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再就職支援業小史(勃興期)
執筆者:林 明文

人材サービスの一分野として再就職支援サービス(アウトプレースメントサービス)という業界があります。このサービスは業績低下などによる人員削減を行う企業が会社都合で退職する社員の再就職を支援するための専門サービスです。欧米ではすでに50年以上の歴史のある業界ですが、日本ではこのサービスが定着したのはバブル崩壊後の第一次リストラブームの時からです。それ以前は業界としての認知ができないほど小さな市場でした。この第一次リストラブーム時で多くの企業は大規模な人員の削減を行いました。当時は50歳台の管理職が余剰している企業が多く、大手企業の中高年社員を円滑に再就職させることが一つの使命であったと言えます。


再就職支援は不況産業ですので、景気下降期にビジネスボリュームが増える構造です。バブル崩壊後にこの再就職支援は企業のリストラ支援策の一環としての地位を確立し急速に大きくなっていきます。当時の業界勃興期には、ドレークビームモリン(以降DBM)、ライトマネジメント(当時はウエイステーション)、クーツキャリアコンサルティング、ヒューマネジメントなどが主要なプレイヤーでした。業界が急速に成長すると共に、再就職支援サービスの形態も進化をしていくことになります。そもそもこのサービスは欧米では人材サービスとしての一分野として確立されていました。欧米流の再就職支援サービスとは、会社都合で離職した社員に対してのカウンセリングと再就職拠点としての施設の提供が中心のサービスです。特に米国では再就職先の斡旋は人材紹介業が行う領域ということで完全に住み分けがされています。勃興期の日本の再就職支援サービスも、この欧米流のサービスの考え方を輸入する企業が多かったと思います。しかし日本では人材紹介業界は欧米に比較して発展途上であり、しかも大手企業の中高年管理職を円滑に転職させるという当時の日本独自のニーズに応えられるものではありませんでした。この欧米流のサービスに対して日本的な再就職支援サービスを本格的に提供したのはウエイステーションでした。サービスの目的を再就職の実現ということを重視して、カウンセリング、施設提供に加えて、転職後の必要スキルの習得のための教育、さらには求人案件の開拓紹介の四つの機能を提供するというものでした。欧米流のサービスに教育と人材紹介サービスをセットにすることで中高年の再就職の実現性を高めるというものです。


この2つの考え方はサービスの価格体系にもよく現れています。欧米流サービスの代表格であった当時のDBMでは、サービスに対する価格は離職者の年収の一定比率というものでした。欧米では一般的な価格になります。この考え方は社員を離職させるための費用という性質のものです。ですので、離職者の年収に連動するというものです。これに対して日本型のサービスは固定価格というものです。年収の高低に関わらず再就職させるためには一定のサービスを提供しなければなりません。再就職に必要なコストから価格を算定するというものです。当時は管理職一人あたり120万円、一般社員は100万円程度でした。


この日本的なサービスの考え方は数年を経ずして日本の再就職支援サービスの標準として定着しました。極めて高率の成長業界でしたので、DBMとウエイステーションの2強に続き、多くの企業が参画し乱立し始めました。そのためしかるべき信用のある業界として認知されるためには業界としての整備が必要となりました。過当競争によるダンピングや誇大な営業、低レベルのサービス提供など、業界の健全な発展を考えると業界としての一定のルールが必要であるという気運が高くなりました。


しかし業界団体設立には様々な困難がありました。普段は熾烈に競争している各社の歩調を統一することがなかなかできないこと、業界団体の必要性を感じている会社とその必要性を感じていない会社もあります。また業界団体は再就職支援の業界団体とするか、人材紹介業の一分野の団体とするか、日本の企業のみの国内団体かすでに存在する海外の団体の日本支部としての団体かという選択肢があります。さまざまな調整や議論や混乱や論争を経て、最終的には人材紹介業の業界団体の再就職支援協議会ということで設立をされました。この業界団体が成立した時点くらいまでが日本の再就職支援の勃興期といえるでしょう。
(続く)



(2010年07月23日 林 明文

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