言って宴会が始まった。次の日は「今日は米がうまく蒸せたな。いい酒ができそうだ。飲むか!」と言って宴会が始まる。その後にも作業があるので、宴会といっても食事に少しのお酒が出ただけだったが、蔵人同士の会話が弾み、一体感が生まれたことを覚えている。
別の杜氏から聞いた言葉がある。「杜氏は酒造りの技術だけじゃダメ。人づくりも大切な役割なんだよ。酒造りの時期が終わると、あちこちで出稼ぎに行っていた杜氏たちが地元に戻る。その時に、今年はこうだった、こうしたらうまくできた、と言って情報交換をする。そうすることで、技術も伝わるし、日本酒も美味しくなるんだ」と。
目的を達成するという熱い気持ちをリーダーが持つことは大切であり、その達成のためのリーダーシップのあり方は様々な形がある。杜氏のように「厳しさ」と「優しさ」の2面性をうまく使い、次へのステップのためにノウハウを共有していく姿を見て、私は1つのリーダーとしての資質を垣間見たのである。
余談だが、埼玉県の佐藤酒造が製造している「中田屋」は20代の女性杜氏が醸している。
杜氏も出稼ぎではない自社杜氏が増え、若い世代が新しい感性で日本酒を良くしていこうとしている。味わいが深く、酒米による旨味の違いが楽しめる、きき酒師おススメの1本だ。

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プロフィール

飯島 宗裕 (いいじま むねひろ)

マネージャー

独立行政法人にて中小企業者向けの研修の企画・運営業務に従事。後継者育成研修、ファシリテーション、論理的思考などビジネススキルの研修を担う。その後、飲食コンサルティング会社において出店支援等に従事し、コンサルタント育成の責任者として教育室長に就任。その後、研修設計の研究と啓蒙を行う一般社団法人を設立し、初代代表理事に就任した後、現職。

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