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「同質化」と「インクルージョン」

執筆者: 高野 潤一郎 人材育成

「彼らは、異常者だからね!」と、キャリア関係の大学講義で、2人の大学教授を指して冗談交じりで言えるのは、彼らとの付き合いが20年近くになろうとする間柄であることに加え、「『教授の言うことはいつも正しい』という学生さんたちの思い込みを破壊して欲しい!という教授たちの要望に応える」ため、つまり「自分の役割」を意識してのことである。

この講義のきっかけとなったのは…企業に就職した元学生が、3年も経たないうちに「思っていたのと違った」などと言って転職するのを目の当たりにしたS教授が、「社会に出る前、少し考えるゆとりがある大学在籍時に、真剣に自分のキャリアについて考えて欲しい」と感じたことだった。

インドで開催された「アジア学術会議」(材料工学分野の回。アジア各国の若手研究者が、2週間に渡って、世界一流の研究者による講義や現地視察を通して学び合う場。日本からは4名)に参加していたS教授(当時の東京大学助手)が、W教授(当時の東京工業大学助手)と私に声をかけて、このキャリア講義が始まり、2006年以降、年に一回だけだが続いていて、評判も良い。

私が、友人の大学教授たちを異常者と表現するのは、「毎年あるいはもっと短いサイクルで、世界初あるいは世界最高といった成果をあげて論文を書き続けることが求められる職業に就いている人たちの発言内容や体験談は、特殊(統計的にいうところの異常値)である」ということを強調してのことである。

しかし、少なくとも私の知る理工系の研究者にとって、「世界初・世界最高を目指して研究する」ことは普通であり、彼らにとっては、「他者と異なることをすることが求められる。むしろ、他者と違っていなければ意味がない!」という感覚は当たり前である。

企業の採用あるいは育成、組織開発の担当者は、この辺りのことをどう理解しているのだろうか?

「就職時、転職時には、他者との違いをアピールする」ことを求めるくせに、職を与えた途端、「組織に染まることを求める」などという態度はとっていないだろうか?

「就労者としての寿命 > ビジネスの寿命」という状況が多数を占める現代、「人生100年時代」の私たちは、どこかの場面で「異常者」になることが、「個人の働き甲斐、生き甲斐の視点」から大切なのではないかと、私は思う。

他方、「組織の視点」に立てば、「組織内にバラバラな考え方・価値観の人が散在する」だけでは、「関係者どうしの衝突(仲違い)が増えて業績が低下する」など、「組織が持つ本来の力」が充分に引き出せないため、都合が悪いというのも確かである。

そこで求められるのが「インクルージョン」(Inclusion)である。インクルージョンというのは、「事業の目的に適うように、種々の境界(就労地域の違いによる時差といった物理的な境界や、部門・部署間での価値観の違いのような心理的な境界など)を越えて、多様な人々を束ねたり、ビジネス環境の変化に適応できるように人々を導いたりするための、『持続的な働きかけ』」のことを指す。

「別解を示せる人が評価される」(他者と異なる解法や異なる意見が出せないと、存在価値がないと見なされる)という感覚を持っている人々からすれば、粒を揃えて管理するという「同質化」は受け入れづらい。

不揃いを統合する「インクルージョン」に真正面から取り組むのは、部門横断的な働きが期待される、人材開発部門・組織開発部門ではないだろうか?
以上

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プロフィール

高野 潤一郎 (たかの じゅんいちろう)

マネージャー

日本の科学技術政策立案プロセスの一翼を担う国立試験研究機関にて、国内外の研究開発動向の調査分析・将来予測に従事し、在職中にマテリアル・サイエンス分野の博士号を取得。大型事業契約(約1,000億円)締結や日米共同プロジェクト(約500億円)の基調に採択される論文を執筆。人材開発・組織開発支援会社を創業し、11年間に渡る経営(複数のフォーチュン・グローバル500企業への研修提供、グローバルに展開するコーチング財団の初代日本統轄ディレクターを兼務、人材開発・組織開発コンサルティングの提供、私立理工系大学にてキャリア講義ほか)を経て、現職。

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