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新しい組織構造にあった仕組みを
執筆者:高柳 公一

 第130回芥川賞は19歳と20歳の二人の女性に贈られた。TVのインタビューで見たエネルギーあふれる若き二人の女性新人作家の表情とは対照的に、彼女たちの小説の中で描かれる登場人物らは皆、社会に背を向け、屈折した行動と精神に満ち溢れている。青春時代に、現実社会を単純に受け入れず、人生に悩み、さまようことは、誰もがたどる道かもしれない。しかし、彼女たちの作品に住む登場人物の言動を読むにつけ、社会に対して心を閉ざし、限定した美意識の中でひたすら安住しようとする若者たちの価値観の拡大を感じ、ショックを受けた。

 彼ら/彼女らは、決して暗いわけではない。しかし、社会システムや価値観に対する信頼度は、我々が若かりし頃に抱いていたそれに比べて途方もないほど低い。年金制度の行き詰まり、大量のリストラ、超一流企業の倒産など、いままで当然と思われていた信頼すべき対象が次々と消えていく中で、彼ら/彼女たちが、そう考え行動するのも、ある意味で自然なことかもしれない。自らを取り巻く環境の中に、頼るべき拠り所が見出されない以上、それに正面から向き合おうとせず、最低限必要な接点以外は、ひたすら自らが安住できる世界に引きこもりを決めてしまいたくもなるのだろう。

 いまや、フリーター人口は全国で400万人にまで達したといわれている。単純に就職先が見つからないという理由ばかりでなく、自分の人生やキャリアを明確に定められないために、敢えて定職を求めずフリーターを選ぶ若者も多いと聞く。これは、日本の貴重な若い人材が十分に活用される場所を社会が提供できていないということでもある。

 しかし、信じていた価値観の喪失感を味わっているのは、若者だけではない。長年勤めてきた会社が倒産したり、ある日突然、リストラ宣告を受ける時代である。社会構造の変化に戸惑い、新しい社会のルールを見つけようと必死にもがいているのは、我々オトナ世代の方なのだ。

 インターネットが社会インフラとして普及し、大企業の新入社員でも社長にメールを送って容易にコミュニケーションができる時代になった今、多数の中間管理職が存在したピラミッド式組織構造は存在理由を失い、よりフラットで柔軟な構造と、流動性の高い人材フローを持つ組織を作ることが、企業にとって21世紀を生き抜くための必須要件となった。

 我々は今後、早急に、そうした組織構造に適応した価値基準やルールを整備していかねば、20世紀後半に築き上げてきた、世界に誇る我が国の経済的優位性は容易に崩れ去っていくだろう。

 企業が必要な人材を社外から獲得する、いわゆる中途採用マーケットは、日本は欧米に比べてもまだまだ発展途上であり、取り組むべき課題は数多い。が、この先10年間で、このマーケット構造の進化がない限り、我が国の企業組織は、必要な人材とポジションがうまくマッチングできないだろうし、その結果として、企業や国全体としてのアウトプットは限定的なレベルにとどまってしまうだろう。

 我々オトナが率先して、新しい社会システムやインフラに適応する仕組み、制度を組み立てていかねば、若者たちの将来への不安は現実のものになってしまう。

 私自身も、今まで以上に拡大する中途採用市場の効率的なインフラ整備に微力ながらも貢献するために、日々努力を続けていかねばならぬと、二人の受賞作品を読み終えて、感じた。

(2004年01月18日 高柳 公一

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