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あきらめの経営
執筆者:林 明文

 リーマンショックの余波が続くなかで大震災が起こり、現在に至っていますが、近年の企業の経営計画は、果たして夢のある魅力的な計画なのか大いに疑問です。企業としての理念や目標を達成することは非常に重要であることは間違いありませんが、そもそも現在の経営方針や理念などはきれいごとが多すぎる傾向にあります。また目標についても、株価対策なのか、対外的な体裁から前年度より売上微増で利益増加という計画をよく目にします。今までのビジネス環境で同じビジネスモデルを少し効率的に延長したような経営計画であり、ダイナミックさや環境変化を先取りした先進性が感じられません。


 もっと深刻であるのは、経営目標は現場では実際に達成しなくてはならない目標として認識されていないのではなないかということです。前年度の売上を100とした場合に、次年度の目標は110くらいで設定しますが、これには明確な根拠が薄く感じます。例えば100の売上時と110の売上時で人員の体制が変わっていないケースをよく目にします。経営環境が変わらないとして売上が10%伸びるためには、合理的な人事という観点では顧客接点のある営業部隊が10%以上増員されなくては説明できません。しかし多くの日本企業は、このような合理性に基づかない経営計画と目標を策定します。特に人事に関しては無計画とも言える雑さが目立ちます。


 実際の企業では経営計画は現実を表していない単なる文面上の目標としてしか認識されていないのかもしれません。全社の目標や事業部の目標を達成する意欲がないとまでは言いませんが、仮に達成できなくとも仕方ないと最初から思っているのかもしれません。ある意味最初からあきらめた感覚をもってマネジメントしているのではないでしょうか。もっと悪く言うと今までと同じようなマネジメントを継続しているのであり、計画・目標達成のために新たなマネジメントスタイルに変容しなくてはならないという感覚がすでに無くなっているということです。業績が上がるも下がるも経営環境とその時の運不運であるという認識です。これはある意味正しい認識であると同時に、マネジメントとは何かを本質的に考えさせられるものです。マネジメントによって業績は大きく変わらないことを前提としているように思えます。


  以前に比較して現場でのマネジメント能力が活性化しておらず、低下しているのではないかと感じます。売上10%アップなのに人員は変わらない状況を受け入れ、まあがんばって目標を達成できればいいなと思っているだけで、それ以上のマネジメントの工夫やダイナミックな施策の企画実施などがないということです。目標を達成できなくとも驚くほどの減給はないのでしょう。あまりにもひどい成績でなければ、中流的な生活レベルを維持できることが保証されているからです。


 このようにあきらめを前提とした経営計画や経営計画を策定すること自体に実質的に大きな意味を持たない企業が多いと感じます。これは魅力的な経営計画を策定する人材を育成できなかった経営や人事に原因の多くがあるのでしょうが、あまりにも経営方針計画の平凡さや面白くなさに驚くことが多いということです。日本市場だけを対象とした戦略では競合優位性を高めてシェアを徹底してあげることが企業の成長戦略でしょうし、縮小する日本市場ではなく海外市場を対象としたグローバル化をするのも重要な経営戦略です。企業や事業によって戦略は異なりつつも、競合優位性の向上とグローバル展開は基本戦略として最重要事項であり、この達成に向けたダイナミックで社員や株主が強い魅力を感じる方針・計画を提示できる魅力的な経営者育成が最も重要な経営・人事課題です。魅力ある経営者の育成を早急に本格的に実行することを経営計画の重要事項として認識し、具体的な育成をすぐにでも始めなければなりません。日本企業の人事問題の中で最も深刻であるのは社員の問題ではなく優秀な経営者が育成できていないということです。



(2011年11月14日 林 明文

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