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コンサルティングファーム

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エビデンス・ベースド・ポリシー

執筆者: 古川 拓馬 人事管理

 企業における人事について、語らせると多くの経営者の方は一家言を持っている。人材育成、人事評価、成果主義についてetc. 同じ企業の中でもこれら人事の施策については十人十色の意見を持っており、語ると止まらなくなることもしばしばである。

 皆それぞれ自身の経験や知見に基づいた意見であり、大変参考になる意見ばかりである。しかし、そこで語られる施策について、どの施策がより確実性が高く、施策を実施した場合の効果性が高いかは分からないこともまた事実である。要するに、人事施策に関する意思決定のレベルはあまり高いとは言えないということだ。

 特に、人事施策については、経営者の好き嫌いや、感覚的な実感値に基づいて意思決定されることが多く、実行した施策が本当に当初の想定の効果を生み出したのか、実証されていないことがほとんどである。

 たとえば、企業における教育投資額は、企業業績と連動する傾向がある。企業業績が良い時は、教育投資額を増加させ、逆に業績悪化時には減少させる企業が多い。教育投資によって人材育成が行われ、企業業績向上に資するのであれば、短期的な企業業績の変動と教育投資額は連動しないはずである。人事施策が、合理的な根拠に基づいて意思決定されていない分かりやすい例だ。

 そこで参考にしたいのが「エビデンス・ベースド・ポリシー(エビデンスに基づく政策)」である。これは近年、緊縮財政や、将来の不確実性の高まりを受けて、欧米の国や自治体で急速に導入が進んできている政策立案の考え方だ。政策目的を達成するために、効果的な施策を科学的な根拠に基づいて合理的に政策を意思決定する手法である。

 エビデンスには、「現状把握のエビデンス」と「政策効果把握のためのエビデンス」がある。まず、現状把握として、課題となる対象の影響度や、重要性を量的・質的面から十分にエビデンスで把握する。そして、政策実行のプロセスを「インプット→アクティビティ→アウトプット→アウトカム→インパクト」の流れで整理した上で、投下した予算・人員、具体的活動、直接的・間接的な産出物、最終的な成果等を検証し、インプットからアウトプットの因果関係を明確にする。このようにして、政策効果を把握することで、より政策の質を向上させることに繋げている。

 人事施策の施策立案や意思決定において、「エビデンス・ベースド・ポリシー」の考え方は非常に参考になるのではないか。そもそも、人事施策には主観やイデオロギー的な要素が入り込む余地が大きく、施策の意思決定において合意形成が難しく、多くのステークホルダーの意見を踏まえた折衷案となり、中途半端な施策になってしまうことが往々にしてある。もちろん、人事の施策には簡単に白黒をつけることができない問題が多いのも事実で、最終的には意思決定者の価値観に依存せざるを得ない。たとえば、人件費の分配は成果に応じてどの程度差を設けるべきかや、教育投資は将来を担う若年層に投資すべきか、全社の高齢化を受けて、今後も活躍を期待する高齢層に投資すべきか等は、様々な捉え方と考え方がある。これらは、最終的には経営が自身の価値観に基づいて意思決定することになるが、だからこそ、人事施策の意思決定には、もっと科学的で客観的・合理的なエビデンスを持つことが重要ではないだろうか。

 蛇足だが、「政策効果把握のためのエビデンス」としてエビデンスの質は複数段階にレベル分けされており、「専門家や実務家の意見」は最低レベルに位置付けられているのは何とも皮肉である。人事コンサルティングにたずさわる者として、もっとエビデンス・ベースドである必要があることを痛感させられる。

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プロフィール

古川 拓馬 (ふるかわ たくま)

ディレクター

大学卒業後、大手国内独立系コンサルティング会社において、人材開発、組織・人事コンサルティングの企画営業業務を行う。その後、当社に入社。コンサルティング部門のディレクターとして、組織・人事コンサルティング業務に携わるほか、研修・セミナー講師やプロダクト開発、人事分析の品質管理、社内教育に従事。

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