
最新コラム
再就職支援業小史(縮小期第二成長期)
執筆者:林 明文
2004年以降日本は徐々にバブル崩壊後の低迷から脱却しました。特に米国や中国の内需拡大により、日本企業の収益が回復することになります。しかしすべての業界が業績回復したのではなく、自動車関連や産業用機械メーカー、商社や造船海運などの海外関連企業や金融機関などが業績を大幅に回復しました。しかし電子部品などの製造業は海外メーカーとの熾烈な価格競争を余儀なくされ続けます。急速に業績回復する企業は、人材が不足することになり採用活動を再開することになります。また業績の回復が遅れた企業では更なるリストラを行うことになります。
このような背景で人材関連業界は大きく成長することになります。バブル崩壊後のリストラによって企業の終身雇用は大きく揺らぎました。若年労働者層を中心に転職することが普通の時代になります。成長業界では社員が不足することもあり、人材紹介業は急速に大きくなっていきました。また企業の人材獲得はバブル崩壊後のリストラ学習効果として、正社員中心の雇用から非正社員も重視することになります。人材派遣業界やアウトソーシング業界も高率で成長をすることになります。このような人材業界全体が成長する中で、人材業界の一分野として急速に認知された再就職支援業界は、急激な市場縮小を迎えることになります。一部の業界や会社を除いては人員削減する会社はなくなったということです。再就職支援各社とも売上は激減します。このような市場の急速な縮小は予測されていましたが、あまりに急激な市場縮小であったこと、一部の会社は市場が大幅に縮小しないと楽観していたため、どの企業も再就職支援事業に替わる収益の柱を作ることができませんでした。そのため会社としての存続をするために、再就職支援会社自身が人員削減を行うという滑稽な状況の中で、生き残りをかけて様々な動きをすることになります。大手人材派遣、請負会社に吸収されるか、グローバル企業の日本支社となるか、廃業するかの選択が主たる選択肢でした。
中長期でみると景気の大きな収縮の中では、再就職支援サービスは再び日本で成長する機会があるということですが、この当時は日本の景気回復が本格的であり将来的にバブル崩壊時と同じような大幅な後退は確信を持って予想できませんでした。リーマンショックによる第二次雇用調整ブームを迎えるまでは、この業界は小さな活気のない業界として細々と生き続けました。しかも人材会社の一機能かグローバルの日本支社としてということです。
この市場縮小期においては2社が新たな主役として登場します。第二成長期に躍進する2社です。パソナキャリアアセット(現在はパソナ本体の一事業部門、以降P社)とリクルートキャリアコンサルティング(以降R社)です。P社は人材派遣大手を親会社に持ち、再度市場が成長するときにターゲットを当てて、日本のすべての都道府県でサービスを提供できる体制をいち早く作りました。そもそもこの市場に参入したのも第一次ブーム時であり、その時はメインプレイヤーでなかったですが、市場縮小とともに急速にシェアを伸ばしました。これに対してR社は非常に慎重な市場参入をしました。R社も第一次ブーム時から限定した範囲で再就職支援事業を行っていましたが、本格的に参入していたとは言えません。日本最大の人材紹介業をグループに持つこともあり、人材紹介業と再就職支援事業との同居が難しいと判断したのではないでしょうか。また新卒中途採用のトップ企業がリストラ支援的業務を行うことにイメージ的全体戦略的な議論が多かったと想定します。しかし再就職支援市場縮小期に本格参入することとなり、サービス内容及び規模という観点でも数年でP社と肩を並べることになります。リーマンショック後はこの2社が群を抜いて大きく、以前のトップブランドであったドレークビームモリンやライトなどの老舗企業や、新規参入組なども含めて中小規模の企業群が続く業界構造となりました。
本来再就職支援会社は規模メリットが大きい構造です。顧客は大手企業と外資系企業が主であるため日本全国でのサービス提供が必要となります。カウンセリング、施設提供、教育、求人紹介の4つの機能の内カウンセリング以外は規模メリットが大きいため、規模が大きくなるほど損益メリットがあります。これは利益率がよくなるため、更なる営業強化、価格競争力の向上につながり、寡占状態となる構造ということになります。現在では新たな2強時代ということになろうかと思います。特にR社は日本の労働市場を構築してきたトップ企業です。品質の低い再就職支援サービスを提供すると人材紹介業にも大きな影響が出ることになります。人材紹介業と再就職支援業は業務ノウハウの点でも共通性が高いので人材の交流も可能です。好景気時には人材紹介業、不景気時には再就職支援業という人材の補完機能があるというということです。労働市場に対する責任、業務ノウハウの近似による人材の伸縮性などから、他の再就職支援会社を圧倒するトップブランドに成長することが予想されます。おそらくトップブランドとしてのR社と、以下人材派遣系の数社、外資系の数社という業界構造になるでしょう。
以上
(2010年07月27日 林 明文)
※下記リンクをクリックする事でお客様の個人情報又は所属団体の情報を収集することはございませんのでご安心ください。
| 大変興味深い | 興味深い | つまらない |
| 前回の コラムを読む |
| 執筆者の 他のコラムを読む |
コラム一覧 | コラムに関する サービスを読む |
