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M取締役
執筆者:林 明文

当社のクライアントのM取締役について話をしたいと思います。M氏とは8年ほど前からの知り合いです。ある会社の紹介でM氏の会社の人事制度設計の仕事をすることになりました。当時M氏は人事部長であり、人事制度改革の責任者でした。大規模な人事制度の改革であり当社に設計業務を依頼したということです。


M氏は人事部門の経験が長く、人事についての知識・経験とも極めて高い人物です。仕事には非常に厳しい人で、部下にもよく声高に熱く指導していました。会社にとってあるべき人事制度ということについてはいくら議論しても飽きないほど熱意のある人です。ミーティングの時間なども当初予定していた時間をいつも大幅に超過します。議論が白熱して長くなるため無駄に長いということではありません。このクライアントの人事制度の設計は当社では私とプロジェクトマネージャー1名、スタッフ1名の3人で担当しました。他のプロジェクトに比較してミーティングの濃度が濃く我々も急かされるがごとく仕事をした記憶があります。


M氏は仕事に厳しい反面、良い仕事については高く評価してくれます。当時のプロジェクトマネージャーもスタッフも大変な思いをして仕事をしていました。しかし最終的にはよい成果を残せたという達成感あふれる仕事でした。プロジェクト終了後のM氏の表情がそれを物語っていたと思います。プロジェクトの途中でこんなこともありました。社長報告の数日前にほぼ報告用のアウトプットはできていましたが、一部もう少し掘り下げたい部分がありました。コンサルタントとしてもM氏としてもどうも”深さ”が足りないという感覚です。当時のプロジェクトの雰囲気では、妥協なく完璧な内容に仕上げたいという思いが強く、その日は徹夜でミーティングと作業を繰り返し、翌日の朝にはなんとか完成させました。(ちゃんと超勤払っています)会社もM氏も非常に強い意志や使命感があり、われわれも同じ以上のマインドとスピードを提供したいと思ったからです。


そもそもコンサルティングの報酬はスタッフの投下時間によって見積もります。実際にプロジェクトが始まると予定していた時間を超過気味のプロジェクトが多く発生します。超過する分についてはその原因によって社内での処理が行われます。もっとも多い超過の原因は、品質維持や向上のために予定時間よりも多くかかってしまうということです。顧客サービスという意味ではよりよいサービスを提供したいので予定工数よりも多くかかってしまうということです。この場合社内的には一定の時間内であれば問題にしません。クライアントの満足度を最重視したいからです。しかしクライアントの満足度が低ければ、時間の問題ではありません。即品質不良の原因や見積もりの甘さを報告しなければなりません。時間超過の次に多い原因は手戻りです。プロジェクトの計画や個別の作業の甘さから前行程のやり直しや補強を行わなくてはならないということです。プロジェクトマネジメントの見直しを徹底させることになります。3番目の原因は顧客のニーズの変化や作業の単純な増加です。契約しプロジェクトスタートした後に顧客の依頼内容が変わったり一部の作業の増加が発生するような場合です。これは顧客と契約の再調整をすることが一般的です。


M氏の会社とはその後いくつかの契約が継続し長いおつきあいになっています。当然契約によって仕事をするわけであり、当社も株式会社である以上採算管理は徹底しなければなりません。しかしM氏との仕事のように顧客の情熱や強い意志などを目の当たりにし、顧客の経営改善の一翼を担っている実感を持つと、細かな時間管理などはどうでもよいことのように思えます。契約した時間をこなすのではなくクライアントの期待以上の成果を出すスタンスと行動が重要であり、コンサルティング会社が最も大事にしなければならないマインドだと思います。M氏とプロジェクトは、コンサルタントとしての原点を再認識させられます。

以上



(2010年06月09日 林 明文

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