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物価と給与
執筆者:林 明文

毎年総務省より消費者物価指数が発表されます。日本の主要都市の物価水準を把握する統計です。この物価指数を見てみると、自分が思っていた感覚と実際の物価差の感覚が大きく異なります。日本では東京の23区が最も物価の高い地域です。全国平均を100とすると平成21年の統計では東京23区は110.0(消費者物価地域差指数)という水準です。東京23区以外で比較的物価の高い地域は次の通りです。神奈川(横浜)大阪・・・などです。逆に物価水準が低い地域は次のようになります。千葉、宮城、宮崎・・・などです。自分の感覚と同じところと異なるところがあります。代表的なのは千葉でしょう。東京に隣接していますが物価が非常に低い印象です。また逆に札幌などは以外に物価が高いと感じます。札幌の物価が高い理由としてよく言われているのは、札幌は食料品などは安いですが、日常雑貨などは本州からの輸送コストがかかるというのが一つの理由ということです。


札幌だけ、千葉だけ、東京だけにしか勤務先の無い会社は、社員の給与を考える上で地域の物価差を考える必要性はありません。しかし大手企業になれば特定の一地域のみ勤務地ということは考えられません。全国に勤務地のある会社などはたくさんあります。このような多くの地域に拠点のある企業の給与水準決定では、適正に物価差を反映することが平等で適正だということになります。例えば物価水準の高い東京の社員と同じ役職同じグレードの仙台勤務の社員がいたとします。この二人に同じ月給、仮に50万円を支給するということは、額面金額(名目給与)は同じということで平等性はあります。しかし実際の生活上では東京の50万円と仙台の50万円では購入できる量が異なります。東京勤務社員の方が実質的に低い給与ということになります。例えばこの二人の社員に同じ購買力を提供するのであれば、消費者物価指数の差を反映させなくてはなりません。このような物価差を反映させた給与では、額面平等という考えではなく、購買力平等(実質平等)という考え方になります。大手企業ではこの物価差に対する手当を行っている企業は多くありますが、統計数字よりも控えめな金額の差しかつけていない企業が大半だと思います。


統計的(消費者物価地域差指数)には東京を100とすると名古屋は95.2です。約5%程度の差があります。しかし東京勤務者と名古屋勤務者に5%の差をつけている企業はほとんどありません。同じか東京に多少の差を付ける程度でしょう。


この物価差の給与への反映の問題を重要視する企業が多くなってきています。今までも問題と認識していましたが、重要な問題と認識する企業が増えたということです。この背景には、以前に比較して転勤を伴う異動が少なくなったことと想定されます。企業によって異なりますので一概には言えませんが、大手企業の平均年齢が高くなり異動が困難になってきていること、以前よりも企業成長が鈍化したりマイナス成長になるためポストが増えないこと、若手社員に異動を命じると退職してしまうこと、転勤を伴う異動をすることによるコストを抑制したいことなどです。この結果大手企業中では、転勤をする一部の社員と転勤しないで一つの地域に定着する社員に分かれてきているということです。全国どこでも転勤することを前提とした社員であるにも関わらず、現実には一部の社員しか転勤していない、転勤する必要がないという現象が起きています。


このような状況になると地域の物価差の問題が極めて重要になってきます。特に地域物価差により給与に差を付けていない企業や差が少ない企業では、物価水準の低い地域の社員を優遇していることになってしまうからです。一定期間で多くの社員が転勤するのであれば、転勤ごとに給与を変えることは煩雑でもありますが、現在の状況は購買力平等性という観点で見直さなければなりません。細かな話をすると、北海道に勤務する社員に寒冷地手当を付ける企業が多くあります。この寒冷地手当は暖房代が他の地域より著しく多くかかるということを前提としています。しかし最近では冷暖房費も物価差の一部であるということと、温暖化により暖房だけでなく夏期の冷房代(電気代)もかなりの額がかかります。このような理由で物価差調整の一部としての寒冷地手当なども存在理由がなくなってきているということです。


給与の合理的な仕組みという観点で、物価水準に対する対応方法を見直すタイミングにきている企業が多いということです。
以上



(2010年07月13日 林 明文

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