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高度専門職人材が会社に残る理由

執筆者: 関根 愛 人事管理

元上司の名前をグーグルで検索すると、彼のインタビュー記事がズラリと並ぶ。その記事を読めば、彼が今、どこの会社で、どんな仕事に取り組んでいるのか、すぐに把握できる。現在は某大手IT企業の新規ビジネスの推進責任者であるらしい。

彼は「高度専門職人材」に相応しい人物だった。専門性を活かした、新たなビジネスモデルを創り出すことに長けていた。クライアントからの覚えも良く、彼だけで会社の売上の半分を持っていた。業界内でも名が通っていた。彼が在籍しているというだけで会社のブランディングになった。

そのような稀有な人材が、短期間とは言え、わずか20名ばかりのベンチャー企業の中間管理職に収まっていたのだから、不思議なものである。私が彼と同じ会社で働く機会があったことは、今思えば奇跡だったのだろう。

ところで、一般的な人事制度設計では、高度専門職人材の給与水準は、管理職と同等以上に設定することが多い。他社に引き抜きされないよう、高い処遇を行うためだ。しかし、彼らのリテンションを給与だけで図るのは、あまりにも効率が悪い。彼らを引き抜こうとする企業は世界中にあり、その中には数千万の年収を提示する企業もあるからだ。

そのため、高度専門職人材を効率的にリテンションするには、給与水準とともに、非金銭的報酬をセットで検討しなければならない。

最も効果的なのは、仕事そのものが報酬となるような、「仕事の魅力」を向上させることだ。彼らにとって魅力的な仕事とは、彼らの専門性をいかんなく発揮させられる仕事だ。個人の成果が会社業績に直結し、市場にも影響を与えるような特命的な仕事(ミッション)でなければ、彼らの能力とプライドが満足しない。そうしたミッションの必要性の裏側には、経営方針として、その事業領域の拡大があるだろう。その推進者としてのミッションを高度専門職人材に与える、という流れだ。そしてミッションが無事成功すれば、また経営方針と連動した、新たなミッションを与え続けなくてはならない。

「そんなに頻繁に大きなミッションは発生しない」ということであれば、そもそも高度専門職人材を長期的に雇用する意味は薄い。社内の仕事では役不足になってしまうからだ。自社をドラスティックに成長させる推進力を欲する、ビジョナリーな経営者の下でこそ、高度専門職人材のリテンションが成功する。

人事制度設計を行う上で、高度専門職人材をキャリアゴールとする等級体系を設計することがある。それにより、マネジメントよりも専門性発揮が向いている人材にとっては、明るいキャリア展望を描けるだろう。しかし、「そもそも自社の経営方針や事業展開が、高度専門職人材を恒常的に必要としているかどうか」という検証は足りているだろうか。高度専門職人材を雇用し、なおかつリテンションするには、経営側のスタンスを整えておかなければ、すぐに見限られてしまうだろう。

さて、この記事を書くキッカケとなった冒頭の元上司だが、彼が低賃金のベンチャー企業に入社した理由は、「自分の手で大企業へと成長させたかったから」と話してくれたことがある。

しかし残念ながら、経営者との方針の不一致により、彼はそのベンチャー企業を去った。そして皮肉なことに、ここ最近は他人の手により大きくなった企業を転々としているようだった。
彼の華々しい転職経歴の裏側には、自身をリテンションするだけの「仕事の魅力」に溢れた企業と出会えていない、高度専門職人材ならではの苦悩を感じ取ってしまうのだ。

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プロフィール

関根 愛 (せきね あい)

シニアアナリスト

大学卒業後、ウェブ広告代理店で営業職として、ウェブ広告の新規開拓営業に従事。不動産・人材サービス・教育サービス業界を中心に、メディア広告・リスティング広告・ウェブ制作の提案を行う。
その後、大学受験予備校の事務職として、労務管理業務に従事。採用後から退職までの、社員・パートタイマーの勤怠管理全般に携わった後、当社に入社。コンサルティング部門でアナリストとして、組織・人事コンサルティング業務に従事。

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