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人事コンサルティング批判
執筆者:林 明文

経営コンサルティングの分野は広いですが、その中でも人事コンサルティングは発達の遅れている業界です。他のコンサルティング業界に比較すると規模が小さく、さらに成長していない分野といえます。業界の規模は正確にわかりませんがあまり大きくないと推測されます。世の中で人事コンサルティングと称している法人や個人には5つくらいのタイプがあろうかと思います。1.人事コンサルティング専業会社2.総合コンサルティング会社の一部門として人事コンサルティングを提供3.社労士事務所などがコンサルティング業を併設4.中小企業診断士や人事労務経験者が人事コンサルティングを提供5.その他(いろいろです。)


提供しているサービスはおそらく二局化していると思われます。人事専業のコンサルティング会社の大手(何人からが大手か不明ですが30人もいればかなり大きいと思います。)と総合コンサルティング会社の人事コンサルティング部門は、主に大手企業や外資系企業に対して人事制度の設計が主たる業務です。他の人事コンサルティング会社は様々だと思いますが、中小企業に対する人事のアドバイスが中心となります。コンサルティングの報酬もあまり大きくないと想定されます。


この小規模でかつ成長しない分野である理由はいくつか考えられます。まず第一に価値です。提供するサービスの価値が経営者にとってわかりづらいものであるということです。第二に需要と供給のミスマッチです。潜在的な需要も含めるとかなりの市場規模であると想定できますが供給側が十分な商品提供やマーケティングができていません。第三にテクノロジーの未発達でしょう。人事コンサルティングはコンサルタントへの依存度が高いため(提供側が高いと思い込んでいるため)、サービスの標準化や商品化がおそろしく遅れています。おおよそ近代的な産業といえるレベルではないでしょう。そのためこの業界に入った社員がこの業界の中で十分育成できていないという皮肉な結果を生んでいます。価値が明確であり、十分なマーケティングが行われ、テクノロジーが整備されていくことによって、業界規模も延びる上に新たな人材が集まることになります。各社はさらに切磋琢磨して高度な業界に成長することになると思います。


現在の業界を悪く言いますと、この業界は“自己満足の業界”といえます。比較的大きい人事コンサルティング会社では、一部の大手企業や外資系企業を顧客として、一品ものの人事制度を高い報酬で設計します。法人や集団としてのチームワークで設計するというよりもコンサルタント個人の経験や知見を売り物にする傾向が強くあります。従ってノウハウは法人や集団でなく個人に蓄積されることになります。優秀なコンサルタントは所属するコンサルティング会社に長く勤務する必然性がなく同じような会社を転職している状況です。どこの会社に行っても同じと言うことでしょう。これに対して社会保険労務士や中小企業診断士、人事経験者が独立して人事コンサルティングを提供している場合は少し事情が異なります。そもそも小規模の法人や個人では、大きな仕事は受注できません。小さな会社に対して細かなアドバイスを行うような顧問的なコンサルティングスタイルが多いようです。コンサルティング事業として成長性が計画できませんので、他のサービスと併設したり個人で行うといった領域から脱することができません。クライアント企業には成長するための人材獲得育成処遇を指導しているのに、自分たちには成長の戦略や成長の仕組みがない冗談のような状況でしょう。


人事コンサルタントは微妙なマインドがあります。自社のコンサルティング事業はあまり収益性が高くなく、また成長性も少ないと体感しています。しかし顧客には人事の専門家として経営の指導をしなくてはならないということです。さらに顧客も人事コンサルタントを極めて重用はしません。経営に対する直接的な貢献をすると思われてないからです。この自虐的な状況の中でコンサルタントも自ら改革する人ばかりではありません。資格や経験、マスコミへの露出にさらに拘泥するコンサルタントも多く見受けられます。


現在では人事コンサルティングは経営に直接貢献する重要な領域として強く期待されています。人事コンサルティング会社自らが顧客の経営に対して良いサービスを適正な報酬で提供できる業界への改革が求められているないしはそのチャンスのある時期だと思います。日本での人事コンサルティングが適正に成長するために、自己変革ないしは自己の破壊、プレーヤーの大幅な入れ替えが必要かもしれません。他人に指導するのなら自分を再点検しろと市場から言われていると思えます。


以上



(2010年06月07日 林 明文

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